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聴覚情報処理障害(APD)とノイズキャンセリング

いつかの飲み会の日、騒がしい居酒屋で相手の話が入ってこない。それはお酒や話の巧拙が要因ではない。単純に聴覚の問題だと後に分かった。思い返せば、昔バイトをしていた際も電話対応が苦手だったものだ。店内のbgmや騒音の中、音質の悪い子機で声の音だけを抽出することはとても負荷のかかる行為だ。相手のことを知っているならば声質や話し方などでまだ楽かもしれない。対面なら表情や口の動きで何を話しているのか自分の中で補完することもできる。

聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder=APDと略されることが多い)とは、聴力は正常であるにも関わらず、日常生活のいろいろな場面で聞き取りにくさ(聞いた言葉の内容が理解しづらい状態)が生ずるというものです。

具体的には、音を収集・感知する箇所(外耳、中耳、内耳、末梢の聴神経)の機能には異常が無く、聴覚情報を処理する「脳」の中枢神経に何らかの問題がある状態です。音は聞こえているのに、「言葉の処理」ができない状態なのです。その障害をもつ潜在的な患者数は、推定240万人にものぼると言われており、日本人の約2%が該当します。
https://www.signia.net/ja-jp/blog/global/hearing-health-auditory-processing-hearing-loss/
APDの症状
・聞き返しや聞き間違いが多い
・長い話を理解するのが難しい
・雑音やバックグラウンドミュージックなど、環境が悪い状況下での聞き取りが難しい
・口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい
・視覚情報に比べて、聴覚情報の聴取や理解が困難である

等が挙げられます。難聴と似た症状に思われますが、「聴力検査をしても異常がない」というのが大きな特徴です。適切な検査を行わないと、他のタイプの難聴と区別するのが難しい場合もあります。
https://www.signia.net/ja-jp/blog/global/hearing-health-auditory-processing-hearing-loss/

絵を描いていると圧倒的に視覚情報が優位になるが、オールオーバーのように画面のあらゆる場所を均一に扱い、フラットに見ていくことがAPDにも似た性質を感じる。生物、顔、ものは脳の認知レベルで処理が異なるが、これを踏まえた上でそれらを等しく構成していくことは表象のレベルを上げ、コミュニケーションを複雑化していく鍵だ。特定できないもどかしさや総体的な情報処理は普通とは異なる世界の見方を教えてくれる。そして芸術性と社会性はトレードオフであることを忘れてはならない。生きにくさが創作を加速させる。

先日、AirPodsPro2が発売され初代のバッテリー劣化もあって買い替えることになった。ノイズキャンセリングは性能が2倍であると謳っているが、街中に出かけるときはこれが欠かせない。電車や車道沿い、人混みの中、広告やbgmなどの不要な情報をカットしてくれる。加えて聴覚過敏もあるので音に溢れている世界と距離がおけることは大変救われる。

人工物が発する音の大きさに人間の聴覚は対応しきれていない。私は日常を30dB以下で過ごすことを目指している。昼間に出かけると人並み以上に疲弊し、夜中の散歩が心地よいのはこのためだ。聴覚障害のリスクを常に背負っていることを現代人はよく理解している。

今も電車内での走行音に包まれ、2人の泣き止まない赤子の近くで執筆しているが、ストレスが違う。

https://www.denon.jp/ja-jp/blog/4027/index.html
https://www.denon.jp/ja-jp/blog/4027/index.html

周囲の意味のない雑音を押さえて、必要な音だけを抽出するためにこのイヤホンは私にとっては紛れもない補聴器である。毎日、音楽を聴いていない時もつけているため1時間半でもバッテリー容量が増えることは大きい。ノイズキャンセリングの十八番といえばBOSS一択だが、長時間の使用を可能にする軽い装着感と、横になったりと姿勢や持ち運びも容易なシンプルで最小のデザインは今のところベストバイと言える。

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