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福丸小糸に事故って自己投影してでも自分の主人公は福丸小糸じゃないと気付いた犬(@inukaenai)が死ぬまでの手記

 相変わらずシャニマスにどっぷりな桃之字です。ご機嫌いかがでしょうか。

 今回は、犬飼タ伊先生からシャニマス文書を受けとりましたので、掲載します。シャニマス知ってる人も知らない人も、とりあえず僕が……じゃないや、犬飼氏が悶えている様をお楽しみください。

犬飼タ伊(いぬかい・たい)
 ペット不可物件に住む犬。新米P。283歴約100日、315歴約半年。
 pixivで、主にシャニマスの二次創作SSを投稿中 →[URL]

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 今、ものすごく気になっているというか、とんでもなく自己投影してしまって死にそうになっている子がいる。名を福丸小糸。本記事のサムネにいる子だ。

 シャニマスはご存知の通りアイドルゲームなので「推し」とか「担当」とかそういう概念が色々あるんですけど、なんだろう、この子が自分にとってどれに当たるのかよくわからない。ただもうこの子がライブで歌ったり他のアイドルと楽しそうにしているだけで泣きそうになる。ソロ曲なんて聴いた日には2,3日「ぴぇ」しか言えなくなっていた。これは涙? 泣いているのは私?

 なにはともあれ、ちょっと本気でこの子のなににこんなにめちゃくちゃにされてしまっているのかを言語化・文章化して整理しないと脳がばくはつしそうな気がしたので、書きます。

福丸小糸とは

福丸小糸(ふくまる・こいと)
東京都出身、16歳。身長148cm。趣味は読書、特技は勉強。

 小糸がアイドルになったきっかけは、幼馴染4人組の筆頭格・浅倉透がアイドルにスカウトされたことだ。透、円香、雛菜、そして小糸の幼馴染4人組は、それをきっかけに283プロのアイドル、「ノクチル」となった。

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ノクチル告知映像より。一番右が小糸ちゃん。ちっちゃくてカワイイネ!

 透(中央の銀髪)はその超然とした自然体で人を惹きつけ、何者をも魅了する子。円香(赤髪)はそんな透に食らいついていける子。雛菜(一番左)は"自分らしさ"を徹底的に貫きながら、なんでもソツなくこなしちゃう子。そんなとんでもない人物の集まりがノクチルだ。

 その中で小糸はというと、自信がなくオドオドしている、ちょっと鈍臭い女の子で。犬の第一印象が「この子キョロ充?他の子達にイジめられたりしてない?」だったくらいには、本当に普通の子だ(念のため記載するが、別にキョロ充でもなければイジめられてはいない。それどころかかなり頼りにされているフシがあり、安心した)

 小糸の志望動機は、「幼馴染と一緒にいたいから」という単純なものだった。この背景には、4人組のうち小糸だけが違う中学に通っていたという点がある。あまり積極的には描かれないが、あまり楽しい中学生活ではなかったのだろう。想像はつく。

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「"また"居場所がなくなっちゃう」という言葉で犬は一度死んだ

 そういうわけで、283プロに入りたての頃、彼女は高校生になってまた4人で集まれたこと、そして、同じアイドルという目標に向かって走れることを喜んでいた。

 とはいえ、「4人で集まれたらそれで良い」という動機だけではアイドルはやっていけないものだ。メインシナリオ1章にあたるWING編では、この「個人の目標の欠落」にフォーカスが当てられる。

 WINGとは、作中の新人アイドル発掘オーディションであり、新人アイドルの登竜門と言っても過言ではないイベントだ。これを突破するには必然、彼女自身がなぜアイドルを続けたいかという強い動機を問われることになる。

 そこから紆余曲折を経てWING優勝を勝ち取ったとき、小糸はその課題についてひとつの答えを得るに至る。

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 それは、自分と同じように"居場所がないと感じている人"のためのアイドル。福丸小糸を応援する人と、そして小糸自身が作り出す居場所。仲間がいるよ、ここにいるよ、ここにおいで、と言える、そんな存在になりたい──それが小糸の得た答えであり目標であり、彼女は、そしてプロデューサーたるプレイヤーは、その目標を胸に活動を続けることになる。

ちなみにこのコミュのタイトルは、「ここにおいで」。彼女の目標を表す良い言葉だと思う

ターニングポイント

 さてさて。ここまでの時点では、犬としては、まぁなんというか、正直ただ「いい話だなー」で終わっていた。それだけだった。実際、この子を初めてプロデュースしたときの反応はこうだった。

ほんの1行。ほんのひとこと。

 そんな想いが大きく変化したのは、小糸のキャラクターソング「わたしの主人公はわたしだから!」が発表されたときのこと。

 シャニマスの楽曲の特徴として、ユニット曲はかなり"作中の世界におけるアイドルの曲"感が強い。一方で、件のキャラソンは壁のこちら側向けというか、本当にキャラクターを分解して再構築したような、「その曲を聴くことでキャラへの理解を深められる」役割を持っていると思っている。なので、小糸の曲であるこの曲も、「福丸小糸」というキャラを分解再構築して作られた楽曲だ。

 さて、曲を聴いてもらう前に、今からその歌詞をいくつか抜粋する。上述した物語とか気の弱さとかも含めて、どんな曲かを想像してほしい。

背伸びをしても 簡単にバレちゃう
だってみんなすごいでしょ
もっとちゃんとそつなくこなしたい
いつの日にかみんなみたいに
ねぇどうして 堂々としてるの?
とにかく付いてかなきゃ
大好きな本の主人公だったら
みんなみたいになれるのに

 読みましたね?

 ではお聴きください。福丸小糸で、「わたしの主人公はわたしだから!」

03:10付近からです

 はい。

 3:10付近からのやつです。間違いじゃないです。GOGO!!!とか言ってるやつです。いやこんなド暗い歌詞をこんな明るい曲にお載せするやつがおるか。

 この動画はソロコレクションの告知動画でして、シークバー動かしてもらえるとわかるんですが、このアルバムって全体的に格好良い曲とか精悍な曲が多いんですよ。明らかに小糸の曲だけが浮きまくってるんですよ。だから最初「!?」となって思わず歌詞を読んでさらに「?????」となった。あまりにも衝撃で。これがイメージソングとしてお出しされる福丸小糸とは何者なのかと。こんなド暗い感情をこんな明るい曲で歌うって、あの小動物はなんなんだと。

 そんな状態でこのアルバム買ったもんだからもう大変ですよ。延々小糸の曲を聴いていた。いやごめんちょっと盛った。担当である摩美々の曲も聴いてた。プラスチック・アンブレラにも情緒をめちゃくちゃにされた。でもそれでも小糸の曲を聴いてた。ずっと聴いてた。聴きながらWINGやってた。WINGやりながら泣いてた。感謝祭をやる勇気はなくてただただWING回しながら泣いてた。元気な曲なのに泣いてた。こんなに元気な曲なのに。あれ、元気なのに? 嘘の元気ってこと? あれ? あ、これって空元気なのもしかして? 「ぜ、全然余裕です!」ってか。おい小糸。そういうことか?

先のツイートからこの間、1週間である

 小糸は自分を奮い立たせるために、プロデューサーに「全然余裕ですよ!」とよく言うのだけど、要はそれか。「背伸びをしてもバレちゃう、みんなすごいから。でも全然余裕なんですよ私! ほら、元気でしょ?」って。それか。

 そうして紐解いていくうちに、犬はどんどん小糸ちゃんに共感というかもはや自己投影に近い感情を抱き始めていました。

 だってさ、みんなあるじゃんこういうの。

 不特定多数の他人よりもちょっとだけできることがあったとして。

 他の人たちからは「すごいね」「がんばってるね」と言ってもらえるけれど、辺りを見回すと、自分なんてまだまだだと感じるし、あまつさえ上を見ればキリがない。

 だから、自分はすごくないし、頑張ってるうちにも入らないと思う。例え世間に「頑張ってるライン」みたいなものがあってその閾値を越えていたとしても、自分が納得できない限りは「このくらい当たり前です」と言ってしまう。実際は色々と、プラスとマイナスの感情が渦巻いているけれど、なんならマイナスの感情のほうが大きいけれど、それらは全部隠して、「天才だからね!」とか「このくらい余裕っすよ!」とか笑ってみせる。空元気と虚勢で自我を保つ。あるじゃん、そういうの。

 果たしてそんな自分が、自分で自分に納得できず「このくらい当たり前です」なんて空元気出しちゃう自分が、小糸の空元気に「そんなことないよ、大丈夫だよ」なんてどの面下げて言えるんだ。不思議と言えちゃうんですよこれが。自分のことは棚に上げて言えちゃうんです。なんて身勝手。小糸のことは承認できるのに自分のことは承認できない。小糸を承認しても自分は承認されない。小糸はプロデューサーさんも頑張ってくれてるって言ってくれてるけどそんなんじゃないんだよ犬は小糸なぁ小糸とりあえず飴食べるかお菓子もあるぞ。

 そうして小糸に自己投影をしてしまったわけなんですが、でもね、すぐに気づいてしまうんです。自分は小糸にはなれないって。むしろ、だからこそ自分を棚上げして小糸を承認できちゃうし、小糸を承認しても自分を承認できないままなんだって。

 この曲をフルで聴くと(上の視聴動画では1番までしか聴けないけれど)、「大好きな本の主人公だったらみんなみたいになれるのに。でも、わたしはわたしだから、めいいっぱい頑張ろう!」と奮い立ち、「わたしの主人公は、ずっとこれからもわたしだから!」と力強い自己定義を示す。きっとまだまだ完全な自己承認なんてできていない、それでも、偽物の元気を少しだけでも本物に変えて、奮い立って、走っていく。福丸小糸の物語を。

 自分は福丸小糸だけど、福丸小糸になれないんですよ。だって小糸の主人公はずっと小糸で、自分の主人公はずっと自分なんですよ。「大好きな本の主人公だったら」の「本の主人公」こそが僕にとっての小糸なんですよ。犬は立ち上がらなきゃならない。でも立ち上がれない。犬は……犬はなにをしている……noteに小糸への拗らせ感情を書いている……犬は……

(編者註:ここで一度手記が途絶えていましたが、数日後追加で文章が送られてきましたので掲載します)

勇気を出してGRAD編にチャレンジしてまた死んだ

 3rdライブ名古屋見ましたか皆さん。うちの摩美々と小糸が全力のステージを見せてくれましたよ。小糸が。「わたしの主人公はわたしだから!」をあんなに楽しそうに。たくさんのお客さんの前で。会場が一体になってたよ小糸。すごいぞ小糸。飴ちゃん食べるか小糸。

 ……と、福丸小糸のキャスト田嶌 紗蘭さんのおかげで「福丸小糸のライブ」に対する解像度が爆上がりした状態で迎えたGRAD編の話をして、この記事を終わろうと思う。

ここから、少しだけGRADのネタバレを含みます

 GRAD編は、大規模なアイドルオーディションに挑むという、ある種原点回帰的なシナリオだ。第1章・WINGでデビューし、第2章・ファン感謝祭でユニットの結束を強めた。そうしてアイドルとして成長した彼女たちが、今一度ソロで頂点を目指す。そんな物語。

 このシナリオは、各アイドルのもつ大きな"課題"が表出する物語だと思っている。例えば感情表現の薄い子が「ロボットみたい」と言われ悩むとか、優しすぎる子が「人が目の前で挫折する瞬間」を見てしまって動けなくなるとか。その子がその子である故の、でもアイドルである限りは越えなければならない"課題"が立ちはだかる。

 小糸もそれは例外ではない。WINGで「誰かの居場所になれるアイドル」という目標を見つけ、「目標の欠落」という課題を突破した小糸であったが、GRADではその目標の高さが、現実が、改めて小糸につきつけられる。それによって足踏みする小糸。突っ走ってバッドコミュニケーションかますプロデューサー。その運命やいかに──

 ここでも延々頭の中で流れてくるのは「わたしの主人公はわたしだから!」で、決勝ライブでこの曲が流れ出して犬は無事死んだ。

 GRAD編では小糸がこれまでチラ見せしていた完璧主義的な部分が大きく吹き上がる。WINGのときも「あまり表に出したくない」ということは言っていた。感謝祭のときも「やりたいことはあったけど、中途半端な私じゃ言えないから」というやり取りがあった。自分が自分に納得していないからこそ、納得のいかないものを人に見せたくない。その心理はとてもよくわかる。

 が、今回はプロデューサーが「練習で頑張っている風景も撮ってプロモーションしよう!」と言い出して、小糸はそれを断れなくて、でも嫌なものは嫌で、めちゃくちゃ落ち込む。おいPたん。小糸とちゃんと会話をしろ。焼肉を奢ってやれ。

 とはいえプロデューサーの言うこともわかるのだ。どうしても、評価されるためには実績が要る。実績がないなら、その過程を見せる。たとえそれが中途半端な出来のものであっても、「表出しないものはないのと同じ」だから。だから「小糸がそういうの苦手なのはわかるから、俺が撮ってだすよ」というのもプロデューサーなりの気の遣い方だったのだろう、というのもわかる。小糸自身もそこがわかっていたからこそバッサリ断れずに、限界まで我慢してしまった。わかる。めちゃくちゃわかる。

 WINGで見出した目標「誰かの居場所になるためのアイドル」は、今の小糸には高すぎる目標で、そこに至るための道筋は誰にも見えないけれど、誰かの居場所になるためには「そういう居場所がある」ことを知ってもらう必要がある。きっとプロデューサーのバッドコミュニケーションはそれを肌で感じていたゆえの焦りだったんだと思うし、GRAD編を通じて二人が話し合って、答えを出したということが自分のことのようにうれしかった。

 こうして、”なにかのために”ではなく”夢のために”、GRADの優勝に向けて奮い立つ小糸。そうしてGRAD優勝を勝ち取り、「それでもまぁ、なにかが大きな変化があるわけじゃないんですけどね」とどこかすっきりした顔で笑う小糸。そんな二人に訪れる”ちょっとした”変化。とても良い読後感の、本当に本当に良かったなぁ小糸……Pたんに焼肉奢ってもらえな……と思える良いシナリオだった。本当に良いシナリオだった。

 でですよ。お気づきですか。こないだガッツリ死んだのに、犬はいまだに「自分のことのようにうれしかった」とか小糸ちゃんに自己投影して楽しんでるわけなんですよ。そんなことやってる場合じゃないのに。だって小糸はGRADに優勝したんですよ。でも犬は? 犬はなにもしていない。頭の中にあるめちゃくちゃ面白い一大スペクタクルを、中途半端な形にすらせず、計画を立てることすらなく、ただ熟成させ続け、小糸に自己を投影して満足している。でも犬は小糸ではない。小糸にはなれない。小糸の主人公は小糸で犬の主人公は犬だ。犬はなにを。犬は。


手記は以上です。
犬飼タ伊先生の作品は以下のURLから読むことができます。
★本記事を執筆した時点では小糸ちゃんの作品はありませんでしたが、後に何作か投稿されていますので追加しておきます(6/18update)

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