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エディター専用機・ポメラ「DM30」と「DM200」どちらをどんな理由で選ぶか


 2018年6月8日、キングジムからポメラDM30が発売になる。
 ポメラは、テキスト作成に特化した機器。言ってみれば「エディター専用機」だ。
 ポメラとしてはDM200発売から2年ぶり。最初のモデルが登場してから実に10周年を迎えた記念すべき製品でもある。

○ポメラ史上はじめて2機種が併売される状態
 5月に行われたDM30の発表会では、一つ前の機種であるDM200も併売されることが明言された。つまりポメラシリーズ史上はじめて、併存する現行機種から選ぶことができるようになった。これは、ポメラシリーズの販売状況として初めての事態だ。
 さてでは、この2機種のどちらを選ぶのがいいのか。
 本稿では、この選び方を2機種それぞれの特徴を振り返りながら考えてみたい。

 これまでポメラを入手するのには大別して3つの方法があった。すなわち
 A その時点での最新機種を買う。
 B 市場にある旧機種の在庫を探してオンラインショップなどで買う。
 C 中古をやはりオンラインショップやオークションサイトで買う。

 の3つだ。そしてDM30登場以前は、BやCのような方法でなければ、選択肢は1つしかなかった。具体的には、DM200が登場したら、ストレート型ボディの初代機種DM100は、カタログ落ちとなっていたのだ。
 ところが現時点では、ポメラの現行機種は上述の2種類になった。以下に各機種の機能とプロフィールを概観していこう。

・DM200:使い方次第では万能になり得るポテンシャルを秘めた現時点での究極ポメラ
 DM200は、DM100に続くストレート型の2代目ということで、いろいろな点で洗練されたモデルだ。
 まずその筐体はノートPCに近いクラムシェルスタイル。
 7.0インチTFT液晶は、バックライトの輝度調整もあり、暗いところでも使いやすい。
 また、Bluetooth対応なので、iPhoneやiPadをはじめとするスマートフォン・タブレットの外部キーボードとして利用できる。
 さらにWi-Fi機能を搭載したことで、応用範囲が広がった。「アップロード機能」と呼ばれるメール送信機能を利用すれば、ポメラ単体でクラウドにテキストをアップすることができる。Wi-Fiネットワークに接続して、送信先(メールアドレス)を指定さえすれば、スマートフォンのアプリを起動する手間なく、簡単にアップできる。これは体験するとそれまでの操作感が煩わしく感じられるほどだ。無料でWi-Fiを利用できる場所は日々増えており、ポメラ側の設定さえ理解して接続できれば、これほど便利なものもない。念のために言えば、受信はできない。これはポメラのポメラたるゆえんとも言える。あくまで文書作成のためのツールであり、それをサポートするための機能なのだ。
 iOS用ポメラ専用アプリも利用できる。ポメラ本体でテキストをQRコードに変換し、専用アプリを利用してEvernoteやDropboxはもちろん、メールや、各種SNS(twitterなど)にアップすることもできる。これはDM20以来の機能で、DM200はもちろん、後述するDM30でも対応している。 
 キーボード自体も優秀なタイプフィールだ。さすがにボディが薄いためにストローク自体が深くはないが、よほどのハードパンチャーでなければ満足できるだろう。またキートップも大きいので打ちやすい。
 ストレートスタイルといい、Wi-FiとBluetooth対応といい、ポメラとしてはやや異端とも思えるプロフィールの機種だが、ユーザーのスキルひとつでLinux化できるなど、そのポテンシャルは高い。
 もっともLinux化をして各種機能を享受するためには、そのための知識が不可欠だ。それをあらたに学ぶのをいとわないのなら、またはすでにその知識があるのなら、DM200は、モバイルバッテリーで利用できる小型Linuxパソコンとして並ぶもののない存在だと言える。

・DM30:二つ折り&乾電池駆動の最新型オーソドックスポメラ
 その最大の特徴は、なんといってもボディスタイルだろう。ヒンジが2つに増えて安定感が増した。DM25までのポメラは、二つ折りのキーボードを大きなアイデンティティとしていたし、それはガジェット好きの心の琴線に触れるものでもあった。DM30は、その折りたたみ機構は大きく改善され観音開きスタイルになったが、初代以来のポメラのスタイルを継承していると言える。同時にこれは、持ち運び時の筐体の小型化にも貢献している。DM200は確かに開くのがワンタッチだが、絶対的には大きい。対するDM30は折りたためる構造によって小さくできる。それは、やや重くなった(450g)重量を補ってあまりあるものだと言える。
 キーボード下部には収納式の足が新設された。これはテーブルの上で利用するときには安定感に貢献する。反面例えば電車の中などでは、あまり意味はない。
 また、電子ペーパーを採用した6インチディスプレイは、発光する一般的な液晶ディスプレイよりも目に優しく、疲れにくい。これはまたポメラシリーズへの採用が初めてでもある。目に負担をかけたくないという理由でDM30をチョイスしてもいいだろう。
 もっとも、DM30にはないものもある。具体的には、Wi-Fi接続機能とBluetooth機能だ。とくに後者の不在は、iPhoneの外付けキーボードとして使うことは望めない。もちろん、上述したiOSアプリを使えば、スマートフォン経由でテキストをクラウドやメール、SNSにアップすることはできるが、一手間という点では、よくいえばポメラらしいが、悪く言えばスマートさに欠けるわけだ。この点を、無線LAN対応SDカードの「FlashAir」でどう補うかも課題だ。DM30ではFlashAirへの対応が正式に明言されている。同時にネット上では、旧機種DM100とFlashAirを組み合わせた活用法を紹介したBlogなどがいろいろある。だから、追加投資と設定の知識は必要になるが、そういうものを参考にしてDM30を使い込んでいくのは一つの方法としてありだろう。
 乾電池駆動ができるのもポイントが高い。DM200の場合、モバイルバッテリーで使えるものの、それでも常備しているコンビニがそこここにあるわけでもなさそうだ。その点乾電池ならば、ほぼどこでも手に入る。この安心感は大きい。
 一つ難があるとすれば、ATOKの能力だろうか。これはDM100相当と言われており、ATOKforPomera(Professional)(DM200)を使ったあとだと能力の差を感じざるを得ない。
 その代わりと言ってはなんだが、DM100にあった表作成機能は継承されている。DM200にはこれはない。この点でもDM30は“折りたたみ版DM100”だと言える。
 まとめると以下のようになる。
 DM30は、折りたたみで小さなカバンにも入り、乾電池駆動できて目に優しいディスプレイを持つオーソドックスなポメラだ。

 ここまで見てきたように、DM200とDM30は同じポメラシリーズといってもまったく性格が異なる。だから自分の使い方をよく見極めて選ぶ必要がある。
 共通するのはポメラというシリーズ名とアウトライン作成機能、それに専用iOS用アプリへの対応やSDカードスロット、パソコンとの接続機能ぐらいだろうか。ともにパソコン用のATOKの辞書をインポートはできる。ただし推測変換の機能は各機種でアップグレードされるわけではない。

 もう一つ問題があるとすれば、それは価格のねじれだ。
 2018/06/07時点では、DM200は、34980円。対するDM30は、38000円だ(いずれもAmazon.co.jpでの価格)。旧機種の方が新機種より安いのは順当に思えるが、文字入力(とくにATOK部分)を比較すると高性能なのはDM200の方なのだ。発売からしばらくは価格が下がらないことを考えに入れても、DM30はやや割高に思えるかもしれない。

 もし単純にテキスト入力の専用機が欲しいというのならば、DM200が内容や扱いも含めて順当だろう。そうではなく、どこにでも持ち運べて、ガジェット感覚も楽しめるデジタルメモが欲しいというのなら、DM30となるだろう。

 ポメラについては、その特異な立ち位置が面白いのでずっと気になってきた。そしてDM100を購入後は、勢い余ってKindle書籍まで書いた(これはKindle有料書籍ランキングで最高37位(!)まで行った)。



 なので今後もいろいろ試してここで書いていくつもりです。

 最後まで読んでくださってありがとうございました。


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