直す人

日曜の午後、天気おだやかこころおだやか、完全に油断していたところをブスッと刺された。

金にならないことして逃げてるだけの役立たず

「不意打ちとは卑怯!」なんて言う余裕はない。どくどく、どくどく、
こんなときは、書く、とにかく書く、日記帳開く。

おまえは役に立たないことしかしないな、というあの「お父さん」の表情、声。それらを象徴しているあのことばとあの場面。

「○○子ちゃん『今年は最後の追い込みです』だって、凄い子だな。スケッチブックはこんなこと書けないでしょ。○○子は偉いなー。勉強がんばってるんだよ」
○○子を称賛する父の顔は輝いていた。
おっしゃる通り、「最後の追い込み」なんてことば、スケッチブックは知らなかった。
○○子は一度しか会ったことがない父方の、ひとつ年上のいとこ。うちに遊びにきた翌年の○○子からの年賀状を父は読み上げながら、勉強に勤しむ優秀な姪と比べるのも恥ずかしい奴、おまえは本当にだめだなと言外に思いっきり言っていた。あの眼差し。

○○子は成績優秀、北米留学し、そこの人と結婚して、親戚経由で「ドリームキャッチャー」を閉じ籠っているスケッチブックにプレゼントしてくれた。草葉の陰で父はそれを見て喜んだか?

わたしは自分の役に立ってる。
お父さんが破壊したものだって直して直してきた。
わたしはわたしの役に立ってる。

ここはオレンジのペンに持ちかえて書いた。

ここら辺で涙があふれた。頭を激しく打ちつけたい衝動も出た。
「打たなくていいよ」
頭にそっと手をやった。
「それくらい痛かったんだね、悲しかったんだね」


腐ったような本、ミシン、おもちゃ、魔法のように直してしまう人たちがいる。その過程を見せてくれる動画を久しぶりに見た。
「直す人ってすてきだな」
声、自分の声が耳に入ったとき、わたしも直す人じゃん!
反射的に思った。
自分のこと直してきてるじゃん!
わたしもすてきな人じゃないか!

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