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中論ー19.20.21

中論 第十九章 時の考察

1.もしも現在と未来とが過去に依存しているのであれば.現在と未来とは過去の時のうちに存するであろう…
2.もしもまた現在と未来とが.そこ(過去)のうちに存しないならば.現在と未来とはどうしてそれ(過去)に依存して存するのであろうか…
3.更に過去に依存しなければ.両者(現在と未来).の成立する事は有り得ない…
それ故に現在の時と未来の時とは存在しない…
4.これによって順次に.残りの二つの時期(現在と未来).更に上.下.中など.多数性などを解するべきである…
5.未だ住しない時間は認識され得ない…
既に住して.而も認識される時間は存在しない…
そうして未だ認識されない時間が.どうして知られるのであろうか…
6.もしも何らかのものに縁って時間が在るのであるならば.そのものが無いのにどうして時間があろうか…然るに如何なるものも存在しない…
どうして時間が在るであろうか…
時無別体.依法而立
時に別の本質なし.法に依りて立つ…

第二十章 原因と結果との考察

1.もしも原因と諸々の縁との和合によって結果が生ずるのであるならば.然らば結果は和合の内に存在する…ではどうして和合によって生ずるのであるか…
2.もしも原因と諸々の縁との和合によって結果が生ずるのであるならば.然らば結果は和合の内には存在しない…ではどうして和合によって生ずるのであるか…
3.もしも原因と諸々の縁との和合によって結果が生ずるのであるならば.然らば結果は和合の内に認識される筈ではないか…然るに(実際には)和合の内には認識され得ない…
4.もしも原因と諸々の縁との和合の内に結果がないならば.諸々の因と諸々の縁とは.因縁ならざるものと等しくなってしまうであろう…
5.もしも原因が結果に原因たるものを与え終わって消滅するのであるならば.与えられたものと消滅したものとが原因の二つの自体となるであろう…
6.もしも原因が結果に原因を与えないで消滅するならば.原因が消滅してから生じたその結果は無原因のものとなるであろう…
7.またもしも結果が和合とともに❲同時に❳現われ出るのであるならば.生ずるものと生ぜられるものとが同一時のものであるという事になってしまうであろう…
8.またもしも和合よりも以前に結果が現われ出るのであるならば.結果は因と縁とを離れた無原因のものとなってしまうであろう…
9.もしも原因が消滅した時に.結果があるのであるならば.原因が推移した事になってしまうであろう…また以前に生じた原因が再生したと言う事になる…
10.既に消滅して既に没入したものが.どうして既に生じた結果を更に生じ得るであろうか…
また既に結果と結合して住している原因も.どうして結果を生じ得るであろうか…
11.また結果と結合しないこの原因が.何れの結果を生じ得るであろうか…何となれば.原因は結果を見ないで.結果を生ずるのでもないし.また結果を見終わってから結果を生ずるのではないから…
12.過去の結果が.実に過去の原因と相い合する事は決して有り得ない…また未だ生じないものや.既に生じたものと相い合する事は決して有り得ない…
13.既に生じた結果が.未だ生じない原因と相い合する事は決して有り得ない…また過去のものや.既に生じたものと相い合する事は決して有り得ない…
14.未だ生じない結果が.既に生じた原因と相い合する事は決して有り得ない…またそれが未だ生じないものや.既に滅びたものと相い合する事は決して有り得ない…
15.相い合する事が無いのに.どうして原因が結果を生じ得るであろうか…また相い合する事が有る時に.どうして原因が結果を生じ得るであろうか…
16.もしも原因が結果について空である[結果を欠いている❳ならば.どうして結果を生じ得るであろうか…またもしも原因が結果について不空である❲結果を欠いていない❳ならば.どうして結果を生じ得るであろうか…
17.不空なる結果は生起しないであろう…
不空なる結果は消滅しないであろう…
不空なる結果は不滅.不生であるであろう…
18.空である結果はどうして生起するであろうか…
空である結果はどうして消滅するであろうか…
19.原因と結果とが同一であると言う事は.決して有り得ない…原因と結果とが別異であると言う事も決して有り得ない…
20.もしも原因と結果とが一つであるならば.生ずるもの❲能生❳と生ぜられるもの❲所生❳とが一体になってしまうであろう…また原因と結果とが別異であるならば.原因は原因ならざるものと等しくなってしまうであろう…
21.それ自体として実在するものである結果を.原因はどうして生ずるのであろうか…
それ自体として実在しないものである結果を.原因はどうして生ずるのであろうか…
22.また結果を生じないものが原因であると言う事は有り得ない…そうして原因である事が成立しないならば.何ものにとって結果が起こるのであろうか…
23.因と縁とのこの和合が.みずから自体を生じないのであるならば.その和合はどうして結果を生ずるのであろうか…
24.和合によって造られた結果は存在しない…和合によって造られたのではない結果も存在しない…結果が無いのに.諸々の縁の和合が何処に存在するだろうか…

第二十一章 生成と壊滅の考察

1.生成を離れても.或いは生成とともに在るにしても.壊滅は有り得ない…
壊滅を離れても.或いは壊滅とともに在るにしても.生成は有り得ない…
2.生成を離れて.どうして壊滅が有り得るであろうか…もしも壊滅が在るとするならば.生が無くとも死が在る事になるであろう…また生起が無くとも壊滅が在ると言う事になるであろう…
3.壊滅がどうして生成とともに❲同一時に❳有り得るであろうか…何となればこの様に.生と死は同時には有り得ないからである…
4.壊滅が無いのに.どうして生成が在り得るであろうか…何となれば諸々のものについて見るに.無常性が如何なる時にも存しないと言うわけではないのである…
5.生成がどうして壊滅とともに有り得るであろうか…何となれば.生と死とは同時のものでは有り得ないからである…
6.互いに共に在るとしても.また互いに離れて在るとしても.成立する事のない二つのものが成立する事がどうして有り得ようか…
7.壊滅には生成が有り得ない…また無壊滅にも生成は有り得ない…
壊滅には消滅は有り得ない…また無壊滅にも消滅は有り得ない…
8.ものを離れては生成も壊滅も有り得ない…
生成と壊滅とを離れては.ものは有り得ない…9.空なるものには.生成も壊滅も有り得ない…空ならざるものには.生成も壊滅も有り得ない…
10.生成と壊滅とが一つであると言う事は有り得ない…生成と壊滅とが別々のものであると言う事も有り得ない…
11.汝にとっては.生成も壊滅も直接に見られる.と考えられるであろう…しかしそれは.生成と壊滅とが愚かな迷いから見られているのである…
12.有❲存在するもの❳は有から生じない…有は無から生じない…無から無は生じない…無から有は生じない…
13.事物は自体❲自性❳からも生じない…他のものからも生じない…自体と他のものからも生じない…何から生ずるのであろうか…
14.有❲存在するもの❳を承認する人にとっては.ものが常住であると考える偏見と.ものが断滅すると考える偏見とが付随して起こる…何となれば.その有なるものは.常住であるか無常であるかの何れかであろうから…
❲法有の立場の人の主張❳
15.有❲の立場❳を承認している人にとっては.断滅と言う事も無いし.また常住と言う事も無い…
我々のこの生存と言うものは結果と原因との生起.消滅の連続であるからである…
❲龍樹の反駁❳
16.もしも結果と原因との生起と消滅との連続が生存であるならば.消滅が更に生ずる事は無いから.原因の断滅が随い起こる…
17.それ自体として実在するものが非実在となると言う事は.理に合わない…またニルヴァーナの時には.生存の連続は安らぎ(寂静)に帰するから.生存の連続は断滅する…
18.最後の生存が滅びてしまった時に.最初の生存が起こると言うのは.理に合わない…
また最後の生存が未だ滅び去らない時に.最初の生存が起こると言うのは理に合わない…
19.もしも最後の生存が滅びつつある時に.最初の生存が生ずると言うのであるならば.滅びつつある者は一つの生存であり.生じつつある者も他の一つの生存であると言う事になるであろう…
20.もしも今.現に滅びつつある者と.今.現に生じつつある者とが.倶に同時であると言う事が理に合わないのであるならば.これらの構成要素(蘊)に於いて死に.またその同じ構成要素に於いて生まれる…
21.この様な三つの時(過去.現在.未来)に渡って.生存の連続が在ると言うのは正しくない…三つの時の内に存在しない❲生存の連続❳が.どうして存在し得ようか…



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