カラクリ・ガラクタ・ヤタガラス

 問。

 あなたは今、両手に手錠を掛けられています。
 鎖は金属製のポールと壁の間を通っていて、抜け出すことは不可能に見えます。
 目の前には悪漢に捕まっている女性がおり、あなたはその人を助けたいと思っています。
 どうすれば良いでしょうか?

「うん、決まり」

 彼は躊躇いなく、自分の右手首を捩じ切った。ぱきょっと間抜けな音がした。

 そうして手錠から脱するや、目前でニヤついていた男に右ストレートを叩き込む。突き出た骨が眼窩を貫き、ニヤ男は絶命した。
 続いて彼は、捩じ切ったばかりの右手を振りかぶり、救出対象の女性のほうへと投擲。それは女性の頬を掠め、羽交い締めにしていた男の顔面にぺちん。不快感のあまり、羽交い締め男が悲鳴をあげる。
 次の瞬間、その喉には右ストレート(骨)が突き刺さっていた。

 問答終了。


「なにもされてない?」
「え、あ……は、はい……」
「ならオッケー」

 そうして彼が頷いた時、死んだ男二人が崩れ落ちた。
 ほんの一瞬、時が止まったような静寂が訪れて。

「っ……」
「てめぇ!!」

 そこへ来てようやく、残っていたチンピラたちが動いた。その数、4人。
 彼は慌てることなく、右腕を大きく横に振ってみせた。傷口から溢れる血がチンピラたちの顔にかかって視界を封じる。その隙に、彼は先頭のチンピラからナイフを奪い取り……その後は、あっという間だった。

「はい、おしまい」
「……っ!?」

 4人のうち3人は、首を切られて血の海に沈んだ。残った1人──チンピラたちの中でもリーダー格の男の鼻先にナイフを突きつけて、彼はにっこりと笑ってみせた。

「さて。問答をしよう」
「て、てめぇ、その右手……」
「大丈夫。俺、左利きだから」
「マジかよ……イカれてやがる……」
「うんうん。よくわかってるね? じゃ、答えないとどうなるか、わかるよね?」
「っ……」
「ね。だから、問答をしよう」

 彼は女性を一瞥してから、言葉を続けた。

「君の雇い主──彼女の"製作者"について」

(つづく/798文字)


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