「光る君へ」のための平安準備情報⑪

新たなTwitterが開設され、少しずつ期待が高まって参りました!
明日、新たなキャストが発表されるようです。
明日のキャスト、「定子、彰子」は「光る君へ」のなかでも核となる物語を織りなす人物だと思われるので、大変楽しみです。
そして、てっきり一条天皇も発表になるのだと思い込んでいたら、
明日は一条天皇の発表はないのですね…。
満を持して、ということなのでしょうか。楽しみです。
そのようなキャスト発表のなかで、ドラマの雰囲気を予測できるのでは?という人物がいるので、そのことについて少し書いてみたいと思います。

花山天皇は誰なのか…

今回のキャストで個人的に興味があるのが花山天皇です。
花山天皇は、『大鏡』に描かれる「花山院の出家」で有名です。
このエピソードは教科書に採録されている場合もあるので、古典の授業で習ったよ、という人もいるかもしれません。

花山院の出家

かいつまんで内容をまとめると以下になります。

17才で帝位についた花山天皇は、19才のときに突如退位します。
父兼家(大河ドラマでは段田さん)の密命を帯びた藤原道兼(大河ドラマでは玉置玲央さん)が、自分もともに出家するから、と密かに花山天皇を宮中から抜け出させます。
月明かりのなか、「あまりに明るくてどうしようか」と逡巡する花山天皇(もちろんこの逡巡は退位出家することへの逡巡でもあります)を、「もはや引き返すことはできません。なぜなら神璽と宝剣は東宮のところにお渡りになってしまったので」と道兼はせかします。

神璽宝剣…
いわゆる三種の神器のうちの2つであり、これは帝が持たなければならないものです。
兼家たちは、花山天皇が完全に退位する前に皇太子に渡してしまったんですね。悪い、悪すぎます…
なので今更花山天皇に、退位やめるわ、、と言われたら困っちゃうわけです。

そんななか、月が少し雲に隠れます。
それを花山天皇は、出家をするための後押しだと考え、歩き出しますが、
やっぱり、、と引き返そうとします。
なぜかというと、花山天皇が熱愛し、妊娠中に亡くなってしまった妻、藤原忯子(ふじわらのしし。「光る君へ」は訓読みを採用しているので、よしこ、などでしょうか)のお手紙を持ってくるのを忘れてしまったからです。
この辺も、理由を持ち出しては退位と出家を逡巡する花山天皇の気持ちが表れます。それに対しても道兼は、「そら泣き」(うそ泣き)しながら、「出家するのにそんな未練を抱えてどうする!」と説得します。

そして花山寺(かさんじ)に到着し、出家してしまってから、道兼は、
「あ、ちょっと父にちゃんと挨拶してから絶対来ます」と言って、逃げ出します。
ひとり退位と出家をさせられ、寺に残されて、「朕(われ)をば謀るなりけり」と花山天皇は泣くのでした…。

ひどい。ひどい話です。

なぜ花山天皇は出家に追い込まれたのか

どうしてこんな陰謀をはかったか…。
それは、花山天皇は兼家一派にとって血筋の遠い帝だったからです。
それに対して神器を勝手に渡した相手である皇太子、後の一条天皇は、兼家の娘、詮子(吉田羊さん)の息子になります。完全に一族から出る帝です。
どちらが自分の意のままになるかといったら、、、
もちろん一条天皇に決まっています。
そして、このとき、一条天皇は7才でした。
7才のこどもに政治が行えるわけもなく、一条天皇が帝位につくということは、すなわち祖父である兼家がすべての実権をにぎれることと同義だったのでした。

花山天皇は暗愚なのか

『大鏡』に示されるこのエピソードが、一見、言葉を選ばずに言えば、
少しバカっぽいので、花山天皇は暗愚、というイメージもあります。
また、好色な人であった一面もあったようです。
それを裏付けるように、即位に使用する神聖な高御座(たかみくら*)に女性を引き込んで…というエピソードが書かれたりもしています。
母と娘どっちも妊娠させちゃった…など。

歴史を記述するということ

ただ、こうしたエピソードが本当に真実そうだったのか、というとそれもまた疑ってかからなくてはなりません。
花山天皇は、言うならば歴史的には敗者です。
藤原北家が歴史の主流であり、彼らの歴史が「正統」であるならば、
それに仇なすもの、あるいは、都合の悪いもの(だまくらかして出家させたなんて都合の悪いの最たるもの)については、「それ相応の理由があったから,暗愚だったから、好色だったから」と書く、書かれている可能性がある、ということは、歴史を記述するうえで十分あり得ることでしょう。
また、花山天皇は2人の貴族を重用しますが、それはいずれも兼家一派とは異なる人々でした。
17才にして帝位についた帝が、自身の信用する若い貴族2人(ちなみにこのふたりは花山を追って出家します…涙。もう政治的には力を得られないことを絶望した、ということもあるでしょうが、やはり花山との強い絆も感じます)を味方に、めきめきと政治の才覚を見せ始めたら…。
兼家にとっては恐怖だったでしょう。
その若さは、もちろん、愛する妃を失ったことを深く悲しむ面にもつながります。
その純粋な思いを政治家兼家に利用されたのだとしたら…?

花山天皇のキャスティング

以上のことから、キャスティングによっては、花山天皇を「暗愚、好色」と描くのか、「若く、才あふれる」と描くのかが見えてくるのではないかと思います。
前者を想定させるキャスティングの場合は、イメージ通り、王道の展開でおもしろおかしく描いていく雰囲気、後者を想定させるキャスティングの場合は、政治にまつわる血みどろの闘争、悲劇、そうしたものを真正面から描く雰囲気、というドラマ全体のテイストの推測にもつながるかなと思います。
個人的には大変な美男子の方に後者のイメージで…と思いますが、どうなるでしょうか。

ちなみに満を持しての一条天皇ですが、明日発表される定子は一条天皇の3才上、彰子は8才下です。そのあたりからも少し特定?できる?かもしれません。

いずれにせよ、とにかく…
楽しみすぎます!

*高御座は現在も即位の際に使用されます。もちろん当時のものではありませんが、現在なお使われるところに、その神聖さが推測できます。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/japans-emperor6/articles/articles_ceremony_09.html


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