日記

2月23日(土)
・映画 小森はるか『空に聞く』(恵比寿映像祭)
 ラジオパーソナリティの阿部さんがマイクに向かう時の表情が印象的だった。顔と声の表情がとても魅力的なんだ。いたわりと言ったらいいか、抑制された慈しみと言ったらいいのか。
 かさ上げ前最後の七夕祭りの音を届けようと、生活音を拾えるバウンダリーマイクを持って、12時間生放送をした阿部さん。全長3kmのベルトコンベアで街へと土を運び、10~12mかさ上げをした陸前高田。道路ができ、店ができ、住宅、学校ができ、それでもまだ人が少ない道路を通る山車。パーソナリティを辞め、料理店を再開した阿部さん。店の裏口から見る、新しく生まれつつある陸前高田の景色が好きだと言う。懸命に生きる人々の強さと美しさに触れた。上映後に、監督のトークがあり、直接阿部さんや取材した人々の魅力を聴けたのも大きかった。
http://ecrito.fever.jp/20190921220425

・映画 坂上香『プリズン・サークル』(イメージフォーラム)
 テレビ業界で働く友達とそのパートナーと観に行った。すさまじく良かった。受刑者の方の経験してきた話を聞いてかなり苦しかった。比べ物にもならないが、私自身もパワハラやモラハラで自己否定に陥ったことがあるので、自分の身に置き換えて思うところがあった。「その涙は何の涙ですか」「変わる、と口では言っているけど、実際何が変わったんですか」私も言われたことがある。
 友達は、出演者の個人情報の見せ方(受刑者のモザイクの薄さや出所者の多くがモザイクをしていないことなど)、TCの説明における文字情報の多さ、取材対象者が受刑者に限られていたこと、対象者が多すぎるのではないかなどの疑問があると言っていた。私は、個人情報の開示は、過去に犯罪を犯した人であっても、人生を前向きに生きられるという希望を伝えるという、出演者の強い意思表示なのではないかと思った。濃いモザイクによって、個人特定のリスクは低くなるが、罪を犯した人に対してスティグマを与えることにもなるのではないか。
 友人と共通した感想が、受刑者のみに説教のように聞こえる言葉がかけられることがあった、という点だ。犯罪を犯したことがない人々が内面化している社会規範を繰り返しているようにも聞こえる。ただ、それは深いレベルで自己開示し合っている間柄だからこそ言える言葉だったかもしれない。だからこそ最後の出所たちの会で工場で働く彼のなんとも言えない笑顔があったのだろう。
 困った時に「助けて」と言える。仲間を見捨てない。強みを活かしあい、弱みは補い合う、そんな社会を作るにはどうしたらよいのだろう。岩瀬直樹先生は、「学校は20年後の社会を写す鏡」であるという。『みんなの学校』の木村泰子先生は、「学校は刑務所みたい」と言う子どもは多い言う。誰もが「自分の帰れる場所」を持つにはどうしたらよいのだろう。

(余談)
 友達夫婦と映画の感想を話していて、まず映画の批判が出てきたが、私は自分の感想をきちんと言えなかった。それは、自分の意見を言うと嫌われるのではないかという思い込みがあったからだと、帰り道『メンタルモデル』という本を読んで気づいた。
https://prison-circle.com/


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