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刀を亡くした侍に、鉛弾の祝福を。#7 (トレモズAct.2)

前回のあらすじ
 ツインとの死闘から3時間ほど。目を覚ましたシトリが聞かされた事実は二つ。ひとつはツインの全身が機械であったこと。そしてもうひとつは、シトリの愛刀が使い物にならなくなったことだった。

- 7 -

 翌朝。壁の大穴の修理をクアドに、そして怒り狂うマスターを宥めるのをサンに託し、シトリとトゥの二人は車に乗り込んだ。

 向かうは西の果て──赤茶けたロールストン山脈の麓、鍛冶の町<アマタイト>。いつものようにハンドルを握るのはトゥ。そしていつものように、シトリは出発と同時に夢の世界に旅立った。

「……ん」

 そんなシトリが目覚めたのは、二時間ほど無人の荒野を走ったころだった。ぱちりと目を開けて天井を見つめること数秒。口を開いたのは、運転席のトゥだった。

「なぁシトリ。ここまできといてなんだけどよ」

「ん」

「バーの横に武器屋あんじゃん?」

「ああ」

 相槌を打ちながら、シトリはダッシュボードに載せていた足を降ろした。トゥはそんなシトリの様子を横目に、言葉を続ける。

「あそこで買うんじゃダメなのか?」

「あの店は刀を置いてない」

 シトリは首を左右に倒す。ゴキゴキと景気の良い音が、トゥの耳にも聞こえてきた。トゥはさらに問いを続ける。

「剣でいいじゃん」

「剣と刀は違うんだ」

「ほーん……」

 興味のなさそうな相槌を聞き流し、シトリは背もたれから身を起こす。そして鞘に入れたままの愛刀を手に、トゥに問いかけた。

「ちなみにその質問、この状況となにか関係あるか?」

「そりゃお前、近所で買えてたらよぉ」

 トゥの答えを聞きながら、シトリは助手席の扉を開く。強風がシトリの長い髪をはためかせる。そんなシトリの背に、トゥは言葉を投げかけた。

「こんな荒野のド真ん中で襲撃なんてされなかったろ?」

「どうかな。俺が襲われたのはいつものバーだったぞ」

 シトリはその答えを残し、走行中の車の屋根にひらりと飛び乗った。そして車の後方に顔を向ける。

 そこには、武装ジープが猛スピードで迫っていた。

(つづく)

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