肉じゃがの香りで僕は泣ける

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夕方になると、窓を開ければご近所さんの夕食を感じることができる。

カレーかな?
デミグラス…………ハンバーグかビーフシチューとか…?
魚………焼いてるんだろうけど………焦げてない?

漂ってくる暮らしの香りに、僕はどうしようもなく締め付けられるような気持ちになる事がある。
悲しいとか辛いとかそういうものではなく、ただなんとなく一人ぼっちになったような気持ちになる。

僕自身も暮らしの香りを漂わせてはいるのだ。
野菜を炒めてみたり、スパイス多めのカレーを作ってみたり。
ただなんでだろうか、同じ料理の匂いでも自分の料理と他人の料理には明らかな違いがあって、絶対に同じものは作れないという壁がある。

とりわけ肉じゃがなどは強くそう思う。
煮物というものはそのレシピが単純ではあるけれど、香りはもう千差万別だ。
どのような醤油を使って、みりんはどれくらい使って、じゃがいもはメイクイーンなのか男爵芋なのか………。

家庭ごとの色があって、その家庭の換気扇から流れ出るオリジナルにはその家庭を描くストーリーがある。
このストーリーが、料理が、香りが、僕とは違うのだという明確な壁を作り
そしてどこか社会と僕を区切る壁にもなっているようだ。

どうしようもなくセンチメンタルな夜には肉じゃがの香りはつきものだ。
僕は一人ぼっちだ。なんて本当には思っていないのだけれど
僕は一人ぼっちだ。なんて感じてしまう。なんだか泣けてしまう。

皆が何気なく通り過ぎる香りの中には、僕を泣かせるだけのエネルギーがある。
家族の香り、手作りの香り。

なんとなく、少しでも近づいてみたくて
「ご飯だよ~」
とつぶやいてから夕食を食べてみた。

別の意味で泣きそうになった。

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