8月7日のしゃれこうべ
「ナナミ、タバコなんて吸ってたんだ?」
「5年くらい前からね。そろそろやめどきかなって思ってるけど」
「なんで?」
「最近は肩身が狭いのよ」
幼馴染・アキラの質問に、私はぶっきらぼうに答えた。会社では喫煙所が撤去され、禁煙デーなんてものも始まった。それでなくとも値上がりばっかで財布を圧迫するし、ロクなことがない。
そういうわけで、そろそろ禁煙するか、他を切り詰めるか……というのが、目下の最大の悩みだ。
……いや、最大の悩み、だった。つい3時間前、アキラと再会するまでは。
私は煙草を灰皿に押し付けつつ、口を開く。
「で、アキラ。まず聞きたいんだけど」
「待ってナナミ。次なんか飲む?」
「あ。ビール」
「ほい。すみませーん! コーラとビールおかわり! あと枝豆ー!」
アキラは慣れた様子で注文を叫ぶ。彼女が座り直したところで、私は改めて問いかけた。
「ありがと。で、アレはアンタがやったの?」
「アレって、生首のこと?」
「ちょっ……」
普通のトーンでアキラがそう言って、私は慌てて周囲を見回した。
「ふ、普通に言わないでよ! 誰かに聞かれたらどうすんの!?」
「あ、ごめん。アレね。アレ。えっと……うん、やったよ」
「完全にアウトじゃん……」
こやつ、あっさり認めおった。頭を抱えた私を見て、アキラは慌てて口を開く。
「あ、待ってナナミ。違うの」
「なにが」
「生首にしたのはボクだけど、殺したのはボクじゃない」
「結局アウトだよ……」
私はため息と共に項垂れた。そこで、アキラは更になにか言いかけて──
「あ、タンマ。店員」
店員さんが来るのが見えて、私はそれを遮った。流石にこんな話を聞かれるわけにはいかない。
「ビールとコーラでーす」
店員さんは特に疑問も持たず、私の前にビールを、アキラの前にコーラを置いて去っていく。
……まぁ、そりゃそうだよね。
なんたってアキラは、15年前と──中3で消息を絶ったあの日と、なにひとつ変わらぬ容姿をしているのだから。
(つづく/800文字)
最初主人公が女で幼馴染が男……と考えていたのだけど、書いてる最中で「幼馴染の性別は女の子でもアリだな」と思ったりしています。ボクっこボーイッシュJCアキラちゃん。
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