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【ゲームレポート】個人対チームは準備の差 駒大の決勝リーグ初戦は完敗……アイスホッケー秩父宮杯

2019年5月26日
秩父宮杯第67回関東大学アイスホッケー選手権大会Bグループ決勝リーグ

駒大1ー4昭和大
得点者:茂内(駒大)、杉山、渡、石井2(昭和大)

一言で言えば準備の差。駒大の決勝リーグ初戦は完敗だった。

連動していた昭和大

第2ピリオドまで昭和大が押し込み、最終的に3点差をつけたこの試合。両者の差が表れたのは攻撃面だった。

昭和大の1、2点目はリバウンドを詰めたもので、3、4点目は押しこんだ状態でのブルーライン付近からのロングショット。得点シーンでは少しわかりにくかったが、昭和大の攻撃は連動していた。自分がどこに動くとマークがどう動き、その結果どこにスペースができるのか、そして誰がそこに走りこむのかまで共有できていたように見えた。デザインされた攻撃と言っていい。得点以外にも多くのチャンスを作りだしていた。
10:49には抜け出した選手がゴール前で少し右に流れると、追いかけた駒大DFがそれにつられたところで左横にパスを出し、走りこんだFWがフリーでシュート。
第2ピリオドに入った15:55にはゴール左にいたFW谷口開都がゴール左ポスト横で駒大DFを背負っていたFWにパスを出し、ゴール前へ。すぐにリターンを受けて、ゴール正面からフリーでシュートを放った。
19:46にも左サイドゴール近くでパックを持った谷口が対面のDFを引き連れながら右に移動。これに連動したのが右にいたDF田島和明で、逆に左側へ動くと、谷口とすれ違うタイミングでスイッチ。がら空きになったゴール前から、やはりフリーでシュートを放った。
いずれも駒大GK菊池亮介に止められ得点にはならなかったが、見事な崩しだった。

連動したこの攻撃に駒大は対応できなかった。正確に言うと、普通に押し込まれた状態では対応できていたが、連動のスイッチが入った瞬間全くついていけなくなった。よく4点で済んだと思う。

取材をしていないので、昭和大がどういう練習を行い、各自が意図をどの程度共有できていたのかはわからない。ただ、それが全くの即興ではなく、ある程度以上の再現性はあるのだろうということは3点目と4点目が同じ形だったことなどから想像がついた。DF石井克政のロングショットは見事だったが、ゴール前でしっかりスクリーンに入っていた選手の動きも見逃せない。

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4点目が決まって喜ぶ石井(右端)ら昭和大選手

頑張る、のみ

一方、駒大の攻撃はどうだったのか。
ブレイクアウトは昨年より向上しているように見える。ニュートラルゾーンまでは相手のプレスを上手く剥がして攻め込んでいた。こちらもお互いに意図を共有し、プレーできていたようだった。
だが、アタッキングゾーン(AZ)に入ってからはそれがなかった。正対した相手のマークをコンビネーションで外す方法は持ち合わせていなかったようで、打開する唯一の手段は頑張る、つまり個人でどうにか目の前のマークを振り切ることのみ。昭和大がチームで攻めたのに対して、駒大の攻撃は個人に頼る部分が大きかった。

駒大の良さはむしゃらにプレーするところだ。だが、逆に、それ一辺倒なのが欠点である。
駒大の選手レベルは2部校の中では比較的高く、がむしゃらにプレーすればある程度は打開することもできるだろう。ただ、効率は良くないし、相手のレベルが上がるほど難しくなる。

第3ピリオドは駒大が押しこむ展開となったが、昭和大は選手間の距離を近く保ってゴール前を固めた。たとえ1人抜いても、すぐ違う相手選手が対応。パワープレーからFW茂内貴宏のゴールで1点を返したものの、同数の状態では、攻めきれなかった。

昭和大に隙がなかったわけではない。35分過ぎにはAZ内左でFW矢口隼樹がパックを持ったまま前後左右に動くと、昭和大選手が皆つられ、右サイドのゴール前(バックドア)ががら空きに。35:20、DF川野翼がフリーで飛び込んだが、GK伊藤悠吾に防がれた。
このような場面を増やしたかったところだが、正直これは狙って相手を釣り出したというより、なんとかこじ開けよう、パスコースを探そうと矢口が動いた結果、たまたま生まれた隙のように見えた。再現性はなく、結局この後決定機と呼べる場面は見当たらず。SOGこそ24-27と3本差だったが、その中身はまるで異なっており、結果は妥当なものだったと言えるだろう。

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AZでの打開策がなかった駒大だが、FW渡辺信勝は相手の嫌がる動きをし続け昭和大の脅威となった

「アイスホッケーを勉強してほしい」

戦術とは多くの場合、試合前までに準備するものではないだろうか。試合の中で修正を試みても、練習である程度の準備がなければ改善はかなわない。つまりこの戦術の差は準備の差。駒大は攻撃の引き出し不足が響いた。

私はアイスホッケー経験者ではないので、引き出しをどう増やすのかの明確な答えは持っていない。だが、1つ頭をよぎったのが坂谷実季(18年卒、元マネージャー)、渡辺慎吾(19年卒、元主将)が共に後輩について語っていた「もっとアイスホッケーを見て、勉強してほしい」である。

21日深夜の氷上練習には1部強豪校の選手も複数参加。目についたのは川野が彼らにポジショニングや体の向き、スティックの向きなど細かくアドバイスを受けている姿だった。引き出しは急に増えるものではなく、1つ1つ積み上げていくしかない。全員が探求心を持ち、このような姿勢がチーム全体に広がっていけば、いずれ引き出しは増えていくだろう。秋のリーグ戦では違った姿を見られることを期待している。

次戦は6月2日。相性の良い上智大戦だが、荒れることが多く、展開は読みづらい。決勝リーグ初勝利を挙げることはできるだろうか。


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