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高確率で相続税の税務調査が行われる?不動産に関する税務署の調査方針とは?!

相続税の申告をする際に
「税務調査が入らないように適切な申告をしたい…」
と納税者の方であれば誰しもが考えると思います。
実際に相続税においては、他の税目に比べ調査率が高いと言われています。
そこで今回は、不動産に関する税務署の調査方針をご説明します。

1.    相続税の税務調査の実態

 相続税においては、他の税目に比べ調査率が高いといわれています。
国税庁の統計データによると、
相続税の税務調査率は約12%弱(平成29年度)(税務調査件数:12,576件 ・ 課税対象数:約11万2千人)と記載されています。

他の税目と比較するために所得税を例に挙げると、所得税の税務調査率:約2.7%(平成30事務年度)と記載されています。

課税対象者が他の税目に比べて少ないということはありますが、上記のデータより、やはり相続税の調査率は他の税目に比べ高いといえます。

2.    特殊な土地を鑑定評価額で申告

 国税庁の統計データによる相続税の調査項目として、金融資産(預金・有価証券)が49.3%と約半数を占めています。一方、不動は13.6%と低い結果となっています。
不動産は調査項目としてはあまり多くありませんが、実際に不動産を相続するときに備え、税務署が注視している論点について、例を用いてご説明します。

調査対象者は、遺産総額が3億円を超える横浜市在住Aさんです。
Aさんは相続税申告業務の際、空家となった実家の売却も併せて考えていました。
申告書作成作業は特に問題なく進められたものの、同時並行で進めていた実家の売却の件で問題が発生しました。

実家の土地に既存不適格な擁壁があり、擁壁のやり直しの費用がかかることから、売却価格が大幅に安くなってしまうことが判明しました。

路線価による土地評価額8,000万円に対して、売却見込額が3,000万円となり、時価の方が安くなるという逆転現象が生じました。

様々な面から検討を行ったものの、路線価による通達評価では、この著しい価格差を解消するような合理的な減額要素が無かったため、不動産鑑定士によって擁壁の費用も加味した上で鑑定評価額を3,000万円と算出してもらいました

これらの結果をもとに、無事に申告業務が完了し、申告期限後程なくして実家の売却も行われました。

しかし、当初の想定価格よりも高く、5,000万円で売却されることとなりました。

申告期限から1年後、大型事案を取り扱う役職である特別国税調査官の担当者から連絡が入りました。
調査の論点は、鑑定評価額3,000万円と売却価格5,000万円との2,000万円の価格差の件でした。正しい土地評価額は5,000万円であるという税務署の主張です。

土地の評価については、税理士・不動産鑑定士・不動産業者で連携して当時の鑑定評価額を算出したため、税務署に評価額算出や売却までの経緯の詳細を下記の通り説明しました。

税理士・・・路線価評価の範囲内において土地の特殊性を反映することが難しいこと
不動産鑑定士・・・評価額算出方法や参考とした土地の性質
不動産業者・・・土地売却の経緯・詳細

これらの説明について合理的であるとの回答を得たため、税務署の方でも再度検討をしていただくこととなりました。
その間に税務署は、土地の購入業者に訪問して購入の経緯について調査を行いました。その後、再度税務署と協議をした結果、やはり売却価格5,000万円での修正を要求されました。

しかし、複数の購入希望先があったことの事実や、当初の希望購入金額は鑑定評価額である3,000万円からスタートし、売却金額5,000万円は購入希望者の競争が行われた結果であることを税務署に説明しました。
幸いにも、その当時の価格交渉に関する書類も残っていたため、こちらの主張に説得力を持たせることが出来ました。
結果として、不動産業者の交渉力や技術力があったことが認められ、当初申告のまま修正はなく、是認となりました。

3.    国税庁からの不動産に関する税務調査の方針

 今回ご紹介させていただきました税務調査の事例ですが、担当している調査官からは、以下のような調査方針で行っているとお伺いしました。

『原則的に鑑定評価を行ったすべての不動産については、国税庁から申告後の不動産の動向を探るように言われており、その価格の算出根拠が合理的であるかどうか、又はその後売却を行っていないかどうかも調査しています。』

4.    まとめ

 相続税申告において、鑑定評価は費用がかかるためよほど特別な理由がない限り土地について鑑定評価は行いません。
鑑定評価を行う場合には、税務署によって厳しい目でその後の不動産の動向や金額の妥当性について確認されることを認識しておく必要があります。
そして、修正申告にならないように税務署に対してきちんと信頼できる専門家に依頼するようにしましょう。

税理士法人ブライト相続 戸﨑 貴之監修