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自国に大きなマーケットを持たない国の生存戦略から学ぶ、レバレッジのかけ方とグローバルな思考

はじめに

この文章を書き始めたときはアイルランドのダブリンにいた。
アイルランドはとても小さな国だが、首都のダブリンは世界のテック都市ランキングで12位にランクインしている都市だ。税制的な優遇があり、GoogleやFacebookの欧州拠点にもなっている。

現地のエンジニアの方々とAIやロボットをはじめとするテクノロジーやスタートアップについてディスカッションさせてもらったがとても刺激的だった。

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日本を出て2ヶ月の間、実際に各地を訪れながら自分が感じたことや、見聞きしたことをまとめた自分の備忘録を兼ね一つのとして、アイルランドのように自国に大きなマーケットを持たない国(物理的な広さではない)について感じたことを書き起こしてみた。

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私の方が君の国のトップに会える確率は高い

少し時刻はさかのぼって6月末、日本から最初の滞在先として選んだのはフィンランドの首都ヘルシンキだ。日本からダイレクト便があり、その後ロシアに訪れる予定があったのでヘルシンキからヨーロッパ入りした。
治安も良く、気候的に夏はベストシーズンで、とても過ごしやすい。
スタートアップについては、政府がとても力を入れていて、例えば起業する際に一定の資本金を準備すれば政府がその半分を給付してくれたり、低金利でのローンを組んでくれたりする。
コミュニティも多数あり、その1つがMaria01だ。

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この建物は病院の跡地がそのままスタートアップのインキュベーション施設となっており、多くのアクセラレーターやVC,スタートアップが入居している。

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彼らは自国のマーケットが小さいために、海外マーケットをターゲットにする前提でプロダクトを作っている。つまり、最初からグローバルが前提である。フィンランド出身の有名なスタートアップとしてはSupercellやアングリーバードで有名なRovioといったゲーム系スタートアップが知られている。

現地のアクセラレータSAMPO ACCELERATORのMikeと話したときに印象的だったのは「私の方が君の国のトップに会える確率は高いと思うよ」という言葉だ。フィンランドは国の機関を含めてとても小さい。小さい組織だからこそ信頼で成り立っており、信頼できる人を介して国のTOPですらたどり着けると。つまり、行政及びその指導者たちとの距離が近い。
そしてフィンランドのトップにたどり着けばそこから日本のトップに会えるというのが彼のロジックである。
1億2千万人分の1として日本の国内からたどるよりもこちらの方が早そうだろう?と言われた。確かに、人口550万人のフィンランドのトップも日本のトップも立場は同じだ。
このように、小さい組織ということをあえて活用して、大きなレバレッジをかけることは彼らにとって重要な武器となっている。

政府が包含されたスタートアップ・エコシステム

次に向かったのは度々IT立国として名前が挙がるエストニアだ。
ヘルシンキから船で約2時間でエストニアの首都タリンに行くことができる。

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エストニアもEU圏内なのでパスポートコントロールを通る必要はなく、船を降りたら違う国にたどり着いていた。ちなみにヘルシンキに比べて物価が安いためにヘルシンキから買い出しに来ているフィンランドの方々も見られた。
エストニアがメディア上で名前があがることの一つとしてe-Residencyが有名だろう。そのような先進的な政府の取り組みはスタートアップに対する姿勢からも見られる。例えばエストニアで開かれるLatitude59というスタートアップのイベントでは、エストニア大統領が参加しスピーチを行っている
なかなか日本ではスタートアップの1イベントに首相が来るイメージは湧かないが、それだけ行政が近く、国自体がスタートアップを活用しようという意思の現れだと思う。
そうした取り組みもあり、いくつかのエストニアのスタートアップは大きく資金調達に成功しており、Fintech企業であるTrasferwiseといったユニコーン企業も4社存在している。

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以下が、エストニアのスタートアップの資金調達やExitの現状で、Google Spread Sheetで公開されており、なんと失敗したリストも含まれているくらいオープンだ。

Funding, Failures & Exits of Estonian Tech Startups 2006-2019
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1csgtaNSl949AumfOBhwhD_S-o7wc1UIhKZdWUS4Vy-Q/edit#gid=5

このようにスタートアップと政府の距離が近く、政府自身が活用されることを望んでおり、包含されたスタートアップ・エコシステムであると感じた。

ちなみに、「エストコイン」は発行されていない。日本に限らず、多くのメディアはエストニアをIT国として報道し、「エストコイン」のような発行が決まっていないコインが、あたかも発行されることが決まったかのようなニュースまで生まれるくらい少々過熱気味だ。(が、それは国としての広報・マーケティング的にはブランディングに成功しているとも言える。)

マイノリティ言語だから英語に慣れる機会がある

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ここで言語についても触れたい。当たり前の話かもしれないが、現在のところ最も大きい市場である北米を狙うことやグローバルなコミュニケーションにおいて英語は必須である。
前述のフィンランド、エストニアでは英語はとても一般的に話されている。
エストニアの後に訪れたスウェーデンやノルウェーでも英語でのコミュニケーションにおいては特に不自由を感じなかった。
一方で、ロシア、フランス、スペインといった一定規模以上の言語圏を持つ地域においてはタクシーのドライバーの方などは英語でコミュニケーションをとるのが難しかった(逆に言葉が話せなくとも見知らぬ土地で値段交渉をせずに目的地に辿り着けたので、配車アプリほんと便利。。)
不思議に思って、いくつかの国で「なぜ母国語でない英語を話せるのか」を質問してみたところ、小さいうちから耳が英語に慣れているからだという。母国語がメジャーでない言語において、映画、ドラマ、アニメなどのコンテンツは母国語に翻訳されずに、字幕で見ることになり、それらの影響で話せる人が多い。ポルトガルのリスボンでも、オランダのアムステルダムでも同じ話を聞いた。

英語が通じることで様々な機会につながる。例えば近年リスボンはスタートアップが盛り上がっている。比較的過ごしやすい気候、治安が良いこと、物価が他の欧州に比べて安いことに加えて、英語で生活における最低限のコミュニケーションができることが理由として挙げられる。
ヨーロッパの中央に位置するオランダは、英語が通じてかつ税制的な優遇政策もあるためにBrexit後の欧州拠点として選ばれることが多い
マイノリティ言語だからこそ、小さいうちから英語に慣れる機会があり、それらの国々が選ばれている。

生存戦略としてのブロックチェーン

ロシア・北欧を周ったあと、欧州を鉄道で周った際には、スイスにも立ち寄った。チューリッヒ中央駅にある券売機でビットコインが買えることを確認したときは思わず「マジか!」と口走ってしまった。

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チューリッヒ近くにZugという市があるのだが、ここはスイスのクリプトバレーと呼ばれている。多くのブロックチェーン関連のイベントがあり、ブロックチェーンスタートアップが集まっている。
もともとスイスは歴史的にも金融テクノロジーを生存戦略として選んでいる。その延長線でブロックチェーンにも国として力を入れているのは明白で、現地のミートアップではその盛り上がりを直接肌で感じることができた。

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参加者のうちの1人は、今週からスイスに住み始めた。理由を尋ねると「ブロックチェーン事業をやりたいからだ!国鉄の券売機でビットコインが買える国なんてないだろう?」と興奮気味に回答が返ってきた。彼は元々暗号の研究をしており、Ph.Dも取得したスペシャリストだ。このようなこの業界の優秀な方々を隣国から呼び込むことに成功しているのは、スイスが生存戦略としてブロックチェーンを選択しているからだろう。

では、日本はどうだろうか?

日本のように、自国にマーケットが存在する国はどう戦うべきだろうか?そもそもイケてないのか?

まず、結論から言うとそんなことはない。むしろ自国にマーケットがあることは強みであると言える。ストックホルムでお会いしたVCの方が「日本はマーケットが大きいから、日本で成功してから海外に出るのが良い。そうやってるRakutenやRecruitを知ってるよ。」とおっしゃっていた。
日本で売上を作って、海外に出ていく例としてまさにRakutenはViberの買収やLiftへの投資をしているし、RecruitはIndeedを買収してグローバルなHR領域で攻勢をとり、海外に投資し続けている。
国内だけでマーケットが十分にあることは恵まれていることなのだ。(From US to Globalで成功したトレジャーデータも、日本での売上も同時に伸ばしていた)
一方でその国内マーケットに甘えていつまでも海外のマーケットを見ないことは思考停止だと思うし、何よりチャンスがあるのであれば、それを掴まないことはもったいないことだと思う。
PwCの調査による日本のGDP予測では、2050年は現在の3位から8位に転落している。
大きなトレンドとして、海外のマーケットを見なくてはならないという流れは確実にやってくる。(もはや国や海外というくくり自体も少しずつ薄くなっていくかもしれない)
「世界三大幸福論」を提唱した一人、フランスの哲学者アランは「悲観は気分で楽観は意思だ」と述べている。GDPの予測に対して批判や悲観をすることは簡単だ。しかし意思を持って前向きに(楽観的に)考えた方が結果的に良い結果を生むことができると思う。
そのために、自分たちの現状を正しく理解し、様々な国々から学び、適用しながら前に進むことが大事だ。

旅の学びを整理する ~ 学び共有タイムは良いぞ ~

ところで、話は脱線するが、「学び共有タイム」というのを定期的にやっているのだが、これが結構良い。
学びを共有しているので、相手から教えてもらうことも勉強になるのだが、会話の中で自分も体験したことを言葉として外に出すことで、純粋に整理になるし、新しい気付きも得られるのでオススメである。この投稿のいくつかの要素も、そうしたディスカッションから出たものだ。貴重なディスカッションパートナーの@shunsuke00にはとても感謝している。

終わりに

このような充実した訪問を続けれらているのは、ご紹介を通して現地の方々とご縁をいただけるからだ、本当に有り難い。
改めて感謝を申し上げるとともに、逆に僕ができることであればいつでも力にならせてもらいたい。

これから

先日までウクライナにおり、昨日までベラルーシにいた。歴史的な経緯から生存戦略としてIT産業を選択した東欧諸国はとても興味深かったし、多くの可能性を感じた。こちらの話は次回以降に譲るとして、これからはアフリカ、南アメリカなどに訪れるつもりだ。また別のタイミングで今回書ききれなかった学びはまとめてシェアをしたいと思っている。

都度訪れた国々での気づきはTwitterでつぶやいたりしているので、感想やフィードバックなど、雑に絡んでもらえると次も書くモチベーションが上がるので、つぶやいてもらえると嬉しい。


というわけで、ラーニングアニマルのように次の国でも学びを得てきます!

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コネヒト株式会社 共同創業者 / 名刺アプリ「Eight」の立ち上げをしたり、起業して「ママリ」を開発してきました。 /「Pythonによるはじめての機械学習プログラミング」共著者 / 博士(工学)

コメント2件

変な話ですが、東南アジアのショップやマッサージの人は生きてくために片言の日本語を話せたりします。やはり、発展途上国で生きてくためには語学、ITを必死で学ぶ必要があるでしょうね。リープフロッグで新しい技術にもどんどんチャレンジする、しないといけません。日本はよくも悪くも完成された素晴らしい国であるため、英語もITもできなくても生きてはいけます。今は笑
コメントありがとうございます。
観光ショップの方などは語学堪能な方が多く驚きますよね。
おっしゃる通り、「今は」という現状を正しく理解した上で次の一手を打たないといけないと思っています。
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