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AIスピーカーは電気羊の夢を見るか?

(広い意味で)言葉とか文章に対して尽きることない興味を持ち、それに関わる仕事をしている身としては、なんとなく釈然としない思いを抱きつつも、常にどこかで気にしてしまう存在。

AIデバイスのことである。

「今ある仕事の◯割がAIに取って代わられる」や「AIを利用した新しいサービスを開始します」など、AIに関するニュースを聞かない日はないくらいだ。私の仕事の領域においても、さながらAI祭りである。

相手のことをよく知らずして「怖い」とか「役に立つ」とか言うのは私の性に合わないので、実際に使ってみることにした。
そんなわけで、AIスピーカー(スマートスピーカー)を買ってみた。AmazonのEcho Spot。

現時点で日本において入手できるAIスピーカーのうち、数少ないモニター画面付きのもの。この点が購入に至った決め手だった。聴覚情報だけというのはどうも心もとない気がしていたから。

…とかなんとか偉そうに言ってみたものの、本音を言えば私の「新しいもの好き」が頭をもたげたからというのが大きい。
「古き良きもの」や「人の手が作ったもの」、「想いがこもったもの」に強く強く惹かれ、その魅力の虜になる一方、「最新技術を体感するワクワク」も好きだったりする。…だんだんと、秋本という人間のアンバランスさが皆さんにもお分かりいただけるようになってきただろうか…笑

とにかく、昨日今日と2日間、"Alexa"と呼び掛けまくった。私の家は住宅地にあるため、たぶんご近所の方には「あぁ、あの家、AIスピーカーを買ったんだな…」とバレバレであろう。

当然ながら、音声認識能力は相当程度高い。わざと咳をしながら発話してみても、たいてい正しく聞き取ってくれる。だが一方で、やはりある程度定型化したフレーズで指示しなくてはならず、もどかしさも感じた。

例えば、昼寝をしようと思って「15分後に起こして」と発話すると、「15分後にスリープタイマーを設定しました」と返ってきた。こちらはもう眠いので、半分うとうとしながら「あぁ、スリープタイマーってことは目覚ましね…」とぼんやりと考え、眠りに落ちた。
目覚めてみると、15分などとうの昔に過ぎている。何事かと思って調べてみると(というかよく考えれば調べなくても分かるのだが)、機械の言う「スリープタイマー」は「◯分後に電源を切るタイマー」のこと。つまり、愛しのAlexaくんは、15分後に私を起こすどころか、逆に自分が寝てしまったのである。何という皮肉。
15分後に起こしてもらうためには、「15分後にアラームをセットして」などと言わなくてはならなかったようだ。このあたり、文脈の処理がまだまだ追いついていないことを伺わせた。

また、私はたまにZazというフランス人アーティストの曲を聴くのだが、Alexaに「Zazの曲をかけて」と言ってもダメ。試行錯誤の結果、「『ゼット・エー・ゼット』の曲をかけて」と言うと、「『ザス』の曲をシャッフル再生します」という答えとともにZazの曲を再生してくれた。
さらに、「ピアフの曲をかけて」と言うと「エディット・ピアフの曲をシャッフル再生します」とは答えるものの、探してくる曲は「愛の讃歌」1曲のみ。そんなはずはないと思い、ためしに「『ピー・アイ・エー・エフ』の曲をかけて」と言ってみるとたくさんの曲が出てきた。
こんなふうに、人名の認識もまだまだといった印象だ。

今のところ、我が家はスマートホーム化していないので、電気やエアコンのオンオフなどはできない。当面はこれまで述べたように聴きたい曲をかけてもらったり、出掛けに天気予報やニュースを教えてもらったり、という使い方が主となると思われる。
とにかく、私とAIスピーカーとの初顔合わせは以上のようであった。うーん、今後、彼が「文脈を読む」スキルをどこまで身につけるのかは、正直言って未知数である…。

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