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「日本の食と農が危ない!」集会

 戦争あかん!ロックアクションが主催する「日本の食と農が危ない!」集会が11月7日、PLP会館の大会議室で行われたので参加してきた。ロックアクション共同代表の山下けいき茨木市会議員の主催者あいさつの後、山田正彦さんの講演「種子法廃止と種苗法改定で私たちの食料と食の安全はどうなるのか」が始まった。
 種子法は私たちが安全なものを持続的に食べられるよう、コメ、麦、大豆の伝統的な在来種は国が管理し、守って来たものだ。ところが種子法廃止で1代限りのF1品種、これをつくりなさいということになった。イネでいえば具体的には三井化学の「みつひかり」や日本モンサントの「とねのめぐみ」だ。「みつひかり」は吉野家で使われていて、種子の値段はコシヒカリの10倍である。在来種より1.2~4倍も収穫量が多いとされ、栽培契約を結ぶ農家も多いが、実際に収穫量が多いのは最初の年だけ、数年で土地が耐えられないのでやめるところも多い。「とねのめぐみ」の栽培契約書をみると、メーカーの指示に従わなければ賠償金を払うことになっている。住友化学の契約書では、使用する農薬や化学肥料も指定され、セットで販売されていることが分かる。
 種子法廃止と同時に通過した「農業競争力強化支援法」8条3項には、「銘柄が多いから集約する」と書かれている。イネは1000種類もの品種、銘柄があるが、それを4~5つの品種に集約するそうだ。同法の8条4項には、これまで日本が蓄積してきたコメ等の原種、原原種、優良品種の知見をすべて民間に提供することになっており、民間が種子の育種知見を応用して新品種の登録・応用特許を申請すれば、日本の農家はロイヤリティーを支払わなければ栽培できなくなる。しかし種子法に代わる各道県の条例が28制定されている。法令に反しない限り地方自治体はどのような条例もつくることがでる。また野党が提出した種子法廃止、農業競争力強化支援法8条4項の削除については自民党も審議に応じている。この状況は地方から変えることができる。
 種苗法の改定について、これまで登録品種でもコメ、麦、大豆、イチゴ、サトウキビ、イモ類、果樹類など次作以降自由に自家繁殖(採種)が認められてきた。しかし改定で登録品種はお金を払って許諾を得るか、すべて苗を購入しないといけなくなる。多くの農家は自分がつくっているのが登録品種かどうか分からない。知らないで違反すると刑罰で、懲役10年以下もしくは一千万円以下(法人は3億円以下)の罰金になる。毎年種苗を購入するとなれば、農家の負担も大きくなる。
 種苗法改定はシャインマスカットやあまおうなどの育種知見が海外に流出するのを防ぐためとされているが、改定前の種苗法でも海外への州出は消費以外の目的で海外への輸出を禁止する旨明記されている。いちごの流出は農水省が登録をしなかった(それほどすごい品種だと思っていなかったらしい)過ちによるものだ。「登録品種は一般品種の10%にしかすぎないので農家には影響がない」と言っているが、農水省のアンケート調査でも52.5%の農家が登録品種の自家採種をしており、各県の特産品種のほとんどが登録品種である。現在すでに登録品種は8351種あって、年間800種もの新品種の登録がなされているが、改定種苗法の下でそれがさらに加速している。伝統的な固定種を有機栽培している農家も安心できない。ナメコ茸事件というのがあって、栽培農家が企業から育成権者の権利を侵害していると訴えられたが、裁判では現物を試験栽培して比較しなければ違いが分からないとして、企業側が敗訴・確定した。ところが今回の種苗法改定では現物栽培を必要とせず、特徴を記載した特性表だけで企業側は裁判に勝てる、農水大臣が判断できるようになっている。また一般品種から新品種が登録されることはないと農水省は述べているが、伝統的な品種から優良なものを選別し固定したものを品種登録しているのが現状である。
 米国やカナダでも主要穀物については、農家は公共品種、自家採種が主流であり、オーストラリアの小麦も95%は自家採種、EUも事実上、自家増殖は自由である。少なくとも種子は公共のものであり、自家採種の種苗を保存、利用、交換、販売する権利は、日本も批准した「食料農業植物遺伝資源権利条約」で守られる農民の権利である。ところが日本はTPP協定を批准して以後、これに沿って国内法の整備に取りかかっている。2016年日本がTPP協定に署名する時の日米交換文書には「日本政府は投資家の要望を聞いて、各省庁に検討させ必要なものは規制改革会議に付託し、同規制改革会議の提言に従う」とある。規制改革会議は、オリックスやパソナ・竹中平蔵が仕切っている。
 こうした改定種苗法に対し、私たちはなにが出来るか?県が開発した登録品種について、対価も請求しないで自家増殖が続けられる条例の制定(長野県)、民間企業から各道県が開発した育種知見の提供を求められた場合、条例を制定して審議会を設置し、アセス調査をして意見をまとめ、県議会の5分の4の承認がなければ提供できないようにする、伝統的な多様な品種を発掘調査して保存・管理し農家に無償で貸し出しできる、広島県のジーンバンク制度を条例で儲ける、今治市の食と農のまちづくり条例、北海道の遺伝子組換農産物に関する条例など、遺伝子組み換えやゲノム編集の栽培について厳しい制限を設ける(今治市の条例には、違反者には半年以下の懲役、50万円以下の罰金があるそうだ)などの方法があるとのことであった。
つづいて話は遺伝子組み換えや農薬について、いずれ日本でも遺伝子組み換えのコメ・麦・大豆を作付けするようになる。今話題の「ゲノム編集」も遺伝子組み換えの延長上の技術であり、人の命、健康に深刻な危害をもたらすものだ。EUなど各国で遺伝子組み換えと同じ規制が必要とされている。一方、日本は遺伝子組み換え農産物の承認大国になっており、特にTPP批准後急速に拡大している。日本の粉ミルクには遺伝子組み換え原材料が多く含まれており「明治」のものが一番多い。
 グリホサートを主成分とする除草剤、ラウンドアップは49か国で使用禁止にされているが、日本では野放しだ。ラウンドアップにはガン発症リスクがある。モンサントはラウンドアップでガンになるという機密資料を隠していた。だが日本はグリホサートの残留許容量を大幅に緩和し、中国の150倍と世界最大である。日本で流通している主成分がグリホサートの除草剤は700種類もある。またアメリカの小麦は遺伝子組み換えではないが、収穫前に枯らすためにラウンドアップを散布しており、小麦の芯まで浸透している。だから大手3社の小麦粉からグリホサートが検出されている。国会議員にも協力してもらって毛髪を検査したら、7割の方からグリホサートが検出された。
 ロサンゼルスでは一般のスーパーでNon GMO、オーガニックの食品が溢れている。ブラジルのスーパーも半分はオーガニックだ。韓国のスーパーもオーガニックのコーナーが広く、Non GMO、アニマルウェルフェアの食品が並んでいる。ほとんどの小中高の給食が無償かつ、有機栽培の食材である。有機栽培は日本の20倍で、学校給食に出荷されている。訪問した学校は500人の生徒のうち、アレルギーがあるのは7人だけ、日本だったら40人はいるだろう。世界の流れは有機・自然栽培及び非遺伝子組み換え農産物が主流である。ロシアや中国でも、遺伝子組み換え農産物の栽培や輸入が禁止されている。
 日本の農業は過保護だといわれているが、農業所得に占める補助金の割合は4割弱と少ない。ヨーロッパ型の農業は収入の8割を国の助成金で賄っている。日本の農家でコメ60㎏の生産コストは1万5千円であるが、米価は下落して8千円と、1万円を切った。農家がコメ作りを続けられない深刻な状況だが、政府はなんら手を打っていない。米国ではコメ60㎏の生産コストは1万2千円、これを補償して、さらに収入保険で農家収入の8割を補填している。アメリカでは市場価格が生産価格を割ったら、必ず補填する、食料生産の持続性があると説明された。またオーガニックを普及させるためには、作物をこれまでより2割高く買う、4500億円で可能だ。そのカネは市町村が出す、難しくはない、交付金でできるということであった。
 最後に全日農京都府総連合会副会長の本田克巳さんが、京都ではまだ条例をつくれていないが、これから頑張って取り組むという話をされて、集会は終了した。

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