囀り240226

いまこの国ではペペロンチーノスパゲッティがそこそこ人気ある。イタリアでは「アーリオ オーリオ エ ペペロンチーノ」、ニンニク油と唐辛子だ。いろんなレシピを見ると、唐辛子は種を捨て輪切りにして入れろと書いてある。確かにそれで美味しいが、ちょっと入れ過ぎたり時間を置くと、めちゃくちゃ辛くなる。新大陸発見以来、唐辛子は世界中の料理に瞬く間に取り入れられ、スペイン、イタリアはいうに及ばずインド、タイ、中国、朝鮮半島、日本でも、伝統料理にも家庭料理にも欠かせない素材となっている。その品種も多彩で、色味、辛味、さまざまだ。「世界一辛い唐辛子」なんて言葉もメディアでは最近よく見かける。僕はインド料理(的)なものやタイ料理(的)なもの、朝鮮半島料理(的)なものを作るときには、その国の、すでに挽かれた「レッドペッパー」を使うが、それ以外では日本の「鷹の爪」を使う。もはや20代や30代の頃ほど激辛料理と闘って快感を感じる年齢でもなくなったので、鷹の爪を輪切りにして入れたアーリオ オーリオは辛過ぎると感じるようになった(とはいえデリーのカシミールカレーは嫌いになれない)。そこで丸のまんまの鷹の爪をニンニクとともにオリーブオイルに入れ弱火で香りを出している。しかしこれが実に美味い。ほかにきんぴらでも佃煮でも豚汁でも、切らずに香りだけを引き出した鷹の爪が、いまや定番になった。一方このところ同居人の弁当を作る毎日。人と会う仕事である以上ニンニクを入れた料理は憚られる。そこで潰したニンニクと切らない鷹の爪でたっぷり香りを引き出したおかずが定番になってきた。最終的にはニンニクも唐辛子も入っていないものだ。そんなわけでわが家の台所には、香りを出したあとのニンニクと唐辛子がボウルにたまっている。しかしこれが、まだまだ香りを出してくれるから困る、捨てるまでに時間がかかる。

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