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ただそれだけが嬉しくて

母は喋ることも忘れつつあるのか、とみに無口になった。

栄養士さんとの面談。三ヶ月更新、状況報告あり。食べる量が減っていますとのこと。

前は80%は食べていたのが、60%、体重も急に5キロ落ちた。

なのに~クダンの医師め!母に間食させるなと?

BMIがどうだってのさ。そもそも、母の身長からして計算ミスでしょ。

母は165センチあったのだ。多少、縮んだにせよ・・背中の湾曲で145センチって計測、

ありえないでしょうが!

巻尺で背中に沿って計ってみなさいな。まだユウに160センチはある筈。

太るな、甘いもの食べるな。・・・痩せたと栄養士さんは憂いて下さってるわよ。

・・・聞く耳持たぬぼんくら医師には言わぬけど・・あぁ、怒り再燃す。やめっ!

置いといて・・

本日、突然、母がわたしをじっと見つめ

点滴の痕の痛々しい細い腕伸ばし

わたしの髪に触った!

そればかりか

「艶々してキレイね」と・・発してくれた!

久し振りだ。母がそのように口にしてくれるのは。

大抵・・無言か「はい!」だけだったのに。

仮に「老けたわね」でもいいのだ。

「髪が跳ねてるよ、変!」でもいいのだ。

母がわたしを見た、心を表現したこと、

ただそれだけが、至上の喜びだと・・・

*覚書

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