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Bリーグ2018‐19シーズン前半戦を振り返る。外国籍選手のオンザコートルールの変更について

富樫選手の劇的なスリーポイントシュートにより延長戦の熱戦に終止符を打ち、千葉ジェッツの3連覇で終えた天皇杯。2019年の男子バスケの盛り上がりとしてはこれ以上ないスタートだったのではないかと感じる。この後、Bリーグが再開されてBリーグのオールスターとレギュラーシーズンの後半戦そしてチャンピオンシップ、男子バスケ日本代表で言えばワールドカップのWindow6、ワールドカップ出場が決まれば夏には中国でのワールドカップ。
個人に目を向ければアメリカで大活躍している八村選手のNCAAトーナメントとNBAのドラフト、日本人2人目のNBA選手となった渡邊選手の益々の活躍。2020年の東京五輪、2023年のフィリピン・インドネシア・日本共催のワールドカップなどこれからの大きな国際大会を前にバスケットボールがどんどん盛り上がっていく可能性を感じている。

そんな中Bリーグ2018‐19シーズンもレギュラーシーズン60試合中31試合を終えて前半戦を過ぎたと言っていい状況である。まだシーズンを終えていないので全体の総括とはいかないが、バスケットボールをこよなく愛する一人の人間としてBリーグ2018‐19シーズン前半戦を振り返ってみたいと思う。特に外国籍選手のオンザコートルールの変更についてである。
※当然ですが筆者個人の考え・意見であります。

写真:天皇杯3連覇という偉業を成し遂げた千葉ジェッツ
https://tr.twipple.jp/h/2d/e3/%E4%B8%89%E9%80%A3%E8%A6%87x%E5%8D%83%E8%91%89%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%84%E5%A4%A9%E7%9A%87%E6%9D%AF%E4%B8%89%E9%80%A3%E8%A6%87.html

2017‐18シーズンと2018‐19シーズンの外国籍選手のオンザコートルールについての変更点をおさらいしてみる。
※主な変更点を記載しています
※※(引用文献)https://www.bleague.jp/files/user/news/pdf/20180620.pdf
【変更前】
・試合にエントリーすることができる外国籍選手および帰化選手は、1クラブ合計3名以内とする。ただし、帰化選手は1名以内とする。
・B1:各クォーターにおける申請数は2名以内とし、第1クォーターから第4クォーターまでの合計数は6名以内とする。帰化選手は、当該申請数にかかわりなく各クォーターにおいてプレーできるが、外国籍選手2名と同時にプレーすることはできないものとする

【変更後】
・試合にエントリーすることができる外国籍選手は、前項のうち1クラブ合計2名以内とし、帰化選手は外国籍選手と別途1名以内とする。
・試合中同時にプレーできる外国籍選手数は、試合を通して2名以内とし、帰化選手は試合を通して外国籍選手2名と同時にプレーすることができる。

つまり、ベンチには今まで外国籍選手が3名エントリーできていたのが2名のみとなり、また外国籍選手とは別に帰化選手も1名エントリーできる。そして、1クォーターにつき1名か2名、4クォーターを通じて合計6名までしか外国籍選手がプレーできていなかったことが、全てのクォーターで2名ずつ外国籍選手がプレーできることに変わった。また、各クォーターで2名ずつ外国籍選手がプレーできることに加えて帰化選手も同時にプレーできるようになっている。つまり実質の外国籍選手3名、オンザコート3が可能となったのが今シーズンであった。
当然この変更には発表したタイミングで賛否両論があった。肯定派の意見として例えば「オンザコート1のバスケットボールとオンザコート2のものを用意するのはバスケットボールの試合としておかしい。どのクォーターでも同じことができることは望ましい。」といったもの。否定派の意見としては「日本人ビッグマンの出番がなくなる。」や「帰化選手がいるチームがより有利になる。」といったものである。

写真:2018年に帰化したファジーカス選手
https://news.yahoo.co.jp/byline/kiyoshimio/20161229-00066016/

今回は
1.強化
2.集客

という2点で今回のルール変更について考えていきたいと思う。最初に筆者個人の見解となるが、今回のルール変更は“成功”だったと考えている。理由としては2の集客に大きな影響を与えることなく1の強化に繋がっていると感じるからである。それでは順に考えていきたい。

1の強化のまず意味するところは、率直に言ってBリーグでプレーすることが各選手の競技力向上に繋がるかどうか、そして各選手の競技力の向上が日本代表の“強化”に繋がるかどうか、とする。ここは主に1番(ポイントガード)から3番(スモールフォワード)という主にアウトサイドでプレーするプレイヤー群の観点と、4番(パワーフォワード)と5番(センター)という主にインサイドでプレーするプレイヤー群の観点を分けて考えてみたいと思う。

まずアウトサイドのプレイヤー群に関して言えば、多くの場面でインサイドに外国籍選手2名がいる状況となり、その外国籍選手の高さがありながらもリングにドリブルでアタックしゴール近くでシュートを決めきるという経験を多く積めるようになっていると感じる。もしそこに帰化選手がいるのであれば、コートに3名の外国籍選手と帰化選手がいる中でゴール近くのシュートを決めきるのは難易度がとても高い。
ただ、国際試合になれば当然ながら相手の選手は全員日本人以外であり、そういった相手にもリングにアタックして、ゴール近くで決めきることができなければ国際試合で勝つことは容易ではない。それを先に述べた八村選手や渡邉選手だけに頼るのではなく、Bリーグで切磋琢磨しているアウトサイド陣が出来るようになることは、日本代表の強化に繋がると間違いなく言える。
2018年12月のアルバルク東京と千葉ジェッツの試合では、千葉ジェッツがギャビン・エドワーズ選手、マイケル・パーカー選手、トレイ・ジョーンズ選手というオンザコート3を実践しており、そこにアルバルク東京の馬場選手がアタックしていったことはその良い例といえるであろう。

次にインサイドの選手に関して、まず変更前のルールでよく起きた現象を書いてみる。昨シーズンまで多くのチームは各クォーターにおけるプレーできる外国籍選手を
第1クォーター:1名
第2クォーター:2名
第3クォーター:1名
第4クォーター:2名
のようにしていた。そして、オンザコート1の第1もしくは第3クォーターに日本人の4番プレイヤー同士のマッチアップが多く起きていた。そうするとアルバルク東京の竹内譲次選手、栃木ブレックスの竹内公輔選手の相手は自分よりも小さい日本人ということが多くあった。これでは竹内選手たちが国際試合に出た時に、海外の自分たちと同じかそれよりも大きい、もしくはパワーのある選手たちと戦う力が養うことが出来るのであろうか。難しいと言わざるを得ない。逆に今のルールであれば外国籍選手とマッチアップする機会が圧倒的に増えている。
例えばアルバルク東京と京都ハンナリーズの試合では、竹内選手は(個人的に最強外国籍選手の一人と考えている)マブンガ選手と多くの時間でマッチアップしていた。マブンガ選手は今シーズンここまで24試合で平均20得点、8.7リバウンド、8.8アシスト(2019年1月14日時点)とBリーグのウエストブルック、BリーグのMr.トリプルダブルというスタッツを残している。竹内選手は苦戦していたがこの経験が代表戦に生きてくるはずと思う。また竹内譲次選手の平均出場時間も昨シーズンの約21分から23分と僅かながら増えている。よってこのルール変更が必ずしも日本人ビッグマンの出番を奪っているとは言えない。

写真:まだまだ代表に必要不可欠な竹内譲次選手
http://www.bbspirits.com/bleague/b180530b/

次に2の集客についてである。これはルール変更と集客の直接的な関係を表すデータがないので何とも言えない、という元も子もない結論なのであるが、、、確かに一部の観客にとってはコート上の4人、もしくは最大で6人が外国籍選手か帰化選手という状況を面白くなく感じることがあるかもしれない。ただ、集客という面で言えばBリーグの試合の価値をいろんな角度から訴求すれば解決していく問題だと考える。
それこそ天皇杯の準決勝“千葉ジェッツとアルバルク東京の試合”、決勝の“千葉ジェッツと栃木ブレックスの試合”のようにこれぞ“バスケットボールの面白さ”というものを訴求していけばコートに居る選手がどこの国のプレイヤーであろうと気にならなくなるであろう。もちろん千葉ジェッツには石井選手と原選手という千葉県出身の選手がいたり、栃木ブレックスにも橋本選手という地元出身の選手がいたりする。そういった地元の選手がいるから観に行くというのも一つの訴求価値であると思う。他にもハーフタイムショーが見たいから、あの空間にいるのが楽しいからなどたくさんの可能性があるように思う。
よって、今回のルール変更による集客への影響はそこまで大きくなく、上で述べた強化の要素が大きいので今のところ“成功”と言えるのではないか。

ただ、Bリーグもまだ3年目の途中、これから先もルールの変更があるであろう。変更そのものを悪とするのではなく、常に変更がどの目的を最優先しているのか、より改善の余地はないのかなどのことをファンと一体となって考えて前に進んでいくことが、日本のバスケットボールをより良くしていく上で大切だと感じている。あのNBAもFIBAの国際試合もそのルールは変わり続けている。すべてのファンにとっての理想とはならないかもしれないが、もっと多くの人にバスケットボールが楽しいと思っていただけるよう、その発展を信じて最後の文としたいと思う。

写真:今夏のワールドカップではファジーカス選手、八村選手、渡邉選手のトリオが揃うかもしれない
http://www.bbspirits.com/japan/jpn180704/

カバーの写真
http://www.nbajp.gearbox.performgroup.com/nba/yuki-togashi-won-the-japanese-emperor-cup/dux7rqz9un6e1ts0vjb1e4y6t

参考文献:
https://www.bleague.jp/files/user/news/pdf/20180620.pdf
http://www.fiba.basketball/basketballworldcup/2019
https://en.wikipedia.org/wiki/2023_FIBA_Basketball_World_Cup
https://www.bleague.jp/

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