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集中化戦略の代表格の超優良企業【塩野義製薬】を分析してみた#マーケティングトレース

皆様、2回目の投稿です。今回はカンブリア宮殿でも取り上げられました塩野義製薬株式会社についてトレースしてみます。

先に結論から話しましょう。
「終わった会社」と揶揄されていた塩野義製薬は、2004年に現代表取締役の手代木功さんが研究開発部門のトップになってから、20近くあった研究領域を感染症を含めた3つの領域へ集中した結果、売上高営業利益率が38%を超える超優良企業になりました。
これがいわゆる手代木マジックと呼ばれるやつです。では、この企業をトレースしてみましょう。

企業概要

社名   :塩野義製薬株式会社
代表取締役:手代木 功
本社   :大阪府大阪市
創業   :1878年
従業員数 :5,000名(連結)

経営理念

常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する

塩野義製薬では1950年代に開発した「シノミン」を皮切りに抗生物質分野へシフトし、その後も多くの抗生物質の開発を行っていきました。
また、創業家肝煎りの最強営業部隊の存在も大きく、抗生物質全盛時代の頃は「営業力の塩野義」と呼ばれておりました。
しかし、その後抗生物質市場の衰退があり、抗生物質に大きく依存していた塩野義製薬は業績不振に陥ります。有力新薬もない中で営業力だけでは業績回復を行うことができませんでした。そのような中で1999年、新卒生え抜きで39歳という異例の若さで経営企画室長になった人物がおりました。その人物こそが現在の代表取締役である手代木 功さんです。彼は「営業力の塩野義」から「創薬型企業」への転換を図りました。
今風の言葉に直すとコンテンツファーストへの切り替えというべきでしょうか。

では、塩野義製薬がどのようにして超優良企業へと進化していったのか

彼が開発担当トップになった2004年頃、会社の方向性の変化が結果となって表れております。

なぜ塩野義製薬は超優良企業へ進化したのか

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2002年まで売上高は順調に伸びていましたが、その反面利益が全く残せないでおりました。
原因としては以下の2点なのかと推測します。


①研究領域(事業分野)が多すぎて効率よくリソースを使うことができてなかった。
②研究領域(事業分野)の中にレッドオーシャンがあり、価格競争の激化による不採算領域が数多く存在した。

2003年、2004年と売上高が大幅に減っております。
2004年のIRを見ると下記のようなことが記載されておりました。

・平成14年3月 臨床検査事業をシオノギメディカルサービス株式会社へ営業譲渡
・平成14年4月 動物用医薬品事業をベーリンガーインゲルハイム社との合弁会社ベーリンガーインゲルハイムシオノギベトメディカ株式会社へ営業譲渡
・平成15年10月 工業薬品事業をDSL.ジャパン株式会社へ営業譲渡

不採算事業かと思われる研究領域をどんどん事業譲渡し、財務体制の健全化を図ろうとしております。
こういった事業譲渡には現場からの猛反発がありました。しかし、「嫌なら代案を出してくれ」と何度も何度も説得し、事業売却をすることができたと手代木さんは話しております。
恐らくリストラ等も行ったのだろうと思います。ただ、手代木さんは当時の事を振り返り「当時はどうすれば生き残ることができるかしか考えてなかった」とおっしゃっております。
一度決めたことを貫き通す意思や数多の犠牲があっても会社を存続させる覚悟はどの経営者にも備えておかなければならない能力ですね。

最終的に感染症など注力する医療用医薬品以外の事業を売却し、ほぼ全ての経営資源を集中化させた結果、経営に無駄がなくなり、リソースを効率的に使えるようになり超優良企業へと変貌を遂げました。直近2018年の損益計算書は下記になります。

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塩野義製薬をトレース

塩野義製薬の戦略を図でまとめてみました。

cmo-塩野義製薬

今回CMOの部分を空欄にしましたが、正直製薬業界の知識がなくて画期的な案が全くでなかったです・・・
集中化戦略による感染症・疼痛、神経系への特化は変わらないと思いますが、強いて言うならばトップラインを2002年の水準まで持っていく方向が今後のKPIなのではないかと思います。

最後に

マイケル・ポーターは「競争の戦略」内において3つの基本戦略を上げております。

①コストリーダーシップ戦略
②差別化戦略
③集中化戦略

個人的にはこの3つの戦略は三位一体だと思っております。
セグメントを集中させるからこそ、コストリーダーシップがとれ、価格面での差別化が生まれるのではないでしょうか。
(もちろん価格以外にも差別化の要素はあります)

塩野義製薬も勝ち目があるセグメントはどこかを模索し、たどり着いたのが大手が参入してこない感染症分野。
理由としては大手が一番儲からないのが感染症分野なのではないでしょうか。ガン等と比べて感染症の患者数は国内では少ないでしょうから、市場に魅力を感じないのかもしれません。

個人的にはポーターの言う基本戦略を貫けば成功するとは限りませんが、成功している企業は3つの基本戦略を必ずやっていると思います。
(はじめの一歩の鴨川会長の"努力したものがすべて報われるとは限らん。しかし、成功したものは皆すべからく努力している"に近い言い回しをしてみました。)

医療系はまだまだ自分自身も知識不足ですが、今回の分析で基礎中の基礎は学べました。
ただ、アウトプットするにはまだまだ知識が足りないので、もう少し知識をつけていかなければと思いました。

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