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Try sleeping

わたしたちは
幾夜も語った


時に熱く戦士のように
時に肌も心も合わせ、傷舐めあう獣のように

愛し戦い同じ指針と意志を持ちて


時は経ち
いつのまにか 擦り切れうらぶれ
戦士であったものは弱り果て


それを撫でるわたしの指は痩せて枯れ

それより更に絶望的なことは

戦士が信義の剣を捨て去ったときから
生き方を反転させたときから

彼を撫でるわたしの指先の熱は消え
見つめる視線に笑みに
虚偽が在るということであった

共振する魂のベクトルが
消え去ったとき

同胞を
最愛を失った

遺失物となりし心は
ひとり 荒地を彷徨い
決して戻らぬ時を
想うのだ

消えた戦士を恋ふるのだ

私は黙す

発することが功を奏さぬどころか
キリキリとわたしと男とを蝕み


かつて在った確かな時をも
変質させ打ち壊すであろうことを

知るからだ

変わった男を赦さぬわたしの情愛の薄さ


その男以上に
姑息なエゴイズム、自己防御!

迎合という名の寛容ー

断ち切れ
葬り去れ
言葉、声、表情、場面、記憶の欠片、断片を未練がましく
拾い集めるな

一人から始まったのだ
また最初に戻るだけではないか

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