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南京事件の目撃者とされる宣教師の正体

江崎道朗先生によって現代語に翻訳され、出版されたばかりの『米国共産党調書』は、南京事件に関する議論にも光を当てることになりそうだ。

南京事件の目撃者がアメリカ人宣教師だったと聞けば、誰でもその目撃証言を信頼できる話として受けとめるだろう。しかし、その宣教師というのが実は、共産党の同調者だったと知れば、もしかしたら、その目撃証言は共産党のプロパガンダかもしれない、という疑念が生じることになるだろう。

日本の外務省が1939年に作成した『米国共産党調書』は、YMCAの執行幹部であり、共産党シンパサイザーとして知られる主要人物として、ジョージ・フィッチ(George Fitch)の名を筆頭に挙げている。この調書は、ジョージ・フィッチを「中国におけるYMCA書記長」と呼んでいる。この調書によれば、YMCAやYWCAは「その数百万名の会員間にキリスト教信仰を宣布すると言うよりは、むしろ共産党員および同調者等により運用される巨大な機関を形成する」団体だったのである。(p.127)

ウィキペディア日本語版によると、このジョージ・フィッチこそ、南京事件の目撃者とされる宣教師である。しかもフィッチは、この調書が作成された頃、南京事件を撮影したとされるフィルムを持って南京を脱出し、米国の各地でこのフィルムの上映会を開催し、南京虐殺を宣伝していたのだ。

さらにウィキペディアによると、ジョージ・アシュモア・フィッチは、上海のYMCAで働く前に、ニューヨークのユニオン神学校に入学している。『米国共産党調書』はこのユニオン神学校(Union Theological Seminary)について、「この神学校は共産党同調者養成所として赤色神学校の世評がある」と述べている。(p.122)

ここまで書いてから気づいたのだが、フィッチについては既に、江崎道朗先生が『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』(育鵬社、令和2年)のp.244以下に書いておられた。先に読んでおけば良かった。

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