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「都会の絵の具に染まらないで帰って」特集

「ブレーキは心に まいたけは健康に」という謎の看板、皆さんご存知ですか? 僕は地元が新潟県新潟市で、今住んでいるところが東京都なんですが、この東京→新潟に向かう高速道路の途中でこの看板はあります。

この意味不明さが面白い。

ちなみに、反対側(新潟→東京から見える方)のメッセージは、「お父さん、無事に帰ってね」となってます。これも若干意味が取りづらいというか、普通「帰ってきてね」じゃないの? という疑問はあります。「帰ってね」だと、お父さんの帰る場所が東京にあるような......(誰目線で見送ってるの?) まあ別にめちゃくちゃ変というわけではないけども、若干ツッコミどころのある看板となってます。表裏同時に。


太田裕美『木綿のハンカチーフ』

話変わって、最近聴いて「いいな〜〜〜」と思った曲に、太田裕美『木綿のハンカチーフ』があります。みなさんこの曲、ちゃんと聴いたことありますか? 1975年の曲ですよ! 僕はついこの前、訳あってしっかり聞く機会があり、初めてこの曲の良ささを知りました。

特に、一番の最後、「都会の絵の具に 染まらないで帰って」という歌詞がいいんですよね。

こちら、どういう歌かというと、、、田舎から都会に旅立つ男性と、その帰りを待つ恋人の歌となってます。最初こそ、「都会の絵の具に染まらないで帰って〜〜」と彼を送り出した女性ですが、段々と彼は都会の派手さに染まっていき、最後は「僕は帰れない」とまで言ってしまいます。まあ分かりやすい歌詞なので聴いた方が早いですね!!(上に貼った動画は一応公式のものです)


田舎→都会フェチ

で、ここからが今日の本題なんですが、個人的にフェチなんですよね、都会に染まっていく田舎者というものが。こういうことを描いた作品がすごく好きです。

僕も新潟県の田舎の方に生まれて、18歳の時に大学進学で地元を離れました。行った先は愛知県名古屋市で、これを「都会」と呼ぶと少なからず揉めるというか最悪戦争に発展しますが、とにかく僕にとっては「大都市」でした。ビルがとにかく高くて、いろんな衝撃を受けてました(特に名古屋駅前)。で、僕も初めて田舎を離れて、しばらく過ごすうちに、もう新潟に帰って暮らすことは考えられないな...... となりました。父母、特に祖母には悪かったけど、この街の楽しさを知ったら、もうあんな田んぼだけの町には帰れなかったです。

ちなみに、『木綿のハンカチーフ』でも、最後に男は「帰れない」と言ってるんですよね、「帰らない」じゃなくて。いや、帰るか帰らないかはお前の気持ち次第だろ! とは一方で思うけど、ただ同時に、この「帰れない」という気持ちもよくわかるな〜〜と思います。帰らないじゃなくて帰れないんだよなあと...... 皆さんはこの気持ち、実感したことはあるでしょうか。

そんなわけで、自分も「都会の楽しさを知った」人間なので、こういう「田舎→都会」系の歌や作品が好きだという話でした。

他にもいくつか、これ系で好きなのを紹介します。

スピッツ『サンシャイン』

皆さん、スピッツ、聴いてますか? こちら『サンシャイン』は、スピッツの5thアルバム「空の飛び方」に収録されている楽曲です。

この歌の歌詞にですね、

寒い都会に降りても  変わらず夏の花のままでいて

というのがあってね、エモいよな!! な? なあ!! こういうのが好きですね。

ちなみに、この曲を紹介しているスピッツファンのブログがあるんですが、それがとても印象的だったので、ここで勝手に紹介します。マジで勝手でごめんなさい。

このブログで紹介されているエピソードがすごく好きで、まあこれも勝手にでごめんなさいなんですが、転載したいと思います。すみません。

懺悔の気持ちもこめて最後にひとつ。むかし、クラスの卒業旅行のときに、片思いの女の子に手紙を添えて「空の飛び方」のアルバムを手渡したことがあります。そしてその手紙の最後に「変わらず夏の花のままでいて」という言葉を引用して書いたのでした。呪詛だった!!
 今思うと、なんて迷惑なもの渡したのだろう、ごめんなさい。(その子からは後日、優しい手紙をもらいました。ええ子だ。)

https://tokagekami.blogspot.com/2017/04/blog-post_29.html?m=1

脱線したけど、こういうのもやっぱりよいなあと思います。


映画『ブルックリン』

この映画も、すごく好きです。アイルランドの田舎から、ニューヨークの大都会にやってきた女性の話で、故郷の田舎と大都会ニューヨークの間で揺れる葛藤が、すごくうまく表現されてるなと思いました。ちなみに主演はシアーシャ・ローナンですね。レディ・バードとかと同じ。

この映画、単に田舎→都会に渡るだけでなく、一度都会→田舎に戻ってくるんですよね。そこで、田舎の良さも都会の良さも同時に知って、すごく心が揺れるんだけど、最後は...... という感じになってます。これも僕自身、すごく共感できるところが多く、観終わったあと一人で「ブラボーーーーーッッ!!!!」と叫んでました。自室で酔ってたので。

本当はもっと感想を語りたいけど..... ネタバレ気味になっちゃうのでやめときます。ただ、いろんな葛藤を通じて、主人公が最後に「強き女性」の姿を見せるところが感動ものです。おすすめなので観てね。

というわけで、

他にもこの種の作品はあると思うんだけど(中島みゆき『ルージュ』とか?)、長くなりそうなのでひとまずこの辺で。
「都会に染まる」とは言っても、調子乗ってウェーイ系になるやつが好きなわけじゃないですよ。ただ、地元との葛藤が生まれるとか、帰りたくても「帰れない」という心情が芽生えるとか、そういうのがフェチなだけです。ウェーイ系は死滅してよいぞ。

そう思うと、冒頭の、「お父さん、無事に帰ってね」という看板も、もし「お父さん、都会の絵の具に染まらず無事に帰ってね」という意味だったら面白いなと思います。どんな心配だよ? とも思うけど、田舎から都会に旅立つ者に対しては、常にそういう心配、そして寂しさがあってもいいように感じます。

ちなみに僕も今、この記事を、新潟から東京へと向かう新幹線の中で書いています(この金土日で弾丸帰省していた)。今日は夕焼けがとても綺麗でした。僕も明日からまた、都会の中で気張って行こうと思います。できれば「夏の花のままで」!!


新幹線を待っている間の夕焼け