AIイラストの絵柄酷似問題の解決の難しさについての雑感

ビビッドアーミーがイラストレーターの石恵氏に類似した絵柄を広告に用いた件は、無事に和解になり、使用が取り下げられました

ですが、絵柄の酷似に違法性があると判断されたわけではなく、「石恵氏と誤認されるイラストを使用したことで迷惑をかけたので、謝罪して取り下げる」という形になったようです

ビビッドアーミーがしたことは、倫理的にはよろしくないですが、違法性があるとまではなっておらず、明確に悪だと言えないのが、この問題の難しいところです。

少なくとも、今回の件で、法的にも倫理的にも明確に悪だと断罪できるのは、石恵氏に脅迫や侮辱的な発言をした人だけでした。

絵柄の酷似に違法性を認めるのは難しいことです。
AIイラストがやらかすことは、人間がやることの延長線上にあるからです。
AIイラストを規制しようとすれば、その規制は人間のイラストにも影響を与えてしまいます。

絵柄が似ているのが禁止されると、世の中にはドラゴンボール、ワンピース、鬼滅の刃に似た絵柄でマンガを描いている人もいて、彼らも違法ということになってしまいます。

世の中には何十万人もイラストレーターさんがいます。これだけ沢山のイラストレーターさんがいれば、意図的によ、偶然にせよ、絵柄が酷似する人は幾らでもいます。

AIの進歩と普及を回避できない中で、イラストレーターさんの権利をどのように保護していくかは、まだ答えの見えない問題です。
そんな難しい問題が、今回(完全に満足できる形ではないにしろ)無事に解決したことは喜ばしいことです。

AIイラストの利用方法を模索している人達も、おおむね今回の和解を喜んでいました。
ですが、AIイラストに反対している人の中には、それをダブルスタンダードだと怒っている人もいるようです。

「AIイラストを推進しているくせに、AIイラストの犯罪行為が取り締まられたことを他人事のように言っている!」というわけです。

彼らには、AIイラストで人間のイラストレーターを駆逐しようとしている過激派とAIイラストと人間のイラストレーターの共存を模索している人が、同じ「AIイラストを肯定している人」に見えているのでしょう

違法性の問えないAIイラストの問題は、法以外の組織的な交渉力や知名度や話題性を利用して交渉して解決するしかないと思われます。
AIイラストを違法にすれば、巻き添えをくらう人間のイラストレーターさんが多過ぎるので、将来的にもAIイラストが違法になるのを期待はできません

法律で白黒つけたがる人には納得できない話でしょうが、グレーゾーンの中で、根回しや交渉といった泥臭い人間らしさを駆使するのが当面の正解になると思われます