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シフトチェンジのタイミングが分からないという若者へ~おっさんからの贈る言葉

私は50代、10代からバイクに乗っている。バイクは私の趣味であり、仕事の仲間であり、休日を共に過ごす友人だ。エンジンの形や排気量、気筒数で違う音や振動、風の感触を楽しみながら自由に走ることが好きだ。
だからバイクに乗る事に疑問を抱くなんて考えもせず今まできた。

アクセルを少しずつ開けながらクラッチを離せばスーッと動き出し、回転数やスピードメーターを見なくてもエンジンの音や振動で呼吸を合わせてきたからだ。

しかし最近、私はバイク屋の息子から驚くべき質問をされた。彼は「オートバイのシフトチェンジのタイミングが分からないから教えて欲しい」と言ってきたのだ。私は思わず耳を疑った。シフトチェンジのタイミングが分からないなんてあり得るのだろうか?
どういうことか詳しく聞いてみると彼はこう答えた。「とにかく感覚でシフトチェンジしろと言われても分からないんだ。分からなければスピードメーターや回転数を見てシフトチェンジするタイミングを判断しろとも言われるけど、それだと不自然で楽しくないんだ。だから皆が何を基準にシフトチェンジしてるのか明確な”何か”を教えて欲しいんだ」

私は彼の話を聞いて驚きと同時に少し悲しくなった。彼は最新のバイクに乗っているのにバイクの楽しさを感じていないのだ。彼は、バイクと一体になって走るというバイク乗りにとって一番楽しい事が理解出来ていないのだ。これでは直ぐにバイクを手放してしまうだろうと思った。
それが良いのか悪いのかは抜きにして、バイクに乗りたい!というキラキラした気持ちを、バイク本来の楽しさを知る前に諦めてしまうのはもったいないと思った。

私は、彼にこう言った。「君はバイクに乗るとき、バイクをただの機械だと思っていないだろうか?私や君のお父さんはバイクをただの機械だと思っていないんだ。バイクが話しかけてくる言葉を注意深く聞くように音や振動に耳を傾けているか?バイクは君に話しかけているんだ。もし君がバイクの発する言葉を、話しかける声を聞こうとすれば、バイクは君にいつシフトチェンジすればいいか教えてくれる。君はバイクの声を聞いて、バイクの気持ちを感じて、バイクと対話しながらシフトチェンジするんだ。それが、バイクに乗る楽しさなんだ。それが、バイクに乗るコツなんだ」

彼は、私の言葉に首をかしげた。彼は、私の言っていることが分からない様子だった。多分、私の言っていることが信じられなかったし、古臭くて、非科学的だと思ったのだろう。

私は続けてこう言った。「もちろんバイクは機械だ。その性能や機能にこだわるのも理にかなっている。でもバイクは・・・、その性能や機能を操るのは人間で、上手に使いこなすか否かは人間にかかっているんだ。バイクの発する言葉を聞くという事は、機械の様子を注意深く観察する事でもある。どんな時に気持ちよさそうな音や振動を出しているか、どんな時に悲鳴をあげているか、バイクが語り掛ける声を聞いていれば自然と分かって来るはずだ。君はバイクをただの道具として使っているのではないか?自分の言う事を聞く奴隷の様に思っているのではないか?機械は君の気持ちを汲んでくれはしない。君がバイクの気持ちを分かってあげなきゃいけないんだ。」

彼は、私の言葉に黙って聞いていた。多分、私の言っていることがどういう事なのか考え込んでいたのだろう。

今は未だ分からないのかも知れない。
きっとバイクの性能が向上したせいでバイクが人間に合わせてくれる事の方が多くなったのかも知れない。それでも基本的な事は昔から変わらないはずだ。

バイクと一体になって走るとは、そういう事だ。

もしかしたら彼の様な感覚を持った若者は多いのかも知れない。
でも、同じバイク乗りとして、楽しさを分かち合う友として、いつか同じ目線で走れるように、感覚を共有できればそんな日は近いかもしれない。

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