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親切な不審者

tatacuuc
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大好きな人に私の羊水でクロールしてほしい。
燃え盛る庭であばらを焼いて食べてほしい。

お前はCDレンズクリーナーの音でも聞いてろ
フランスの豚 膣セレブ

人の頭蓋にもち米を詰めたものが駅前で売っていて、しば犬じみた少年が充血した目でそれを見ていた。
私は双極性暴れ鬼殺しを思い出し、どうしても、なにも見ていないふりをして、帰路に着く。
もう夏だ。
人差し指の腹を包丁で切った際、流れ出てくる水色やティンホイッスルの音色がどうしても愛おしく、恋人の寝顔にそれらを垂らす。

老婆の頭上に 赤味がかった月の光
夕方、野球の帰り? 並木道 少年たちが走って 街灯から街灯へ
滴った汗の匂い 20年前に忘れた
透き通った血流 20年前に忘れた
あー あー あーあーあー
ラシーンがスモールつけて 私の前を横切る
清潔な石畳を 誰かの父親は夕飯時に帰路に着く
ここに敵はいない 優しいオレンジの光の元、
人々の鼓動はゆっくりで、まるで波のない海
私は公園のベンチでタバコをくゆらせ
他人の形成する安らぎを横目で見ていた
被害者も加害者もいない食卓
私の横に座る安心感の化け物
また自転車が横切った 学校帰りのお嬢さん
田んぼに差し込む陽の赤 その赤は誰をも受け入れる そう見えた

煙しかない部屋の中央に彼女を置き、冷凍のサメでその体を撫でる。
双極性暴れ鬼殺しを患った我々には、月を見て物思いに耽る情緒や、流れる血液をキャンディーの缶に入れ、そのグラデーションを財産とする行為が許されない。
水色のマニキュアが凝固し、それを見つめるどうしようもない顔。
どうしてもと首を絞め合うお互いの唇から溢れる無数の胎児。
私の臓器を分け与えたのはこうなる為だったのか?
昨日死んだこの部屋の主人から虹色の液体。
その艶やかさだけが私共を草葉の様に狂わせた。
嬉しかった。
夏の夕暮れ。
私だけの8月の。2年後の26月の。

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