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碧空戦士アマガサ 第4話「英雄と復讐者」 Part9

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前回のあらすじ
 再度現れた<雨垂>と応戦する晴香。しかし晴香の相棒たるリュウモンは、先の戦いで致命傷を食らい、満足に妖力を制御できない状態にあった。あえなくそれを看破され、万事休すと思われたその時──銃声が響く!
 現れたのは湊斗、そしてカラカサを携えたソーマ! 湊斗は晴香から瀕死のリュウモンを返してもらうと、その力を借りて変身した──緑色のアマガサへと!

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 超自然の緑風が吹き荒れ、大粒の雨が舞い上がった。陽の光を反射して輝く飛沫は、まるで花吹雪の如くアマガサの新たな姿を彩る。

 それは、龍のごとき威厳を漲らせた、緑金の戦士だった。

 元は白銀であったスーツとマントは、今やエメラルドグリーンに染まっていた。胸当てやフェイスガードは力強い金色を帯び、陽の光を浴びてその全身を輝かせている。

 その左手には小太刀が──否、小太刀の如き長さの大扇子が携えられていた。

 アマガサはそれを身体の前で開き、朗々と宣言する。

「俺はアマガサ。全ての雨を止める、番傘だ!」

 ──そうして姿を現すは、黄金の龍。

 真紅の扇面に浮かぶその龍は──九十九神リュウモンは、真紅の瞳を爛々と輝かせながら吼えた。

『ようも叩き折ってくれたのォ、狐の小童!』

 吹き荒れる緑風は、その怒りを代弁するかのごとく。<雨垂>は反射的に大太刀を構え、唸るように口を開いた。

「九十九神の力を……取り込んだというのか……!?」

「人聞きの悪いこと言わないで。力を借りてるだけだよ」

 アマガサは心外だとばかりに言い返しながら大扇子をひと振りし、構えた。

 両足を揃え、背筋を凛と伸ばし、大扇子を携えた左手は自然に下げたまま、なにも持たぬ右手を<雨垂>に向けてスイと伸ばす──それはしなやかだが力強い、功夫の構えである!

「さて……やろうか、<雨垂>」

 そして右の手のひらを上向けて、四つ指をクイッと引き上げ──不敵に言い放った。

こいよ。俺に復讐するんだろ?」

「貴様ッ……!」

 挑発的なアマガサの言葉を受け、<雨垂>は刀を握る手に力を込め──

 ──その時、アマガサの姿がかき消えた。

「なっ──」

 <雨垂>が瞠目した次の瞬間、その腹を凄まじい衝撃が襲う!

「ぐァッ!?」

 ──なんだ、なにが起きた!?

 吹き飛ばされながらも、<雨垂>は必死で現状を把握する。火花が散る視界が捉えたのは、一瞬前まで自分が居た場所──サイドキック姿勢で残心するアマガサの姿だ!

「バカなッ……!」

「なんちゃって。こっちから行くよ」

 脚を上げたまま、膝から先をぷらんと揺らし、アマガサは不敵に言い放つ。驚愕に目を見開きながらも、<雨垂>は空中で身を捩って姿勢を整える。

 ──数メートルほど吹き飛ばされている。不覚だ。

 <雨垂>は歯を食いしばり、猫めいて着地した。そして痛む腹を抑えたまま顔を上げて、口を開き──

「貴様今なにを──」

 その言葉は、最後まで続かなかった。

 ──そこにアマガサがいなかったから。

「ッ……!?」

 刹那!

 アマガサの声は、<雨垂>の真横から聞こえた!

「そっちじゃないよ」

「ヌゥッ!?」

 反射的に大太刀を真横に振ろうとする<雨垂>。しかしその柄頭に伸びたアマガサの右手がそれを阻む!

「遅い遅い!」

 動きが止まった<雨垂>の首元に、緑風の刃を纏った大扇子が迫る! 8の字を描くように振るわれたそれを、<雨垂>はバックステップで回避した。

 アマガサはそれに追いすがり、フェンシングのように踏み込んだ。そして、水平に構えた大扇子で刺突を繰り出す!

 ギギッッギギギギッ!!

 大扇子と大太刀が激突し、接点から火花が散る! 緑風が渦巻くそれは、さながらバズソーの如く大太刀を打ち叩き──<雨垂>の大太刀が、弾かれる!

「ぐっ……!?」

『そこじゃァッ!』「はァッ!」

 リュウモンの咆哮に後押しされるように、アマガサは力強く踏み込むと<雨垂>の胸に掌底を叩き込む! が──その時。

 ──<雨垂>の姿が、かき消えた。

「おっ……とと??」

 バランスを崩すアマガサの視線の先、<雨垂>は一瞬のうちに数メートル先まで移動していた。

「このっ……!」

 高速移動で距離をとった怪人は、左手をアマガサにかざし──妖力を、解放する!

「死ねィッ!」

 ドドドドドドッッ!!!!

 穿ちの雨が降り注ぐ!

 アスファルトが抉れて吹き上がり、土埃でアマガサの姿がかき消えた。その様子を睨みつけながら、<雨垂>は乱れた息を整え、大太刀を構え──それを大きく振り回した!

 大太刀の向かう先に居たのは──アマガサ!

「ぅおッ!?」

 トップスピードで間合いを詰めていたアマガサは慌てて姿勢を下げた。正座するような体制でスライディングしたアマガサの鼻先を、<雨垂>の大太刀がかすめてゆく!

「甘いわァッ!」

 さらに<雨垂>は、横を滑り抜けていくアマガサに向かって左手を突き出す。そして──

 怪人の頭上で、雨水が塊となってゆく!

「えっ!?」

『あれは、<鉄砲水>の……!?』

 アマガサとリュウモンが驚愕の声をあげる中、<雨垂>は手先に妖力を篭め、叫ぶ!

「死ねィッ!」

 水弾が亜音速でアマガサに迫る。そこに宿る妖力は、<鉄砲水>の比ではない!

 慌てて体制を立て直すアマガサだったが──間に合わない!

「くっそ、油断した……!」

 アマガサは慌てて両腕をクロスさせ──

 グバンッッッ!


 無情にも──水弾が炸裂した。

(つづく)

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