VTuberは廃れた論について。なんかそういうデータあるんですか?

 動画再生数の低下などから、VTuberは廃れたなどと囁かれることもある今日この頃。しかし正直VTuberファンからしてみれば、全くそんな実感はないのではないだろうか。ただ感情論だけで切り捨てるのではなく、実際にデータの検証をしてみよう

 動画再生数について

 まず第一に、VTuberは廃れた論を唱える人たちが根拠にするのは動画再生数の低さだ。ただ、そもそも現在のVTuber界隈は生配信中心であり、動画がそれほど重視されていないという状態であるし、動画投稿だけで収益を上げようと考えているVTuber運営はほとんどいないはずだ。VTuberにとって重要なのは生配信でのスパチャや企業案件による収益である、……という点はまず前提のことだとしたい。

 しかし、それにしても輝夜月はLIVEのティザー映像などを除けば20万回再生は当たり前に維持している。例の一件から、やや低調気味には見えるが、ゲーム部プロジェクトも同程度の再生数を誇っていた。しかもゲーム部は輝夜月とは違い、ほぼ毎日投稿であったことも含めて驚異的だったと言えるだろう。

 また、以前の記事【『バーチャルさんはみている』はバーチャル世界の縮図だった】でも取り上げたが、現在HIMEHINAの『ヒトガタ』は545万回再生、キズナアイの『AIAIAI』は298万回再生と、その後も再生数を伸ばし続けている。再生数だけで考えても、VTuberのファンが20万人もいないなどというのはかなり乱暴な論理であると言えるだろう。

 ただ【ミライアカリがこの先生きのこるには】で触れたように、一部のVTuberの人気に陰りが見えるのは確かだろう。とは言え、リアルなYouTuberよりも運用コストのかかるVTuberは動画の再生数は元々重視されていないことは強調したい。

 生配信同時接続数について

 さて、現在VTuberの主戦場が生配信となっていることはすでに述べた。では、その同時接続数(同接数)は如何ほどのものになっているのだろうか。この点に関して、私は「ひよこクラブ - バーチャルYouTuberライブ配信速報」「総合リアルタイムランキング | 配信者勢いランキング」というサイトを参考にしている。ただあくまでおおよその数字であるという点に関しては留意したい。

 また、TwitterでよくVTuberに関するデータをグラフにしてくださっている方がいるので、紹介させていただきたい。

 このグラフによれば、.LIVE(どっとライブ)の月別平均同接数は概ね5000を超えていることが分かる。私の知る限りでも同接数が5000を下回ることは稀だ。
 ただし、それはいわゆる夜のゴールデンタイムの場合であり、お昼の時間帯での長時間配信が増え始めた今年に入ってから減少がみられるという点は納得である。最高同接数で言えば、ソロ配信で1万人に届くことは珍しいとは言え、7000人~9000人程度集めることは多くあるし、コラボ配信なら当たり前に1万人は超えてくる

 また、いわゆる箱推しに成功したとみられるにじさんじゲーマーズ(GAMERs)の存在も見逃せない。特に本間ひまわりや椎名唯華はソロ配信でも7000~1万人ほど集めることもある。しかし、.LIVEと比較すると、ややムラのある記録ではあるだろう。

 上記のような記録は、むしろリアルなYouTuberではほとんど太刀打ちできていないのが現状だ。はっきり上回っていると言えるのは加藤純一、幕末志士、コレコレくらいなものだろう。また、芸能人の本田翼も驚異の同接14万人を記録したことがあるが、こうした事例に関しては例外的なものとさせていただきたい。

 なお、このグラフの中ではホロライブの同接数が低めに見えるかもしれないが、これはあくまでYouTubeでの同接数を示したもののはずだ。ホロライブは現在ビリビリ動画(bilibili)で人気を博しており、このグラフでは凄さが伝わらないだろうという点は補足したい。

 コメント数・スパチャ額について

 コメント数・スパチャ額についても先のTwitterの方が示したデータを参考にさせていただきたい。このグラフによればやはりVTuberは廃れるどころかコメント数・スパチャ額はむしろ増加傾向にあることが分かる。

 ただ、これはあくまでVTuber全体の記録であり、にじさんじやホロライブがメンバーをどんどん増やし、勢いを増している影響が大きいだろう。

 なお、.LIVEに関しては1回の配信時間が短い傾向にあるうえ、そもそも規約上の関係などからスパチャ不可の状態で配信していることも多く、前2グループほどスパチャされているわけではない。
 ただ【これは、ヤバーシー!? アイドル部学力テストで見えた「企業勢」の本気】でも取り上げたアイドル部学力テストの動画では、前編で433,977円、後編で268,039円と合計805,138円(外貨含む)のスパチャをされたらしいことが「VTuberライブチャットアーカイブ」というサイトで分かる。

 ところで、リアルなYouTuberではスパチャだけで月に200万以上稼ぐ配信者もいるとされるが、2019年4月に200万以上のラインを超えたVTuberは4,564,111円の湊あくあ(ホロライブ所属)、2,391,635円の御伽原江良(にじさんじ所属)、2,296,746円の夏色まつり(ホロライブ所属)、2,069,077円の本間ひまわり(にじさんじ所属)、2,066,084円の神楽めあ(元ぱりぷろ)と5人もいる(いずれも外貨含む)

 加えて言うが、これはあくまでYouTubeでのスパチャ額であり、他の動画サイトでも活動しているVTuberならさらに稼いでいることだろう。こうした記録も、むしろリアルなYouTuberではほとんど太刀打ちできないはずだ。

 メディア展開について

 リアルなYouTuberでは真似しづらいVTuberの特徴としては、テレビ番組への出演やグッズ展開、ボイス販売などのメディア展開もあげられる。しかし確かにAbemaTV『にじさんじのくじじゅうじ』(『にじくじ』)やBS日テレ『のばん組』が2019年3月で終了したのは人気の陰りとみることもできるだろう。
 とは言え、『にじくじ』の終了理由はあくまでAbemaTVの『ウルトラゲームス』チャンネルの終了に伴うものであるし、キズナアイも『のばん組』終了後間髪入れずに、2019年4月には『月イチのてぇてぇTV』を始めている。

 また、【電脳少女シロの最大の強みは主役にもゲストにもなれることである】でも触れたが、電脳少女シロはテレビ朝日『サイキ道』『超人女子戦士 ガリベンガーV』の2本にレギュラー出演しているし、その他のテレビ番組でもたびたびゲストとして呼ばれている。やはりむしろ今が一番忙しいのではないだろうか

 さらに、ときのそら、猿楽町双葉、響木アオによるテレビ東京のドラマ『四月一日さん家の』のような展開も、むしろリアルなYouTuberには難しいことだろう。というか、テレビのバラエティ番組でも活躍しているYouTuberと言えば、ヒカキンくらいなものだと思う。VTuberは何かと色物扱いされやすいが、むしろそれが強みとなってリアルなタレントとの差別化に成功しているのだろう

 そのうえさらに、VTuberはソーシャルゲームとの相性も非常にいい。『禍つヴァールハイト』の電脳少女シロ、『アズールレーン』のキズナアイといったコラボはもちろん、『ラストイデア』の湊あくあ、『暁のブレイカーズ』のホロライブ(癒月ちょこ、大空スバル、白上フブキ、ロボ子さん、湊あくあ)などのコラボも成功とみていいと思う。なお『テクテクテクテク』の失敗については、VTuberとのコラボはあまり関係がないだろう。

 フィギュアや音楽CDなどのグッズ販売も、VTuberの強みであることは言うまでもない。すべて取り上げていてはキリがないほどなので簡単に触れるが、富士葵によるカバーアルバム『声 〜Cover ch.〜』がVTuber史上最多の10冠を獲得したことも記憶に新しいだろう。歌方面での活躍というのもVTuberに対して大いに期待できるところだ。

 総括

 ここまで見てきたうえでも、VTuberは廃れたとする論には疑問を感じるほかないが、実際にはVTuberファン総数は如何ほどのものなのだろうか。2018年末には下記のような分析が話題になった。いわゆる「国内VTuberファン総数35万人説」である。

 実際のところはなんとも言えず少々乱暴な締めくくりとなるが、上記の分析を概ね支持することで総括としたい。VTuberは廃れたとする論とは裏腹にVTuber市場全体としては今後も拡大していくことだろう

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