ホテルマンのリアル日記(裏事情/クレーム/良いホテルとは、等々)①
一番最初の記事で自分には書ける題材がないということを書いたが、これでもホテルマンとしてフロントで15年程働いている。
15年も接客していれば色々なお客様もいるし、様々な出来事、ホテルの内情などなど職業物を面白く書けなくはない、と思う。(自信はない)
良いホテルの見分け方なども多分一般の人よりはわかっていると思う……思いたい。
ということで、今後は試しに色々と書いてみようと思う。
お客様エピソードについては特定されない程度に多少の脚色と昔の話をメインにしていきたいと思う。個人情報に厳しい時代なので。
まず最初は面白くはないが、今でも印象に残ってるお客様のエピソード。
ホテルマンになって数か月くらいの頃。
受験シーズンに一人でホテルに宿泊していた女子高生がいた。
受験生が遠方から来て一人で宿泊すること自体は何ら珍しいことではないが、年齢の割にミステリアスで大人っぽい雰囲気と色白な肌が今でも覚えてる。
夜中に自分一人しかいない時にフロントに突如やってきた。
「すいません、私薬飲んでて朝起きれる自信がなくて。起こしてもらえますか?」
一人で宿泊する高校生がわざわざフロントに来るってこと自体が珍しいのに、まさかの依頼だ。
「モーニングコールの設定はこちらでもできますが」
「お願いします。自分でも目覚ましはかけてますが、2度寝もあるし不安なので、できたら部屋まで確認に来てほしいです」
自分もまだ若い頃だったので、なんか少しドキリとしてしまうセリフだった。
部屋までって、勝手にマスターキーで入って直接起こせということか?
いや、それはさすがにまずいのでは。
「かしこまりました。モーニングコール後に部屋まで伺ってノック致します」
「ありがとうございます、これあげます。夜勤頑張ってください」
というと、彼女の手には飴玉が2個握られており、自分に向けて差し出してきた。受け取ると女子高生は部屋へと戻っていった。
中に入るのはまずいのでドアをノックするのが最大限できることだろうと判断した。
そして朝、モーニングコールを設定した時間に部屋の前へと向かった。
すると部屋の中から『残酷な天使のテーゼ』が目覚まし音として流れているっぽくなかなか音が消えない。
モーニングコールは停めたが、また寝て自分の目覚ましには気づいてないようだ。
ノックをして声をかけてみる。
「フロントでございます」
相変わらず目覚ましの音楽は止まらない。やはり中まで入って起こすしかないのかと思いながらもう一度ノックしてみる。
「お客様、フロントでございます」
するとやっと音楽が消えた。どうやら目が覚めたようだ。
少しするとゆっくりとドアが開いた。
「……起こしにきてくれてありがとうございました」
まだ寝ぼけてそうな感じの女子高生が開いたドアの隙間から顔を出してきてニコリと笑顔を見せた。
「いえいえ、では失礼致します」
寝起きの女子高生が見れて男心に少し得した気分を感じたのは言うまでもない。
その後は特に何事もなく、女子高生はチェックアウトしていった。
その後、何十年ホテルで働いても、こんな不思議な女子高生は現れなかったので、ホテル歴数か月で結構なレア体験だったんだなぁと今になって思う。
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