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花田菜々子「モヤ対談」

先月、東京・高円寺にある蟹ブックス という本屋さんで開かれた、店主の花田菜々子さんの新著、「モヤ対談」出版記念トークイベントに行ってきました。

*このリンクから取り上げられた方々がわかります*


書店員歴20年以上という花田さんが、これは読んでよかったという新刊を選び、その著者に会いに行ってインタビューをするという小学館の月刊誌STORY BOXでの連載をまとめたものです。

聞き手は、校正者の牟田都子さん 。
一昨年、牟田さんがご自身初の書籍「文にあたる」を出版された時には、花田さんが聞き手でイベントがあったそう。立場を交換してのおふたりのトークはとても自然に、そして和やかに始まりました。

とにかくいい本を知ってもらいたい、知ってもらえることで自分に価値が生まれるとおっしゃる花田さんがインタビュアーですから、一方通行のインタビューというより双方向で新たな気づきが生まれる「対談」になっていて、花田さんの熱量が伝わってきます。

花田さんご自身が読んで心に引っかかったモヤモヤについてを大切に対話が行われているので、モヤ対談とは、まさに!のタイトルだと感じました。

「モヤ対談」では、全部で20冊が紹介されていて、特にこちらの4冊が掲載されていたことが、購入のきっかけになりました。


各章の扉には、書店のポップのようなサブタイトルが載っていて、これがまたいいのです。

ブレイディみかこ「エンパシーの鍛え方」日本人は他者の靴を履いて自分の靴を見失ってるのかもしれない

荒井裕樹「マイノリティと人権」立場の弱い人たちほど、やりたいことに対して説明を求められるんです

東畑開人「心を守るには」臆面もなくウザい奴のほうがヘルプを得やすいんです

永井玲衣「手のひらサイズの哲學」私たちは正しいこと以外言っちゃいけないと思ってるし、ずっと傷ついている」


この扉の言葉は、まだ読んでない人のためのその本への招待状のようでもあり、すでに読んでいる私には、さあここから始めましょうか、という読書会スタートの言葉のようでもあり、さすがプロ書店員だなあと感じました。

花田さんは自分の中の問題(モヤモヤ)とその本のテーマを掛け合わせて、インタビューの前に2000字ほどの質問を事前に著者に渡していたそうです。
私が今回このイベントに来て、著者である花田さん(と牟田さん)を前にドキドキしたように、やはり花田さんもインタビュー前はドキドキで、「こんなにバカな自分がインタビューするなんて大丈夫かな」と思いながら、できる限りの準備を質問に込めて、毎回神に会いに行くような心持ちで挑んだとか。その熱意と誠意は著者の方々にも伝わっていたのではないでしょうか。だから"神たち"もそれに応えてくれて、こんな熱い対談が毎月繰り広げられたのでしょうね。

もうひとつ、対談中はちょっとしつこいくらいに質問するんだとおっしゃっていたのが印象的でした。子どもがなんでなんでといちいち聞くことがあるけれど、それは親ならきっと何か答えてくれると信じているから。同じように"私の中にいる子ども“が質問をさせるけれど、それはわかりやすくまとまった答えを求めているのではなく、解決はしないけれど考え続けるのが結局近道だからという粘り強さ。そんなに読書家でもない私が読んだ本がこんなに取り上げられているということは、花田さんと感じるモヤモヤが近いということなのかな。私もその粘り強さを忘れたくないと思います。

すでに読んだ本はまた読み直したくなる(ブレイディさんとの対談、もう最高でした)、そして読んでいない本は読みたくなる(岸政彦さんとか西加奈子さんとか)、読書の奥深さと楽しみをたっぷり伝えてくれるこの1冊。花田さんから、「また読んで考えてみようね」と鍵を渡された気持ちで蟹ブックスをあとにしました。

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