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原因と結果を錯誤させ、大衆心理を扇動するデータの悪用方法

いしかわnoteが非常に面白かったので、別視点で返歌する。

明日は野球の試合に出るため、かなり駆け足になるけどご容赦を。

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データというものは何かを説明・立証する際の根拠となりうる一方、いとも簡単に人を欺き、騙すことができる。

そして、マスコミ勤務の俺はデータで人々を煽って、世論を動かすことがとっても得意。

今日はいつもマスコミに踊らされ続けるみんなに、データの使い方の一例を超わかりやすく紹介しようと思う。

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2019年10月1日
有料にしました。

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5月末、勤務先の有料老人ホーム入所者の男性を暴行して殺害したとして、元職員の男が殺人容疑で逮捕された。

大きな事件が起きたら、事件の背景に迫るようなサイド原稿が求められる。この事件に社会性を見出すならやはり、「介護職員が入居者を虐待」という部分。漠然としたゴールは「介護業界の体質に問題がある」。

さて、とりあえず今回の事件のサイド原稿を書くつもりでデータを集めてみよう。

まずはデータの宝庫・厚生労働省のサイトを漁ってみる。

平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196989_00001.html)

「職員による虐待数が年々増えている」というデータがすぐ見つかる。

簡単に言うと、平成29年度に介護施設などの職員による高齢者への虐待があったと判断された件数は510件。調査開始の18年度から11年連続で増加している。

虐待が深刻な問題だ、と言う根拠にできる。

さて、じゃあなぜ増えてるのか。結論ありきで考えると、この数字と過酷な介護業界をつなげる根拠が欲しい。

いい感じのデータがこちら。

介護職員の労働組合「日本介護クラフトユニオン」平成28年度 組合員348人に対して実施したアンケート(http://www.nccu.gr.jp/topics/detail.php?SELECT_ID=201607140001)

虐待が起きる原因としては、
・業務の負担が多い 54.3%
・仕事上でのストレス 48.9%
・人材不足 42.8%
(複数回答)

あとは、専門家に取材し、言葉を借りよう。

「労働環境によってストレスが増加している」するだけでなく、

「介護の仕事が避けられ、介護に向かない人材にも頼らざるを得ない」

「今回の事件だけでなく、介護業界全体の問題だ」

 素材は揃った。

介護施設などでの職員による高齢者への虐待は増え続けている。背景には、過酷な勤務や低賃金による人手不足があるとみられ、専門家は警鐘を鳴らしている。

あとはこんな感じの書き出しで、データを根拠に並べていけば立派な記事の完成だ。

介護職員の虐待数は増え続けているその理由は人手不足により職場環境の悪化し、職員のストレスが増加しているからだ

今回の事件では多くの新聞・テレビが上記のような構成で報道した。

しかし本当は、この記事には意図的な情報排除、属人的要素の無視といった仕掛けが施されている。意図的に結果をすり替え、介護業界の現状を問題視する方向に持っていっている。

(今更ながら構成ミスったけど、このまま一筆書きいきます。)

【結果のすり替え】

先ほどの再掲。

介護職員の虐待数は増え続けているその理由は人手不足により職場環境の悪化し、職員のストレスが増加しているからだ

過酷な職場環境(原因)→虐待件数の増加(結果)

逮捕原稿の隣に載れば、あたかも今回の事件が「職場環境による犯罪だった」と見えない?

過酷な職場環境(原因)→今回の事件(結果)

ポイントは、最初から最後まで今回の事件との関係性を示す証拠は一切ないこと。

データは29年度のものなので当然、虐待数の増加に今回の事件は含まれていない

しかし、専門家のセリフを使って「今回の事件だけでなく、介護業界全体の問題だ」とつなぐことで、今回の事件も原因は職場環境にあると間接的に示すことが可能だ。

【意図的な情報排除】

さっきの厚労省のデータには、実は大きなポイントがある。

サイトを見てもらえばわかるけど、数字を読むのが苦手なみんなのために特別に要約してあげると、施設職員の虐待についての通報・相談件数も大幅に上昇している。

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(厚生労働省 平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果 より引用)

つまり、これまで見逃されてきた虐待が明るみに出ただけの可能性もあるわけだよね。

虐待の認知件数510件で過去最多

これはあくまで、自治内などの調査で虐待と判断された件数。ひょっとしたら、虐待の件数は本当は増えていないかもしれない

「高齢者虐待への意識が高まり、発見・通報される機会が増えたにすぎない」ことを否定する材料はない。

しかしニュースではその可能性は触れない。そこまで触れるとたかだが数十行の原稿では処理しきれないもん。

【属人的要素の無視】

で、そもそも論。ストレスが関係してたか云々なんて言うけどさ、いやいや、殺人事件やで?

これはもう、職場環境のストレスではなく容疑者のパーソナルな素質に起因するのでは?

社会的な原因なんて関係ない。こいつがすごく粗暴で悪いやつだった。

データでは属人的要素を排除しきれていない。

【ニュースの仕掛けと社会的意義】

・・・と、実はこうしたニュースには仕掛けがあることは多少は伝わったのではないかと思う。

読んだ人は、介護業界は労働環境や人材不足に苦しんでいると理解する。マスコミにより、問題意識を植えつけられる。

でもこれって、悪いことばかりではないと思うんよね。

一つの事件をきっかけに、マスコミが介護業界の現状にスポットを当てる機会になっている。

社会の仕組みが変わるのは、なにもないところで「最近の介護業界は問題がある!」と叫んでも誰も聞いてくれない。

しかし、こうした事件があればみんなが関心を持つ。そこで業界の抱える問題を知ってもらう。

議論が大きくなれば、法制度や社会の仕組みが変わることもある。

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データを意図的にいじくる人間は目的がある。出された情報をただ鵜呑みにするのではなく、仕掛けを見破るとその裏にある思惑も見えてくる、かもしれない。

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反応が良かったらまた書きます。面白かったら拡散よろしくです。

投げ銭はいらないけど、どうしても投げたい人はいしかわ君に。乗っかりネタだし。

アイキャッチ作る技術が欲しい。

たつのん(@tatsu_note)

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