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 胸中の手記 5月9日 いないクリスマスローズ

5月9日 木曜日 曇り

目が覚めたとき、自分のいない自分で歌って、自分のいない言葉が書けないだろうか。
できるなら、そうしたいと思った。
自分がいないときの方が、感触がいい。
そんな気がする。
本当にいないわけではないけれど、どう思われるかを忘れてしまう。
忘れてしまったほうがわたしにはずっといい。
そんな気がする。

道で、まだ乾いていないアスファルトを踏んで、靴の裏がペトペトした。
コールタールだ。その黒いのはコールタールで、昔わたしは胸の底にコールタールが溜まったような気持ちだと日記に書いて、その日記は捨ててしまいましたけれど、今日は公園の、全く見頃ではなさそうな植物が、うなだれるように立っていて、そこに「クリスマスローズ」という名札が付いているのが、自分に近いと思いました。

難しいです……。