SEIKIN、商品紹介はじめる。


「はい、えー皆さんこんにちは。Seikin TVのSEIKINと申します。」

この言葉と共にサングラス姿の一人の男が突如として現れた。
彼こそが、そう『SEIKIN』なのである。

現在、全人類に歌われている『YouTubeテーマソング』の原曲のみがBGMとしてシンプルに流れており、非常にシュールな空間となっている。

「最近YouTubeで流行っていること、これはですね、、商品紹介であったりとか、えー、時事問題について語ったり、えー、こういうことが非常に流行っております。」

開始5秒、もっと先に説明すべきことがあるのではないだろうか。彼はかの有名なHIKAKINの兄なのである。何故それを言わないのか。
自分が認知されているのが当たり前かのように、堂々とチャンネルの方針を語り出す。それも仕方の無いことなのだろう。


実は、初期に投稿されている『朝はパン  Morning is Bread』により、既に名を馳せていたのである(たぶん)。彼にとっては、やはり朝とパンはイコールで結ばれるのだ。SEIKINが言うのなら間違いはない。

「そこでSEIKIN、商品紹介挑戦してみようかなと思いました。


しかし問題がひとつ…………」




先程の意気込みはどこへやら。元気が無くなったかと思いきや、突然SEIKINの様子がおかしい。

「はい、皆さんこんにちは。今日はこの有名なアイス パルム、こちらをご紹介していこうと思います。えぇ……えー、こちらはですね。アイスクリーム?いや、えぇー違うな。ソフトクリーmあぁ、ソフトクリームな訳はない、んー。という事で、なんだろう、チョコレートアイスバー、とでも言った方がいいのかどうなのかっていうのは…………








お前の話はつまらーーーーん!!!!」



本当につまらない。マジでつまらない。この26秒間返して欲しい。
この台詞は、彼に商品紹介の才能がないことの伏線となっている。「これは大問題」と本人でも自覚があるようだ。誰がなんと言おうと、致命的である。

そもそも、誰もが知っているパルムという商品、動画を出したところで紹介とかそういう次元なのだろうか。

「はい、という事でSEIKINはSEIKINらしく、えーと、商品の紹介をしたいんですけども、それはなんと、えー、新しいスタイルで行こうと。

歌で商品紹介

をしてしまいましょう。」

これが伝説のSEIKIN時代の幕開けである。
確かに言ったのだ。歌で商品紹介、と。
初めこそは継続できていたが、あの誰もが存じているだろうそうめんスライダーの動画であったり、某ウイルス並みに地球上で大流行した巨大ハンバーガータワーの動画であったり、歌で商品紹介をしていない。
実は今回知ったのだが、ニュースも歌で紹介しようとしていた「らしい」。(概要欄より)


この信用がない発言を捨て台詞のように吐いた後、突然その時はやってくる。

やる気の無い親指。見せつけるかのような嫌味な腕時計。そして無言。
左手サムズアップの時間である。

これはSEIKIN界で別れを意味する。言葉など無くても、パッションで伝え合うのがSEIKIN流である。
泣いても笑っても、これが最後だ。

石が投げ込まれたように水面が揺れるエフェクトがかかり、パルムのうた♪を聞くようちゃっかり指示する画面に変わる。
特にこの動画ではパルムのうた♪を試聴できることもなく、静かに1:43の動画の幕が降りた。




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