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アクション小説における"間合い"の記述について考える

 よく来たな🍑

 この記事は桃之字の思考の整理であり、あなたはこれを参考にしてもいいし、しなくてもいい。世の中には「こうじゃなきゃいけない」なんてことはないんだ。でも下のほうにお役立ちツールを書いてあるからそれはぜひ参考にしてほしい。

小説を書くときに、文章で浮かぶか映像で浮かぶか

 作家の間で定期的に上がってくる話題だ。

 僕はアマガサに関しては実写映像で浮かぶ人なのだけど、それ以外(トレモズとか)は結構マンガのコマ割りで浮かんだりもする。前者は仮面ライダーがベースだから、後者は僕のインプットが漫画に偏っているからだと思う。

 どちらにせよ「映像/画像を文字にする」という作業が発生するのだけど、いかにして簡潔に、わかりやすく、そして小説っぽく説明するかというのは永遠の課題だ。

「誰が誰に向かってなにをした、なにかを言った」というのはまぁ想像しやすいからいいんだけど(頻度が高いとちょっと大変だけど)、なかなか難しいなぁと日々思っていることがある。それが"間合い"の表現だ。

アクション小説における"間合い"の記述

 例として、お互いに剣を持った戦いにおいて、ゼロ距離で剣戟の応酬が起きた後、互いに距離を取ったときを考えてみる。

 踏み込みは同時。無人の荒野に金属音が響き、両者の間を火花が舞う。しばしの攻防の後、両者は同時に飛び退り、距離を取った。

 さて、この次の両者の動きはどうなるだろう?

 その距離が2,3メートルなら、どちらか素早いほうが踏み込み、再度間合いを詰めて追撃するとか、刺突を行うとかするだろう。では、実は両者の脚力が凄くて10メートルとか離れていたらどうか。弓や銃、時には魔法などを使った遠距離攻撃が続くとか? お互いの攻撃範囲の外なら、両者の対話がはじまるかもしれない。

 そういった具合に、戦いの中では互いの距離によって両者の次の行動が決まることもある。その行動はアクションにおけるリアルだ。

 漫画とか映像だと、このあたりは視覚情報として受け手に刷り込まれる。「なんとなく遠いとこに離れて対話がはじまる」とか「お互いの剣が触れ合う距離で睨み合う」とか、それを受け手は無意識に理解する。ただ、小説ではそうはいかない。それを記述するというのはかなり苦心するところだったりする。

 いやまぁ「そういう情報は冗長だから省くべき」という論もあるにはあるんだけど、文章のテンポとか自分のリズムとか表現の兼ね合いで書かなきゃ座りが悪い事ってあるじゃん? あるよね?

"距離"と"間合い"

 先ほどの例で、両者の距離が5メートルある、という記述があったとする。

 踏み込みは同時。無人の荒野に金属音が響き、両者の間を火花が舞う。しばしの攻防の後、両者は同時に飛び退り、5メートルの距離をもって睨み合う。

 5メートルといえば、駐車場の各車室の奥行とか、道路標識(青い看板)の高さとかくらい。現実世界ではそうだけど、では翻って作中の両者──二人の剣士にとっての"5メートル"という数字はどれほどの意味を持つのだろう? その答えとなるのが"間合い"だ。

 この間合いを表現するのには大きく分けて二つのパターンがあると思っている。

1.素直に説明する

両者は同時に飛び退り、5メートルの距離をもって睨み合う。依然として両者とも必殺の一撃を放てる距離だ。

2.次の行動で示す

両者は同時に飛び退り、5メートルの距離をもって睨み合う。次の瞬間、必殺の居合が繰り出された。

 こういう例だとわかりやすいのだけど、例えばアマガサみたいに銃で戦ったり敵が変則的な攻撃をしてきたりしてるとなかなか難しい。のだ。テンポも悪くなるし。

毎回書くのはなんだかなーと思う

 上述の2パターン、毎回やるのもマンネリ化してきてつまらない。テンポも悪くなるし。そう思ってうんうん唸ってたんだけど、やはり「読者との合意形成」をいかにうまくやるかがカギになるのではなかろうかと思っている。

 上述の例で言うと、「5メートル」=「必殺の一撃を放てる距離」ということを読者に把握してもらって、覚えておいてもらうイメージ。

 その辺、ニンジャスレイヤーはすごい。「タタミ2枚分の距離で」とか「ワンインチ距離で」とかさっぱり書いているけれど、読者はこの「タタミ2枚分の距離」「ワンインチ距離」がカラテをする上でどういう意味を持つのかしっかり理解している。無意識のうちに。

 それはニンジャスレイヤーが徒手空拳でイクサする戦士であることや、スリケンの間合いや、そういった色々な物事を丁寧に読者に想像させてきた積み重ねによるもので、それこそが合意形成なのだろう、と思うに至った。

僕が頼りにしているもの

 つらつら書いてたら2500文字くらいになったんだけど、オチが思いつかない。こういうときは自分のよく使うツールとかを紹介すると良いとぽたぽた焼の袋に書いてあった。そういえば最近のちびっ子はぽたぽた焼きわからないって聞いたんだけどマジ?

●身近なものの大きさ

 ・1000円札:15㎝
 ・500mlペットボトル:20㎝
 ・畳:約2m×約1m(※)
 ・電信柱同士の間隔:30m
 ・歩幅:成人男性の平均70㎝
   →いわゆる「大股一歩」だと1mとか平気でいく

 ※畳・・・大判のものでこんな感じ。規格によっていろいろある。そういえばニンジャスレイヤーの「タタミ2枚分の距離」って、縦2枚なのか横2枚なのか、どっちなんだろうね

●サイズ.com

 元々はA4の紙の大きさとかを参照するのに使っていたのだが、サッカーコートのサイズだとか畳だとか軽自動車のサイズだとか、いろいろと面白い情報も載っている。

●地図に円を描く

 間合いとは少し異なる話だが、なにかの範囲を想像するのによく使うツールだ。半径100mとか、半径1マイルとか、そういうのがビジュアルとしてわかる。「この魔法の範囲はだいたい10mくらいかな」とかざっくり考えたあとに実際のサイズ感を把握してから文字に起こすことが多い。

例えば東京タワーを異空間にすっぽり包むなら半径100mで良い(左図)
東京タワーから1マイルを焦土と化せば、築地・六本木あたりまで滅ぶ(右図)

いじょうだ

 最初にも言ったが、あなたはこれを参考にしてもいいし、しなくてもいい。世の中には「こうじゃなきゃいけない」なんてことはない。

 それでは快適な執筆活動を! ちゃお!

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