見出し画像

カスタマーサクセスを仕事にするワクフリという会社の話

SaaSはまるでゴールのないマラソン

クラウドソフトウェアの販売のようなSaaS事業は、作ってリリースすることがゴールではありません。リリースしてようやくスタートラインに立つことができて、お客さんに継続的に利用してもらう状態を目指します。そういう意味では、ゴールのないマラソンのようなビジネスモデルです。

継続的に使ってもらうためには、お客さんのことを深く理解しなくてはなりません。ぼくらのように中小企業がビジネスで使うソフトウェアを販売している場合は、お客さんの日々の現場を理解することが大事です。

そうしたソフトウェアの導入支援を行う組織のことを、カスタマーサクセスと呼んだりします。かつてから存在するカスタマーサポートとは、お客さんの質問に答えるための受動的な支援チームですが、カスタマーサクセスはこちらから働きかける能動的なチームなのです。

ソフトウェアベンダーの限界

一方でぼくらのようなクラウドサービスベンダーのカスタマーサクセスには限界があります。自社サービスについては手厚く支援できても、その範囲を超えると手に追えなくなるのです。

例えばお客さんが営業と人事というふたつの経営課題を同時に抱えていたとします。ひとつのソフトウェアで解決できれば良いのですが、そんな万能なものは存在していません。そうしたときに、お客さんはふたつのソフトウェアベンダーに別々に相談しなくてはならないのです。ここにソフトウェアベンダーのカスタマーサクセスの限界があります。

中立的なITコンサルティングの必要性

マネーフォワードのグループには、福岡に拠点を構えるワクフリという会社がありまして、ぼくも取締役として経営に関わっています。事業は「中小企業のためのITコンサルティング」です。MFグループではありますが、立ち位置は中立的です。お客さんにとって本当に必要な解決策を提供するのがコンセプトです。

ワクフリの仕事は中小企業の経営者の課題をヒアリングして分解するところからスタートします。経営者の頭の中でモヤモヤしていた課題を見える化することで、何が原因か一緒に突き止めます。次にそれに合わせて最適なクラウドツールを提案し、導入するまで何度も通って支援するのです。

ITコンサルティングの難しさ

社内にITの専任者を設けていない中小企業にとって、ワクフリは頼りになる存在です。ところが、彼らのような会社はあまり多くありません。欧米では会計事務所がIT支援まで守備範囲を広げることで、そのポジションを担うケースが増えていますが、日本ではそうした動きもあまり起きていません。

原因はその難易度の高さにあります。中小企業といっても、規模が小さいだけで業務は多岐にわたっています。業種によって課題もまちまちです。コンサルタントの仕事はそうした幅広い業務知識が前提となります。

次に、課題にマッチするソフトウェアを提案するためには、最新のIT事情を熟知している必要があります。要するに、中小企業の業務とITの両方を理解しないとITコンサルティングは成立しないのです。

また、このビジネスの難しさは、サービスの標準化にもあります。経営者の様々な課題を聞いていると、うっかり御用聞きになってしまいます。大企業なら潤沢なIT予算があるので、オーダーメイドのシステムを作ることができますが、予算のない中小企業には、基本的には既存のソフトウェアパッケージを導入することになります。要するに、ソフトウェアに合わせてお客さんの業務を再設計する必要があるのです。

金額的な問題もあります。中小企業でも依頼できるような料金でコンサルティングサービスを提供しなくてはなりません。つまり、経営を成り立たせるためには、小さな単価で多くの案件数を持つ必要があります。お客さんごとの個別の要望を丁寧に聞きながら、案件を効率的にこなしていく組織を作らないといけないのです。これは、なかなか高度な経営能力が求められます。

ITコンサルティングの展望

ワクフリはまだ創業2年目の若い会社ですが、高島社長を中心に、猛烈な勢いで中小企業の課題解決に関するノウハウが溜まっています。ひとつの案件をこなすごとに経験値が蓄積され、それが次の提案に活かされていくからです。

最近ですと、例えば軽減税率に伴う小売店のクラウドレジ導入支援や、働き方改革による労務環境の整備などが旬なテーマです。こうしたテーマで悩んでいる中小企業の経営者は数多くいますが、ワクフリのノウハウによって確実に解決へと導くことができます。

今後SaaS業界は間違いなく成長していきます。それに伴って中小企業とのギャップはますます大きくなるでしょう。ここの橋渡しをするITコンサルティングは大きな市場になっていきます。ワクフリはこの市場のパイオニアとして成長していけたらと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?