囀り240422、あるいは記憶の縄釣瓶petit: テーブル。

佐藤時啓君の連日の取り組みの足元どころか足底にも及ばないので恥ずかしい限りだが、まあ囀りだからいいか。
気に入りのテーブルを修理している。厚さ20ミリ、900ミリ正方程度の天板が20ミリ角程度の4本の脚に支えられた、高さ400ミリ程の低い正方形テーブル。下から100ミリ程のところに補強のためのやはり20ミリ角の角材4本が足の構造を支えている。修理終わったら写真をアップするが、会社の景気が良かった80年代だろうか、新宿三丁目の伝説のダンスバー「サザエ」に向かう路地の入口付近にいきなりできた綺麗なビルの、1〜2階に陣取った「アクタス」で買った。
そのアクタスで、40万円近かったと思う、6〜8人掛けできる打ち合わせテーブルを買った。その後資金繰りが苦しくなり、白金台から猿楽町に引っ越したときにも持って行き、10坪程度の狭い空間に無理やり設置した。そこからまた、飯田橋の恩師の事務所に間借りオフィスすることになった際、鉄製の脚を外して畳み、重い天板と共に運んで奥の空間に立てかけて置いておいた。さらにそこを引き払わずを得なくなった2010年頃だろうか、Macやデスク、複合機を自宅に運んで仕事を続けるしかないことになり、粗大ゴミとなった。今ならネットオークションに出して何某かの金額を手にすることもできただろう。
さて修理中の正方形テーブルに話を戻そう。先に記した通り、デザイン重視の、構造的にはなんとも心許ないテーブルだ。天板と8本の20ミリ角材の接合部は、ドリルで開けた丸い穴とそれに合わせた木の丸いピンで繋がっている。これがホゾを組んだりしていれば、もう少し頑丈だったのかもしれないが、初めから重いものを乗せるとグラグラする感じはあった。デザイン重視と書いたが、構造的に問題があるということは、インドストリアルデザインとしては失格。ヴィジュアル重視と言い換えよう。
だがこのヴィジュアル重視の正方形テーブルが、ぼくはずっと好きだったし、いまも好きなのだ。広さと高さがほかにない。申し分ない。同居人は捨てろと言い続けてきたが、オフィスの3回の引越しと自宅の引越しも経て現在も我が家にある。
しかし昨年末だろうか、酔って転んでこのテーブルの上に体が落ちた。テーブルのすべての構造が壊れた。家人にとってはやっと捨てる機会の到来だった。だがぼくは頑なに捨てなかった。夜中になんとか構造を組み立て、木工用ボンドで接合部を固め、2昼夜かかったと思う、家人の苦々しい表情を尻目に今もこのテーブルを使っている。
しかし最近になって、ボンドで固めた接合部がかなり歪み始めていることが気になっていた。そして今夜、家人が寝静まっている間に修復することにした。
歪んだ接合部ををできる限り直角に戻し、木工用ボンドを流し込んだ。しかしボンドだけではなんとも心許ない。こんなときには木屑かなにかを混ぜてやるべきだと思った。だが我が家に木屑などない。少し気力があればベランダに出て木っ端のひとつでも削ればいいのだが、そんな気力もない。
そこで閃いた。ボンドに鰹節を混ぜた。

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