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「会計の未来」を示し続けるアメリカの会計ソフト企業 Intuit

はじめまして、株式会社マネーフォワード執行役員 提携/M&A戦略担当・株式会社クラビスの代表取締役CEOを務めている菅藤と申します。

先日、マネーフォワード代表の辻、執行役員の竹田、同グループであるナレッジラボの国見と行った対談記事を公開しました。

対談でも語っているように、マネーフォワードはプロダクトを通じて、データとつながり、活用し、お金を動かし、企業や人に勇気を与えることで、会計の未来を変えていくのが大きな役割です。

その中でぼくが注力していることとして、「日本のちょっと先の未来」を推察するため、先駆者である海外のFinTech企業について調べたり、会計事務所を訪問しインタビューをさせていただいています。

そこで今回は海外から会計を学ぶ意味や、ぼくが特に参考にしたいと思っているアメリカの会計ソフトを代表するIntuit社について、簡単にまとめてみました。

海外から会計を学ぶ2つの意味

まず、海外から会計を学ぶ意味は、大きく2つあります。一つは、元々会計という概念が欧米で生み出されたものであるということ。アメリカやイギリスから先行して会計のサービスが出てくるのは、会計の歴史的に当然とも言えます。ぼくもヨーロッパやアメリカの会計事務所には積極的にインタビューに行ってトレンドを追うようにしています。

もう一つは、キャッシュレス先進国から学べる点があることです。

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[引用:https://www.mckinsey.com/industries/financial-services/our-insights/attacking-the-cost-of-cash]

これは縦軸がキャッシュ(現金)利用率、横軸が年間のキャッシュ(現金)利用率の変化を示したグラフです。上に行くほど現在キャッシュレスが進んでおり、右に行くほどキャッシュレス化のスピードが早いということを表しています。

最もキャッシュレス化が実現し、さらなるキャッシュレス化が進んでいる最上位のグループには、北欧やエストニア、イギリスなどが並んでいます。次点のグループには大国アメリカがおり、アジア内でキャッシュレス化をリードする韓国も並びます。

日本が属しているのは上から3つ目のグループ。キャッシュレス推進協議会の発表によると日本のキャッシュレス比率は約2割(2017年)ですが、経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」にてこれを4割まで押し上げる目標を掲げているため、今後個人も法人も会計のデータ利用が進む見込みです。

日本にとってベンチマークになるのは右上の2つのグループに位置する国ということになります。中でも、北欧などの国に比べて圧倒的に市場が大きいイギリス、アメリカが参考にできることが多そうです。

Intuit社は、そのアメリカにおいて会計ソフトのトップシェアを持つ企業です。

Intuit Fourth Quarter Revenue Up 15 Percent, Full Year Up 13 Percen
https://www.businesswire.com/news/home/20190822005594/en/Intuit-Fourth-Quarter-Revenue-15-Percent-Full
>Intuit第4四半期の収益が15%増、通年で13%増
The 50 best workplaces for innovators
https://www.fastcompany.com/best-workplaces-for-innovators/2019
>イノベーターにとって働きやすい会社ベスト50に選出

このように英語圏では注目されるニュースが複数ありますが、日本においてその存在はあまり多く知られてはいません。会計、SaaSに関わるならウォッチしておくべき企業の一つといえると思います。

アメリカで圧倒的な存在の「Intuit」

Intuitとは
・創業1983年
・時価総額世界21位(2019.09現在 約7兆円
        ・約6000億円の売上に対して時価総額が7兆円は異例
・「アメリカで最も信頼できるブランドトップ10」にランクイン

アメリカの企業を訪ね「会計ソフトは何がいい?」と問うと「Quickbooksに決まってる」という答えが高確率で返ってきます。アメリカ国内の中小企業におけるシェアはなんと80%以上。ここまでのシェアを握れているのは、ユーザーからの絶大なる信頼があるからです。

Intuitへ改善リクエストを出すとほぼ1年以内に対応してくれるため、ユーザーには「私たちのことを理解してくれている」という認識があります。ユーザーを理解し、信頼関係をつくる努力を長期的に続けてきた結果、圧倒的な存在感をつくりだしているのです。

勝つために変化してきた歴史

アメリカも日本と同様、会計ソフトがインストールからオンラインへ移り変わる動きがありました。その中でIntuitは、1990年代というかなり早期からオンライン化に踏み切っています。当時インストール版の改良をストップしてまで、オンライン型を推進させるジャッジを行いました。

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[引用:https://www.slideshare.net/investorsintuitinc/oct-4-2017-ir-marketing-finalv2]

その結果、インストール型の売上はそのまま、オンライン型で新たな顧客獲得に成功。現在ではオンライン型がインストール型を超え構成比が逆転しました。新たな顧客創出にチャレンジしたことにより、アメリカ国内での圧倒的なシェアを獲得することができたのです。

オンライン型に振り切ったとき一時的にROIが悪くなり業績が悪化しましたが、後にきたクラウド化の波に後押しされ、イノベーションのジレンマを乗り越えることができました。インストール型とオンライン型では開発言語も異なるので、おそらく社内での衝突も多々あったことでしょう。それを強い経営の意思決定で乗り切ったことが伺い知れます。

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[引用:https://www.slideshare.net/investorsintuitinc/fy17-annual-shareholder-meeting-final]

加えてIntuitは、成長したい個人・法人を広く支援する方針をとっています。オンライン型が導入されやすい新設法人の営業への注力、そして最も象徴的なのは世界中のユーザーがビジネスティップスを学びに訪れるイベントQuickBooks Connectです。このイベントは、アントレプレナーや成長したい企業を応援したい彼らの想いをまさに体現しているといえます。

マネーフォワードのちょっと先の未来

マネーフォワードも国内では早期からクラウド型の会計ソフトを展開してきました。これから政策によってキャッシュレス化が進み、アメリカの環境に近づいていきます。お金の流れがクラウド化していく方向性に間違いはありません。

また、マネーフォワードも会計データを使った個人・法人の成長のサポートにさらに注力していきます。

冒頭で紹介した対談記事でも「これからは会計の概念が変わる」という議論を展開しました。従来の会計ソフトは主に取引記録を会計データに変換することを役割としていましたが、これからは会計データを利用した先にある経営分析や成長のサポートに提供価値がシフトしていきます。

マネーフォワード クラウドは2018年にManageboardがジョインしたことで、その機能を強化することができました。さらに、スマートフォンから経営データやAIによるアドバイスを簡単に呼び出せるバーチャルアシスタントのようなプロダクトの検討も始めています。

Intuitは昨年のQuickBooks Connectで「QuickBooks Assistant」のデモを発表したことで話題となりましたが、同様にマネーフォワードも会計データを活用したサービスのインターフェースにも力を入れていきます。

5Gやデバイスの変化とともに、正しく会計データを保持していることが事業スピードに直結する時代がやってきます。データ化の部分でまずネックにならないよう、早期からのクラウド化で個人・法人をサポートできるような体制を築いていければと思います。


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