リベラルアーツのススメ

お恥ずかしいお話なのですが、私は、昔から父親とはあまりそりが合わない方だったのですが、それでもいろいろな機会を与えてくれて、教えてもらったことにとても感謝しています。
彼が教えてくれたことの中で、今でも活きていることは、“リベラルアーツ(教養)”の大切さを教えてくれたことだったと思います。

とかく、“役に立つ”“実用的な”ものを身につけた方が、就職のときに
いい方にはたらくからなどと、親ならいいそうなものですが、彼は全くそういうことを言う人ではありませんでした。
むしろ、逆に私が、〇〇の資格を取りたいのだけど、などと相談すると
そんな勉強するくらいなら、もっと教養を身に着けた方がいいなどと
言っていたくらいでした。
学部の専攻を選ぶ時も、哲学科に入り学ぶことになったのも父の影響が大きいと思います。
学部時代は、カント、ハイデガー、ヴィトゲンシュタイン、ヒューム等の思想をいろんな教授について学び、最終的に専門的に学んだのはF・Aハイエクでした。
ハイエクを通じて、自由が持つ政治的・経済的・社会的大切さを学び、現在の私の思想的背景は、彼の考え方にとても影響を受けています。
ところで、そういった哲学を学んだことが、役に立っているのか?と聞かれると、正直、学んでいたこと自体は面白かったのですが、全く“役に立つ”とは思いませんでした。

その証拠に、その後大学院に進み、哲学を学ぶ訳ではなく、金融工学という
実に実学的な“役に立つ”と思われる学問を学ぶことになります。
もちろん、大学院で学んだことは、自分が今の仕事を選ぶことのきっかけの一つになっていますし、ファイナンス理論の考え方はビジネスパーソンにとって必須のスキルだとは思います。

一方で、ベンチャーキャピタルという仕事をしていくうえでは、哲学というか、リベラルアーツ的なものを学んだことが、大いに役立っていると思っています。

リベラルアーツ(教養)を辞書で調べてみますと、
「単なる学殖・多識とは異なり、一定の文化理想を体得し、それによって個人が身につけた創造的な理解力や知識」と定義されているが、まさにこれこそが、ベンチャーキャピタリストとして最も重要な素養なのではないかと思っています。

“一定の文化理想”とは、私の言葉で表すと“世界観”という言葉になるのですが、自分なりの世界観を持ちながら、創造的な理解力や知識を動員して、何が解決すべき課題なのかを決めること。そのアジェンダ設定能力が極めて重要だと思っています。

こうやって書いていると、ファイナンスやアカウンティングやリーガルやその他ビジネスの知識いらないのか?みたいなことを思われる方もいらっしゃると思いますが、決してそうではなく、そういった知識はもちろん必要ではあるのですが、それだけでは、ベンチャーキャピタリストとしての差異化は図れないないと思っています。ゆえに、リベラルアーツを身に付けて、自分なりの世界観を持つことが、ベンチャーキャピタリストとして違いを出していくためにも必要だと思っています。

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