新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創ることをミッションに、フリーマーケット（フリマ）アプリの「メルカリ」等のサービスを提供する株式会社メルカリ。

当記事では、メルカリで売れた商品をそのまま郵便局に持っていくだけで発送可能な梱包コーナー「つつメルすぽっと」の実証実験を開始したことが話題となっている。現在、首都圏５ゕ所の郵便局に設置されている梱包コーナーであるが、実証実験の結果を踏まえて、展開地域の拡大を検討していく予定とのことだ。

1. 市場と互酬性とシェア

市場（market）とは、「いちば」と読まれる場合は、商品の交換がなされる場を意味し、また「しじょう」と読まれる場合は、商品交換（commodity exchange）の場の有する機能や、商品を交換する人間関係をも意味する。

このような意味から考えるならば、「つつメルすぽっと」は「いちば」のためのサービスの提供であり、「しじょう」を活性化させるための、いちばとしじょうの両面の機能を持つものと考えられる。

モノが両者の間を双方向的に移転することにはいくつかの類型が考えられるが、贈与等のあり方には「互酬性（互恵性、reciprocity）」という概念がある。すなわち、相手から何かもらったり、してもらったりしたら、お返しをするということが互酬性の本質である。

メルカリのようなシェアリングエコノミーにおいては、信用や信頼が大切とされる。市場で財・サービスを双方向に移転する場合、互酬性にもとづいて、誰かから何かを与えられたら、できる限り等しい値のお返しをすることが望ましいとされている。このような「均衡的互酬性」に等価性を成立させる装置には貨幣などが存在するが、財・サービスを移転させる際には信用や信頼が重要となる。市場経済や資本主義経済は信用等によって成立する。たとえば、金融サービスでは、信用という安心感が危険や損失を防ぐこともある。

2. コンビニ傘の販売とポジショニング分析

金属を使用しないことで、さびによる劣化を防ぎ、長く使えるようにした傘をコンビニ向けに販売する話題があった。

たとえば、傘の購入が必要となるケースを考えてみよう。どのようなケースが考えられるだろうか。おそらく、次のようなケースが多いだろう。

✔︎ 外出前に天気予報を確認していなかった。
✔︎ 突然の雨で傘を持っていない。

まず、傘を購入するのではなく、借りる場合を考えてみよう。

✔︎ 路上の人が傘を複数持っていたと仮定しよう。この場合に傘を借りても、通常は傘を返却することは難しい。
✔︎ 近くにあるお店の人に借りると仮定しよう。この場合、同じお店に来店すれば傘を返却できる。しかし、返却することは容易ではない。

次に、突然の雨で傘を持っていない場合のアドホックな対応で考えてみよう。

✔︎ 傘を購入する場合、価格はある程度手ごろで、高価な傘でなくてもよい。
✔︎ コンビニだったら店舗数も多く、近くにあるだろう。

コンビニで傘を購入する場合のポイントとしては、次のようなものが考えられるだろう（下図参照）。

コンビニ傘のポジショニングとして、

✔︎ 傘を持っていない場合、突然の雨でも購入できる。
✔︎ お店も近くにある場合が多い。
✔︎ 価格は高すぎでなく、手ごろ。また、品質も悪くない。

などが考えられる。

3. もし、自分が新しい市場を考えるならば？

上述（2. コンビニ傘の販売とポジション分析）で考えたコンビニ傘のポジショニングから、新しい市場を考えてみる。

たとえば、コンビニエンスストアのローソンが導入しているモバイルバッテリー貸し出しサービスが参考になるだろう（「【ChargeSPOT】ローソンにも導入！ 話題のモバイルバッテリー貸し出しサービスを実際に使ってみた/充電しながら移動できるのが最高!!」）

コンビニの立地は「ドミナント戦略」であると言われることもある。ドミナント戦略とは、ある地域において高密度に店舗を出店し、市場占有率を高める手法である。コンビニの店舗数が多いことや、ドミナント戦略による立地は、シェアリングサービスに向いている可能性も考えられる。

したがって、もし、自分が新しい市場を考えるならば、

「コンビニ等による傘のシェアリングサービス」

を提案してみたい。

たとえば、傘を借りる際に金額を支払い、傘を返却したら10ポイント分の電子マネーを付与する仕組みをデザインすることなどもよいだろう。

【参考文献】
小野塚知二（2018）『経済史：いまを知り、未来を生きるために』
ダロン・アセモグル、デヴィッド・レイブソン、ジョン・リスト（2019）『アセモグル/レイブソン/リスト　マクロ経済学』岩本康志監訳、岩本千晴訳