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無職日記-32

12年前、まだピチピチの天パ田舎ギャルだった僕は、大学進学とともに実家を離れ一人暮らしを始めた。

仕送りのうち自由に使えるお金は月6万円。しかしお金の使い方が分からない。高校まで服を一人で買ったこともなかったのだ!…というのも6割は兄弟親戚からのお古だったし、お小遣いは祖父から不定期にもらうだけで大体は親や兄弟との買い物で都度買ってもらっていたのである。

お金の使い方が分からない僕は、傍から見れば単なる倹約学生と化していた。朝食は決まって食パン1枚にハムorベーコン一枚、キャベツの千切りにマヨをかけた即席折り畳みサンドイッチとインスタントコーヒー。昼食は学食のかけうどん約150円と小鉢一皿。夕食はご飯一膳と豚肉50gを使った野菜炒めなどなど。それで夏までに10キロ以上痩せた。
ちなみにサークルの新歓時期は先輩がアフターで奢ってくれるものなのだが、外食=悪という謎思考のせいでほとんど帰宅して自炊していた。もったいないことをした。倹約しているのにお金がたまらないバカ正直者の典型じゃないですか やだ~

初めて申し込んだ単発バイトは、企業のDMの封筒を印刷ラインから取って夜通し箱詰めする作業だった。深夜なので割が良く、一晩で1万円もらった。めちゃくちゃ眠たかったが、翌日仮眠のあとに繁華街に繰り出し、ユニクロで9千円くらいのジーパンを恐る恐る買ったのを覚えている。お金を使うことが怖かった。

そういえば思い出したので書くけど、授業の間にお菓子食べたいなと、たまに生協のショップで豆大福を買ってた時期があった。でも節約しなきゃと、それを買わず、毎日100円を貯金箱に入れていた…しかもその貯金箱がある程度たまったら小銭を持って銀行に行き、自分の口座に戻していたのである。意味ないじゃん!

脱線ついでにもう一つ。本格的に飲食のバイトを始めて、忙しい時期は月5,6万くらい稼げたのだけど、それを使わずにいたら、友達から「何も買わないのにバイトする意味なくね?」と叱られて、ようやくブルーレイレコーダーを買った。それくらい、お金の扱い方がわからなかった。


あれから12年。
無職の僕はまた、日々のちょっとした無駄遣いも気にする縮こまった生活をしている。でも、あの頃よりは少し、お金の使い方がわかったと思う。いろんな無駄遣いをした結果、安くて質の悪いものよりも高くて気に入るものを買った方がトータルでは有意義なこととか、旅先ではケチケチしないとか、そういうものはある程度は考えられるようになった。

なかでも、ここ数年は投資(自己投資)の意味での買い物が増えてきているように思っている。

今週は某画材屋のオンラインショップで、水彩画の画材を8,000円分まとめ買いした。主に水彩紙が高かったのだけど、絵の具も数百円するのでいくつか買うと高い。絵の具というのは実際に使ってみないと使えるかどうか、自分の作風に合うかどうかなど分からないので、失敗も起こるのだけど(実際に今回も失敗した色がある)、それは最初からは分からない。新色はモチベーションを高めてくれるし、自分の絵の幅を広げてくれるかもしれない。加えて、「試す」という行為それ自体の価値もある。ある種の投資的な意味合いを見ることは可能だ。

あとは書籍。これも自己投資だ。読書は基本的に好きだし、本を買うのも好きなので、本屋に行くとつい買ってしまう。積読も多い。図書館がそろそろ開くので行ってみようと思っている。こないだ無職仲間とオンライン飲み会をしているときに、メルカリが図書館(あるいはレンタル屋)代わりになるよと教えてもらった。買って読み終わったら売るらしい。は~そんな時代になっているのか、と思い数冊メルカリで買ったけど、まだ売っていないので全然レンタルではない(えいきゅうにかりておくだけだぞby G)


投資、つまり将来役に立つかもしれないものに対してならあまりお金を気にせず買い物をする、という思考を最近はしていると前述したわけだけど、逆に、明らかな無駄遣いというものをほとんどしなくなって久しい。100円ショップであれもこれも買うとか、クレーンゲームで1000円溶かすとか、そういう使い方だ。これはこれで自分らしくていいけど、なんだか自分の生き方の狭さに直結しているようでなんとも苦々しく感じたりもする。つまりは「損したくない」のだろう。

まあつまりは、人間そんなに根本は変わらないもので、今もお金を使うのが怖いままなのかもしれない。逆に言えば、生活に困らない程度のお金さえあれば、それ以上のお金はきっと不要な人間なんだろう。

とは言えお金が無いと生きられないので、とりあえず、最低限生活に困らない程度の稼ぎをちゃんと作らなきゃな。

とりあえず国民年金は全額免除の申請をすることにした。10年以内に大金持ちになってたっぷり追納してやるんだから!

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