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【ネタバレ有】「ナイスバルク!」について① シナリオ雑感


はじめに

 この記事は「新クトゥルフ神話TRPG シナリオコンテスト 2022」にて大賞をいただきました、「ナイスバルク!」について作者がつれづれなるままに筆を滑らせるだけのものです。同シナリオのキーパーをする際、あるいはこれからシナリオを執筆される際に、何かしら参考になるようなものがあれば幸いです。なお、記事の特性上、「ナイスバルク!」のネタバレを含みますので、そのあたりあらかじめご承知おきください。

※この記事において、書籍名は以下のように記載します。
『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』
 ➡『ルールブック』
『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルムvol.1 クリーチャー編』
 ➡『vol.1 クリーチャー編』
『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルムvol.2 神格編』
 ➡『vol.2 神格編』

このシナリオを書くに至った経緯

■文字数制限と舞台設定

 前述のとおり、「ナイスバルク!」はシナリオコンテストに提出することを念頭に置いて執筆した作品です。したがって、この記事のようにのんべんだらりと執筆するわけにはいかず、「26文字×800行以内」「図版2点以内」という厳然たる制限の中で書かなければいけませんでした。しかしながら、自分はかねてよりクローズドシナリオ(ここでは建物の中などの閉ざされた空間を舞台にしたシナリオの意)よりもシティシナリオに比較的面白みを感じており、クローズドで勝負するという選択肢は最初からありませんでした。どうせなら自分が面白みを感じるものを書いたほうが、ほかの方にも楽しさが伝わると思ったからです(シティシナリオにこだわった理由はもう一つあるのですが、それは後述します)。
 ただ、シナリオを書かれている方であれば頷いてくださる方も多いと思うのですが、コンテストの文字数制限はかなりシビアです。クローズドならまだしも、シティシナリオを書こうとすると、かなり苦しくなると思います。
 それを念頭に置いて、まず自分の筆力では、現代日本を舞台とするのがよいだろうと判断しました。舞台設定について改めて説明する必要がなく、その分の文章量を内容面に費やすことができるからです。もちろん、ラヴクラフトをはじめとする原作群に詳しい方であれば1920年代アメリカという選択肢もあるでしょうし、コンパクトにまとめる筆力がある方であれば特殊な舞台を魅力的に描くことも可能でしょう。あくまで自分にとってはそうだった、というだけの話です。

■現代日本のどの側面を切り取るか

 これで、自分の中で「現代日本の小規模シティシナリオを書こう」という方向性が決まりました。では、さっそくMicrosoft Wordを立ち上げて、いざ執筆し始め……られるわけもないですよね。なにしろ、まだ何も決まっていないわけですから。具体的な執筆に移るためには、もう少し方向性を狭める必要がありそうです。
 そこで、シナリオ背景を構想するにあたり、せっかく現代日本を舞台にするのであれば、「現代日本らしさ」をシナリオの中で表現したいなと考えました。どの時代設定に改変しても通じるシナリオというのも乙なものではありますが、やはり大正時代を舞台にするなら「大正らしさ」、ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にするなら「ガスライトらしさ」、SERa医科学研究所を舞台にするなら「医科学研究所らしさ」が感じられる要素があると、その舞台が生きてくると思うんですね。
 では、「現代日本らしさ」をどう表現したらよいでしょうか。最初に思いついたのは、いかにもではありますが、テクノロジー・科学技術方面です。幸い、クトゥルフ神話の神格・クリーチャーにはテクノロジー方面と相性のよいものもいますし、あるいは多少ひねって予想外のクリーチャーを出してみても面白いと思いました。いっそ、七色に輝くゲーミング・チャウグナ―・フォーンなんてのも素敵ですね。
 それでは結果的になぜその方向性でシナリオを書かなかったのかというと、残念ながら自分が科学技術方面にまるで疎かったことと、いくつか思いついたアイデアが、プロットを考える段階ですでに、「この文章量では風呂敷を畳めないな」と感じてしまったからです(ちなみにそちらのアイデアではVtuberをテーマにして書こうとしていました)。
 ボリューム感の合わないものを無理に書こうとしても、結局それは読みづらさ、理解しづらさ、読者(キーパー)への不親切さに跳ね返ってきてしまうので、自分としては尺に合わせた構想が何よりも重要だと思っています。

■コロナ禍の日常を描くという試み

 いきなりいくつかのアイデアを出しただけの段階で頓挫してしまったので、次は視点を変えてみることにしました。すなわち、「テクノロジー以外に現代日本らしさを表現できる要素はないのか」という方向性で考えたわけです。そこで思いついたのは「新型コロナウイルスの感染拡大」という、まさに足元で起こっている特異な事象でした。
 2019年に新型コロナウイルス感染症(正式名称は「COVID-19」)が発生して以来、私たちの生活様式は激変しました。すなわち、「現代日本」のあり方が大きく変わってしまったのです。しかしながら、それ以降に発表された現代日本が舞台のシナリオのほとんどは、この感染症を「なかったもの」として描いています(自分が知らないだけで、同人シナリオの中には背景に反映されたものもあるのかもしれません)。自分はそこに違和感を抱いていました。そこで、ふと「コロナ禍における日常」を描いてみようと思ったのです。ただ、決してテーマというほど大きなものではありません。たとえばハスターリク(『vol.2神格編』P.215~216)などと絡めればCOVID-19自体を神話的事件に仕立て上げることもできるでしょうが、それはやりたくありませんでした。あくまでCOVID-19を「事実としてそこにあるもの」と捉え、付き合い方を模索している生活様式の中での探索を描きたかったのです。
 ただ、当初は、混迷を極めた緊急事態宣言下の都市部を舞台にしようと考えていました。そこが最もCOVID-19の影響をストレートに感じられる時期だったからです。すなわち探索者は外出を制限され、リモート機器を駆使して探索行動をするわけです。そうですね、事件もビデオ通話をきっかけとして発生させるというのはどうでしょうか。友人とオンライン飲み会をしていたら、通話相手がいきなり苦しみ出し、探索者たちは怪異の姿をモニタ越しに目撃してしまうのです!
 お察しの方もいらっしゃるでしょうが、このアイデアは早々に没にしました。なぜなら、クソつまらなかったからです……失礼、自分としたことが、少々お下品な言い方になってしまいました。訂正しますと、出来がおうんこめいていたからです。そもそも、わざわざ「外に出られない」という縛りプレイを探索者に課す時点で、プレイヤーにとってはフラストレーションしかありません。リモートでの探索が逆に有機的に働くようなアイデアを思いつけばよかったのですが、残念ながら自分の乏しい発想力ではブレイクスルーには至りませんでした。

■筋肉との出会い

 ただ、その試行錯誤の過程がまったく無駄だったかと言われると、決してそうではありません。緊急事態宣言下の影響や生活様式をいくつかリストアップしていく中で、「巣ごもりでの運動ブーム」に目をつけることができたからです。いわゆる、リングをフィットさせてアドベンチャーするゲームの流行ですね。自分も「ダンベル何キロ持てる?」(小学館の漫画作品・リンクはアニメ公式サイト)の影響を受け、フィットネスゲームに手を出してみたり、ジムに入会してみたり、プロテインを阿呆のごとく飲んでみたりしていました。うん、これはなかなか膨らませがいのありそうな要素です。ひとまず「運動」を軸として発想を広げていくことにしました。
 前述のとおり、当初は緊急事態宣言下の日本を舞台にしようと考えていたので、「フィットネスゲームに神話的なプログラムが仕込まれている」というプロットを考えていました。絡ませることのできそうな神格・神話生物としたら、たとえばコラジン(『vol.2神格編』P.98~99)あたりでしょうか。うん、なかなかキャッチ―なアイデアではありますが、そうすると壮大すぎて、やはりボリュームがオーバーしてしまいそうです。
 では、「プロテインに神話的なものが仕込まれて流布されている」というのはどうでしょう。背景としてパッと考えつくのはチョー=チョー人(『ルールブック』P.292/『vol.1クリーチャー編』P.98~99)の黒い蓮、あるいはシュブ=ニグラス(『ルールブック』P.321~322/『vol.2神格編』P.126~130)のミルクなどでしょうか。特に豊穣の神シュブ=ニグラスは筋肉の増強と相性が良さそうですし、カルトもいますので神格自体が登場しない小規模な事件にも仕立て上げられそうです。ただ、「神話的な混ぜ物が巷に流布してしまう」という背景にすると、前年のシナリオコンテスト2021で賞を受賞された某シナリオと似通った展開になってしまうのが泣きどころでした。それに、おぞましい筋肉の異常発達を描くにはシュブ=ニグラスはぴったりなのですが、ぴったりすぎて「いかにも」という印象です。生来の天邪鬼である自分は、そこを裏切りたいと思ってしまいました。今にして思えば、ストレートにシュブ=ニグラスで書いてもよかったかもしれませんね。

■ストックアイデアとの接合

 おぞましいほどの筋肉を描きたい、しかしもうひとひねりして予想を裏切りたい。この相反する考えに、自分は「いっそ不定形の怪物であれば、自由自在に見せかけとしての筋肉を象ることができるのでは?」というアイデアに活路を見出しました。
 本来、自分を苛め抜くようなストイックなトレーニングのもとにようやく結実するはずの筋肉を、何の努力もせずに手に入れられるとしたら。それは拒否しがたい悪魔の囁きでしょう。ただし、それはあくまで不定形の体を筋肉のように象っているだけであり、いわば見せかけの美しさでしかありません。そんな虚飾の極みともいえる誘惑の前に、ストイックなボディビルダーが屈してしまったとしたら……うん、これはいけそうです。巨悪を描こうとするとどうしてもボリュームが膨れ上がってしまいますが、神話的事件に巻き込まれた哀れな一人の男の顛末を描くのであれば、事件は自ずと小規模なものになり、なんとか文字数制限の枠に収まりそうです。
 問題は不定形の神話生物として何を登場させるかです。不定形の軟泥……は、新版のソースブックに記載がありません。ショゴス・ロード(『ルールブック』P.289~290/『vol.1クリーチャー編』P.88~89)は、どちらかというとでっぷりした人間の体に変身するイメージがあります。
 頭を悩ませていた自分は、書き留めていた過去のストックアイデアを見返してみることにしました。自分でも忘れていたのですが、そこには「仁王の村」というクローズド・シナリオの卵がありました。どうやら過去の自分は、因習の残る田舎の村をテーマにして書こうとしていたようです。村はずれにぽっかり空いた洞窟の奥に、薄暗い蝋燭の光に照らされたおぞましい仁王像(ニョグタ)が鎮座しており、その前で「におうぐたさま、におうぐたさま」と一心不乱に祈る老婆……かつて、そんなビジュアルイメージだけを思い浮かべていたことを思い出しました。とてもシナリオと呼べるものではありませんが、それを見たときに「ニョグタの落とし子」を登場させることを思いつき、ものにならなかった過去のアイデアを、形を変えて生かしてみることにしたのです。

シナリオを形にしていこう

■執筆前のリサーチ

 神話生物も決まった、テーマも決まった、いよいよシナリオを執筆するべくMicrosoft Wordを立ち上げ……たいのはやまやまですが、その前にもうちょっと、舞台や素材の情報を掘り下げてみることにしました。なにしろ、自分はなかなかのわがままボディをしており、ボディビルの知識なんてないのです。それに、「仁王」というキーワードからもさらにいくつか発想を広げられそうですね。そこで、執筆前の下調べ、リサーチを行ってみることにしました。

■リサーチ① 仁王像

 今回、シナリオを執筆するにあたり、自分にはとある課題がありました。前年のシナリオコンテスト2021で幸運にも佳作を受賞した処女作「つめたいあの人」について、「民俗学的な要素を物語にもっと絡めたほうがよい」という旨の講評をいただいていたのです(『Role&Roll vol.210』)。
 詳細なネタバレは避けますが、「つめたいあの人」を執筆するにあたり、クトゥルフ神話の冒涜的な物語に実在の民族文化をどこまで絡めるべきなのか、躊躇があったことは事実です。特定の文化を描くことは時としてセンシティブな話題となりうるものであり、意図せずしてその民族を貶める表現と受け取られることを恐れていたのです。先の講評については、敢えてそこを避けて通った、創作者としての姿勢を見抜かれたのだと自分は受け止めていました。
 そこで、前年のリベンジというわけではありませんが、もう一度土地の伝承を物語に組み入れることにチャレンジしてみようと考えました。それは、クローズドシナリオではなく、シティシナリオにこだわっていた理由でもあります。
 自分にとって幸運だったのは、仁王像について調べるとすぐに、国東半島が誇る「六郷満山文化」に行き当たったことです。奇岩霊窟に棲まう鬼の伝承はニョグタと相性がよく、垂れ下がった鎖を伝って登り降りする「岩屋」という修行場など、ギミックに使えそうな名所もたくさんありました。しかも近くには有名な温泉地、別府があり、そこには「地獄めぐり」という独特のネーミングの観光施設があるのです。さらにプレイヤー資料に説得力を持たせるために日本の民話を調べていくと、「仁王」と「臭う」をかけた話が見つかり、これは悪臭を放つニョグタの落とし子と関連づけられそうだなと考えました。
 こうやって、シナリオ内に使えそうな要素を調べ、ひたすらリストアップしていく作業は楽しいものです。料理でいうと、スーパーで食材を選んでいるときのワクワク感に近いでしょうか。

■リサーチ② ボディビル

 下調べをしていく中で、いちばんの障害となったのは、ボディビル大会におけるレギュレーションの厳密さと規模感です。当初からボディビル大会をクライマックスの舞台にしようと考えていたものの、ボディビルに対する知見の少なさから、自分には「マッチョメンが肌を黒く塗って、ブーメランパンツでポーズを決める」くらいのイメージしかありませんでした。しかし、調べていくにつれ、出場登録に伴うドーピング検査、大会認定サロンでのみ認められているカラーリング、充実した大会プログラム、観客の多さと熱心さ……考えてみれば至極当たり前の話なのですが、美を競うボディビルの公式大会の世界は、想像以上に「ちゃんとしすぎていた」のです。
 制約があまりに多すぎると、探索者を自由に動かすことが難しくなり、TRPGならではの楽しさが損なわれてしまいます。また、リアリティが出るのはよいことですが、キーパーへの説明が必要になり、文章量もかさんでしまうことでしょう。さらに、公式の大会が行われるのは比較的大きな都市であることが多く、国東半島を舞台にするという方向性ともミスマッチでした。
 そこで、シナリオに組み込むにあたり、あくまで身内向けの緩い大会であるという設定にしました。と同時に、障害を逆手に取り、「なぜ一流ボディビルダーが、そんな身内向けの小さな大会に出場することを決めたのか」という謎を投げかけることにしたのです。
 もう一つ、ボディビルを題材として扱うことに際して決めていたことは、「必要以上に茶化さない」ということです。コスチュームや独特の掛け声などからコミカルに描かれることの多いボディビルですが、それに向き合う人たちの姿勢はただただ真摯でストイックです。そんなボディビルのことを「馬鹿にしている」「悪者にしている」と受け取られるようなものにはしたくありませんでした。
 もちろん、クトゥルフ神話の物語である以上、何らかの惨劇は起きてしまいます。また、エンターテイメントの題材として消費しているという点には変わりがありません。それでも、結末を迎えた後に「ボディビルはいいものだ」という印象で終わるようにしたかったのです。
 「ナイスバルク!」のクライマックスでは、人間が弛まぬ努力によって手に入れた筋肉が、見せかけの筋肉に溺れていった怪異を打倒する手段の一つとなります。人間賛歌にも似たその発想は、「ゲームである以上、なるべく不快に感じる人を少なくしたい」「できるだけ多くの人が楽しめるようなものにしたい」という配慮から生まれたものだったと記憶しています。
 これで次回、めちゃめちゃ人を傷つけるようなシナリオを書いたとしたら説得力は地に落ちますね。

テストプレイでの気づき

 材料をそろえ、設定を固め、プロットを考え、フローチャートを描き……ここにきてようやくMicrosoft Wordを立ち上げます。シナリオの書き方は人それぞれかと思いますが、自分の場合は、この段階で頭の中にシナリオがほぼほぼできあがっており、あとは文章化して形にしていくだけという状態になっています。もちろん文章を考えるときにも課題やアイデアは浮かんでくるので、適宜それを取り入れながらの作業となります。
 無事にシナリオの初稿が完成し、レギュレーションの文字数に収まることを確認したら、いよいよテストプレイという運びになります。どの段階でテストプレイをするのかについても人それぞれかとは思いますが、自分は完全に書き上げてしまってからプレイヤーさんに声をかけることにしています。これは単純にそのほうが自分はモチベーションが上がるというだけであり、修正のことを考えるとやや非効率的なやり方だと言えるでしょう。実際、「あだに散るらむ花かるた」では、テストプレイを経てほぼ全編を書き直すという憂き目に遭いました。本当は、シナリオの形に固める前に一度テストプレイをして、プレイヤーさんの感触を確かめておくほうがよいのかもしれません。
 幸い「ナイスバルク!」においては、テストプレイでそこまで大きな修正は入りませんでした。ただ、唯一大きな修正を迫られたのが、NPCである青木の設定です。実は当初、青木は探索者の友人ではなく、ゴシップ誌「週刊DRAW」から派遣された記者という設定でした。村上鉄人の不倫疑惑を取材するためにやってきた下世話な人物で、探索者とは地獄めぐりのバスツアーで出会うという流れにしていたのです。
 なぜ青木を友人にしていなかったかというと、ひとえに自分が天邪鬼な性格だったからです。シティシナリオの導入には「友人のNPCから調査を依頼される(相談される)」というお決まりの黄金パターンがあります。拙作「つめたいあの人」も「あだに散るらむ花かるた」も、そのパターンです。あまり同じパターンが続くのは面白くないので、一度は友人NPCに頼らない導入で書いてみたかったのです。また、犠牲者として登場させるのなら、できるだけ嫌な奴として描いたほうが、プレイヤーの心理的負担も少ないと考えたのです(あくまで物語としての展開・配役・舞台装置の話であり、嫌な奴なら死んでもいいのかというのは別問題です)。
 しかし、テストプレイをしてみた結果、プレイヤーさんの反応ははかばかしくありませんでした。自分としては、探索動機は「自分たちの呪いを解くため」で十分だと思っていたのですが、プレイヤーさん曰く「積極的に探索する理由に欠ける」とのことでした。結局のところ青木は序盤で死んでしまうので、仕組みとしては探索者との関係性に左右されないはずなのですが、プレイヤー心理といいますか、心情的な部分で、事件への向き合い方が大きく変わってくるというのです。心理的負担を少なくしようとするあまり、事件に向き合うモチベーションまで奪ってしまっていたわけですね。これはテストプレイをしてみなければわからないことだったと思います。
 また、青木はフラッシュを焚いて写真を撮ってしまったために殺されてしまうのですが、「果たしてプロの記者がそんなヘマをするだろうか」という意見もありました。いかに人目を忍んでいて怪しく見えるとはいえ、「自宅の郵便受けに本人が何かを投函している」という様子は、ゴシップ誌の写真としては決定打に欠けるものです。確かに、フラッシュを焚いてまで撮る写真とも思えません。
 結局、探索者の友人という設定にすることで、積極的に事件に関わるだけの理由を確保し、かつ本業の記者ではないという設定にすることで、フラッシュを焚いて撮ってしまったことへの納得性をもたせることにしました。当初自分が目指していた導入とはかなり変わってしまった感があり、若干悔しさの残る修正とはなりましたが、テストプレイの大事さを思い知らされた瞬間でもありました。

おわりに

 とりとめのない思い出を長々と書いていたら、なんと8,000字を超えてしまいました。こんなのいったい誰が読むんでしょうか。気の利いた締めの言葉も思い浮かびませんが、雑感としてはこの辺りで一旦筆を置くこととし、キーパーへのマスタリングサポートについては記事を分けて書いていこうと思います。もしご興味がありましたら、引き続きよろしくお願いします。

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