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桃、一枝

父が倒れる前のこの季節、母を連れ梅や桃、そして桜を観て愉しんだ。

「土産はイラン、梅の一枝でも買って来い。」

留守番を選ぶ父に、そう、母は常に思いっきり沢山買って帰るのだ。

半分以上は彼女自身が食べる為にw

花を愛でると共に、花とのショット、写真をねだる母を幾枚も写し、

花の色に負けじと、紅ひき服装に気を配り

唇はすこし口角上げて、決して、歯は見せずに微笑む人

まだ3年前なのだ、と思うも、母にとってのこの三年は、心身を弱らせるに十分だったのだ。

部屋に梅の香りを、と想い探すも見付からず、桃の花を選び持参する。

「梅ね、綺麗!」と、目を輝かせ、枝を握り花びら持ち散らした母

良かった、一瞬でも貴女が喜んた。




桃一枝



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