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【量子力学】位置表示波動関数と運動量表示波動関数の行き来を自由に

位置表示の波動関数はよく使いますが、運動量表示の波動関数も使うと便利になることがあります。本稿ではその二つの表示の間を自由に行き来できるようになることを目標とします。本稿での議論はJJサクライ現代の量子力学§1.7を参考にしています。

簡単のため、一次元の運動を考えます。運動量演算子を無限小平行移動の生成演算子として定義すると

$$
\hat{p}\ket{\alpha} = \displaystyle\int dx' \ket{x'} \left( -i\hbar \dfrac{\partial}{\partial x'}\braket{x' | \alpha} \right)
$$

はすぐに分かります。位置の微小変化を扱うことから位置微分が出てきます。これは

$$
\braket{x' | p | \alpha} = -i\hbar \dfrac{\partial}{\partial x'} \braket{x' | \alpha} 
$$

を意味しており、$${\alpha}$$を位置ケットとすることにより、運動量演算子の位置ケットによる行列表示

$$
\braket{x' | p | x''} = -i\hbar \dfrac{\partial}{\partial x'} \delta (x' - x'')
$$

を得ます。ここにデルタ関数の微分が現れます。これが運動量演算子を位置表示で$${-i\hbar \bm{\nabla}}$$とする所以です。さらに

$$
\braket{x' | p | p'} = -i\hbar \dfrac{\partial}{\partial x'}\braket{x' | p'}
$$

が先ほどの表式から得られます。この微分方程式を解くことにより

$$
\braket{x' | p'} = N \exp \left( \dfrac{ip' x'}{\hbar} \right)
$$

となり、規格化定数を具体的に求めれば

$$
\braket{x' | p'} = \dfrac{1}{\sqrt{2\pi \hbar}} \exp \left( \dfrac{ip' x'}{\hbar} \right)
$$

となります。これが運動量表示から位置表示への変換関数です。この表式を覚えておけば十分です。これを用いれば運動量表示波動関数と位置表示波動関数の関係が

$$
\psi_\alpha(x') = \dfrac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}}\displaystyle\int dp' \exp \left( \dfrac{ip'x'}{\hbar} \right) \phi_\alpha(p')
$$

および

$$
\phi_\alpha(p') = \dfrac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}}\displaystyle\int dx' \exp \left( \dfrac{-ip'x'}{\hbar} \right) \psi_\alpha(x')
$$

となります。二つの波動関数は互いにフーリエ変換で結びついていることが分かります。位置波動関数をフーリエ変換したものが運動量波動関数であると覚えておけばいいでしょう。また、$${\hbar}$$を忘れないようにしましょう。

まとめ

  • 運動量演算子は無限小平行移動の生成演算子である。

  • 運動量演算子の位置ケットによる行列表示はデルタ関数の微分である。

  • 運動量波動関数と位置波動関数は互いにフーリエ変換で移り合う。


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