見出し画像

ゆる科学部活動記録「チ。 -地球の大きさについて- 」番外編

 こんにちは。唐突ですが、私、現在「ゆる科学部」という集まりに所属しております。
 「ゆる科学部」は、「ゆる言語学ラジオ」の有料サポーターが中心となって集まったサイエンス好きの集団であり、「ゆるく楽しく科学を学んで遊ぶ」をモットーに活動をしています。
 この「ゆる科学部」で、「ゆる言語学ラジオアドベントカレンダー」という企画に参加することになり、「各地の太陽の方位や高度を調べて地球の大きさを求めよう」という方針の企画記事「チ。-地球の大きさについて- 」を書きました。

 ここでは、この記事の中で書き切れずにまろび出てしまったいくつかの細かい話について記載したいと思います。この先を読む前に、まずは上述の記事をお読みいいただければと思います。


番外編① 太陽方位の差を使った地球周長の算出方法について

 今回の実験では、「ゆる科学部」の部員がアクセス可能な場所でおのおの正午における太陽の方位と高さ、それから南中時刻を測定しています。
 これはもうある程度想定内ではあったのですが、一人が標準時子午線のある明石で測定したことを除けば、他は全員首都圏での測定となりました。

 古代ギリシャのエラトステネスは、アレキサンドリアとエジプトのシエネという、南北に900kmも離れている場所での夏至の日の太陽高度の差を元に地球の全周長を求めましたが、明石と都心では南北の距離はせいぜい100 km、首都圏内のメンバーの測定地点間については10 kmもない、という状況でした。

 このため、エラトステネスに習って太陽の高度から南北の子午線の長さを求めるのではなく、明石と測定地点の太陽の方位の差から東西方向の周長を求める方針としました。

同緯度の周長を求める


 図は、今回周長の算出に使用した各パラメタを図示したものになります。
距離Aは、具体的には明石-首都圏間の距離になりますので、およそ390km~460kmです。

明石-東京間の距離

測定地点①の太陽の方位 $${\theta_2}$$ は首都圏のメンバーが測定した正午の太陽の方位、測定地点②の太陽の方位$${\theta_1}$$は明石のメンバーが測定した正午の太陽の方位になります。
これらのパラメタを式に起こすと、

$$
360 : (\theta_2 - \theta_1) = L_1 : A \\
L_1 \times (\theta_2 - \theta_1) = 360 \times A \\
L_1 = \cfrac{360}{(\theta_2 - \theta_1) }\times A
$$

となります。

番外編② 地球赤道面の周長を求める方法について

 元記事にも記載しましたが、番外編①の方法では、本当の意味で地球の大きさを測ったことにはなりません。
 下図を参照してみてください。

赤道面の円周を求める

経度方向の距離と正午における太陽方位の差から求めたのが$${L_1}$$。
$${L_1}$$から地球の赤道面の円周$${L}$$を求めるためには

測定地点の緯度$${\theta}$$で地球を輪切りにした球欠の底面における半径  $${r = \cfrac{L_1}{2\pi }}$$
地球の半径 $${R = \cfrac{r}{\cos\theta }}$$ 
赤道面の円周 $${L = 2 \pi R}$$
よって、

$$
L = 2\pi \times \cfrac{ \cfrac{L_1}{2\pi}}{ \cos\theta} \\
L = \cfrac{L_1 }{\cos\theta}
$$

となります。

番外編③ 理論値による計算結果について

 元記事の通り、結論としては測定精度と企画そのものの無計画さが原因となって、あまり納得のいく地球の大きさを求めることが出来ませんでした。
では、周到な計画と高精度での測定が出来れば本当に上記①、②の計算で地球の大きさを求めることが出来たのでしょうか?

 ここで、以下のサイトをご紹介します。

 我々が測定したような、ある地点のある日における太陽高度と方位の予測値を出力してくれるサイトと、2点間の距離を求めるサイトです。これらのサイトで調べた、$${ \theta_1 }$$、$${ \theta_2 }$$、距離A、それから、googlemapで割り出した、測定地点②の北緯$${ \theta }$$ を使用して、番外編①、番外編②の式で計算したのが↓の表になります。

理論値の計算結果

 と言うわけで、地球の赤道面の周長が39,198kmという結果が出ました。地球の赤道周長は40,075 kmと言うことなので、誤差2%程度で正確な大きさが求められたことになります。厳密には、地球は南北方向に潰れた楕円であることを考慮に入れていないこと等で若干の差分が出ているものと思いますが、測定精度さえ出せていれば、今回実施した方法で正しい地球の大きさが求められたと言っても良いでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?