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サークル・ワルツ/ドン・フリードマン

ピアニスト、ドン・フリードマン1962年録音リーダー作『サークル・ワルツ』を取り上げましょう。

録音:1962年5月14日
スタジオ:プラザ・サウンド・スタジオ、ニューヨーク
プロデューサー:オリン・キープニュース
エンジニア:レイ・ファウラー
レーベル:リヴァーサイド

(p)ドン・フリードマン  (b)チャック・イスラエル  (ds)ピート・ラロカ

(1)サークル・ワルツ  (2)シーズ・ブリーズ  (3)アイ・ヒアー・ア・ラプソディ  (4)イン・ユア・オウン・スイート・ウエイ  (5)ラヴス・パーティング  (6)ソー・イン・ラヴ  (7)モーズ・ピヴォティング

サークル・ワルツ/ドン・フリードマン

 多作家ドン・フリードマンの代表作『サークル・ワルツ』は彼の2作目のリーダーアルバムに該当します。4作目までを名門リヴァーサイド・レーベルからリリースしました。
フリードマンのリリカルで知的な演奏は一聴ビル・エヴァンスのプレイに影響を受けている、似ていると感じさせます。
良く聴けば演奏の展開方法やタイム感、コードワークには異なったアプローチを確認する事ができ、主にピアノタッチに類似性があるために相似を認識しますが、音使いやアイデアには寧ろバド・パウエルからの影響が認められます。
 対位法や対旋律を駆使したピアニストとベーシストの関係性には確かにフリードマン、エヴァンス両者の類似性を感じますが、60年代初頭には既にこのようなムーヴメントが存在しており、彼ら二人だけの演奏技法ではなかったように感じます。

 フリードマン、エヴァンス両者が所属したリヴァーサイド・レーベルでの録音は、ブルーノートやプレスティッジ、インパルスが常用していたヴァン・ゲルダー・スタジオ〜ホームグラウンドの如きレコーディング・スタジオを有さず、幾つかのスタジオを使用して録音しており、またスタジオ毎に異なったエンジニアを雇うシステムで運営したので、ヴァン・ゲルダー・スタジオのオーナーにして名エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダー、彼の様な専任技師は不在でした。
そのため明確なレーベル特有のレコーディング・サウンドは存在しない筈なのですが、録音の仕上がりにはかなり統一感があります。プロデューサー、オリン・キープニュースのテイストからでしょう、バランス感、楽器の音像、個々の楽器の音色までエンジニアに事細かに要求し、それらを把握した上でエンジニア達はレコーディングに臨んだのではないかと想像しています。
 元来同傾向のピアノの音質の二人がリヴァーサイド・レーベル=キープニュースの音楽フィルターを通して録音され、我々リスナーは彼らの初期の録音でのピアノの音色が刷り込まれています。
彼らのピアノの音質同一性にはレーベルの個性も影響していると思います。

ビル・エヴァンス

 フリードマンよりエヴァンスのタッチの方が強く、初期は時折割れ気味に録音されるほどの強烈さでした。1拍の長さもエヴァンスの方にたっぷり感を覚え、フリードマンはタイムに於いてややライトでラフな、表現全般にも言えますが優しさを感じさせる打鍵を確認出来ます。人柄も穏やかで晩年は好々爺であったと想像しています。

 テナーサックス奏者マイケル・ブレッカーと話をしていて、彼の長女ジェシカがジャズピアノを習い始めたと言うので、誰に師事しているのかを尋ねたところ、「ドン・フリードマンに習っているんだ。彼は僕の自宅の近所に住んでいるので、娘が通いやすい」と教えてくれました。
マイケルの自宅のあるヘイスティングス・オン・ハドソンはニューヨークでも高級住宅街として知られている地域です。マイケルはポール・サイモンの長期に渡るツアーのお陰でこちらに居を構えました。
マイケルと仲の良いジョン・ パティトゥッチや一時期ボブ・ミンツァーも住んでいたそうです。

 多くの名作を残したリヴァーサイド・レーベルは64年に倒産しますが、キープニュースは続いてマイルストーン、その後ランドマークとレーベルを設立、ジャズアルバムを生涯に合計250作以上制作します。
ジャズレーベル運営に苦難が伴う事は容易に想像出来ますが、彼は果敢に立ち向かいます。ジャズをこよなく愛するプロデューサーにとって良い作品を制作するのは、この上無い喜びが伴うのでしょう。

 余談ですがジャズレーベルのオーナーやプロデューサーたち、ブルーノートのアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフ、ヴァーヴのノーマン・グランツ、ストリーヴィルのジョージ・ウェイン、プレスティッジのボブ・ワインストック、コンテンポラリーのレスター・ケーニッヒ、インパルスとCTIのクリード・テイラー、そしてオリン・キープニュース。
彼ら全員ユダヤ系アメリカ人です。
またブロードウェイに由来するジャズスタンダードの殆どの作曲家然り、知的センスに溢れるミュージシャンたちも同様、そしてジャズレーベルのプロデューサー、ユダヤ系アメリカ人のジャズに於ける貢献度を再認識します。

オリン・キープニュース

 フリードマンは1935年5月4日サンフランシスコ生まれ、エヴァンスは29年4月16日ニュージャージー生まれ、エヴァンスの方が6歳年上です。両者の初リーダー作の製作年齢がほぼ同じ、エヴァンスの『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』が27歳、フリードマン『ア・デイ・イン・ザ・シティ』が26歳の時、アルバム自体の売れ行きは決して芳しくありませんでしたが、二人はセンセーショナルなデビューを果たしました。
 ベーシストのチョイスに同一性を感じます。61年7月6日、交通事故で夭逝した天才スコット・ラファロを両者ほぼ同時期に迎えていますが、フリードマンとの録音は後年発掘された形での61年レコーディング『メモリーズ・フォー・スコッティ』、ドラマーにはピート・ラ・ロカを迎えての演奏が唯一残されています。
 同一内容でアルバム名義をラファロとして発表されたヴァージョン『ピーセズ・オブ・ジェイド』のリリースもあります。幻のベーシストの名を掲げて発表するのは売り上げを考慮するレコード会社として当然のことでしょう、しかしあくまでリーダーはフリードマンです。
本作『サークル・ワルツ』収録のアイ・ヒアー・ア・ラプソディが選曲されていますが、ベーシスト違いによる同一曲がどの様に料理されるのか、良い比較になります。
因みに録音状態が異なるのが主因ですが、ここでフリードマンが弾くピアノの音色からエヴァンスの類似性を感じるのは困難です。

ピーセズ・オブ・ジェイド/スコット・ラファロ

 一方エヴァンスの方はラファロと『ポートレイト・イン・ジャズ』『エクスプロレーションズ』、ニューヨークの名門ライヴハウス、ヴィレッジ・ヴァンガードでの名演奏を収録した『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』『ワルツ・フォー・デビー』を録音、これら4作はモダンジャズにおけるピアノトリオ演奏の方法論を大胆に改変します。

スコット・ラファロ

 ラファロ亡き後は示し合わせたようにフリードマン、エヴァンスの両者がチャック・イスラエルを起用します。厳密に言えばフリードマンはラ・ファロ夭逝の1ヶ月前61年6月12日録音『ア・デイ・イン・ザ・シティ』で既にイスラエルをメンバーに迎えています。想像するにエヴァンスとの演奏が忙しくなったために、フリードマンはラファロを手放さざるを得ない形で、類似したスタイルのイスラエルを代替起用、そのままレコーディングに臨みイスラエルが留任し、2作目である本作『サークル・ワルツ』が制作されます。
 エヴァンスの方は音楽的に最適なパートナーであった若き才能溢れるベーシストを突然失い、数ヶ月間レコーディングやライヴ活動に携わる事が出来なかったそうです。茫然自失状態だったのでしょう、それだけエヴンスもラファロと納得の行く演奏を行なっていた訳です。
その後プロデューサーのキープニュースに説得される形でシーンに復帰し、61年12月フルート奏者ハービー・マンとエヴァンスのコラボレーション作品『ニルヴァーナ』で、イスラエルと初共演します。

ニルヴァーナ/ハービー・マン&ザ・ビル・エヴァンス・トリオ

ここで出会った自分の音楽性に合致するベーシストを、エヴァンスは66年2月頃まで起用し、数多くの作品を録音します。
 こうしてイスラエルはエヴァンスの専属となり、フリードマンは多忙となったベーシストを又もや手放さなければならなくなりました。以降フリードマン、ひょっとしたらレギュラー・ベーシストを決め(られ)なかったのかも知れません、レコーディングではその都度リチャード・デイヴィス、ジョージ・ムラーツ、マーク・ジョンソン、ロン・マクルーア達を起用していました。

 米国人以上にフリードマンの演奏を日本人は愛したように感じます。日本のレーベル制作で10作品以上リリースされ、日本人ミュージシャンとも共演を重ねたゆえです。

チャック・イスラエル

 ラファロやイスラエルのピアノトリオに於ける演奏形態ですが、ポール・チェンバースに代表されるオーソドックスにルート音をサポートするウォーキング・ベース、言わば本来の役割はもちろん、ピアノソロに対しての対位法的アプローチにその本領を発揮します。ピアニストが右手の弾くライン、左手のコードに対し一聴関連性の無きが如しラインを提示することにより緊張感のある音空間を生じさせ、ソロイストであるピアノ奏者を刺激し次なるアイデアの暗示を促します。
 同時期に現れたチャーリー・ヘイデンのベースプレイにも斬新なスタイルを確認できますが、ラファロ、ヘイデンの二人がかつてのルームメイトであった事は素晴らしい邂逅です。連日連夜彼らはベース奏法、ビート感、リズム、ハーモニー、インタープレイについて、またギグの取り方に始まり、生活や人生について、当時二人とも20代半ば、ガールフレンドの話も含めて多くを語り合ったに違いありません。
具体的にどの様な内容を語り合ったのか、想像するだけでワクワクしてしまいますし、もしそのアパートが現存しているのなら、あらゆるベーシストのメッカになるのは間違いないでしょう。

ドン・フリードマン

 それではアルバム内容について触れて行きましょう。
 1曲目表題曲サークル・ワルツ、フリードマンのオリジナルです。仄暗さと何処かミステリアスさを感じる佳曲、本作ジャケット掲載絵画の雰囲気と合致していますが、こちらはフレッド・シュワブと言うニューヨーク出身の漫画家による作品です。
 シュワブは第二次世界大戦前から漫画家として数多くのユーモラスな作品を手掛けました。大戦中はフォトジャーナリストとして活動し、その後47年から79年までニューヨークタイムズのグラフィックデザイナーとして働きました。
職業人として激動の時代を目当たりにしたゆえでしょう、ユーモアをもって絵を描きつつも端々に恐怖やおぞましさが滲み出てしまう、若しくはそれらを忘れないようにと努めているがゆえの表出のように感じます。

 ユニークなシンコペーションが施されたテーマは現代の耳をもっても斬新さが光ります。
微妙にピアノとベースのシンコペーションの位置が食い違っているのは、難易度の高いシカケをベーシストがピアノの演奏を聴きながら合わせているため、重くなっているからです。
テーマを二度繰り返す初回にそれが表われているのですが、繰返し時には無事リカヴァーされています。シンコペーションを用いたアンサンブルは、プレイヤー自身がリズムを確実に感じて音を発しなければ演奏上の合致は得られません。一瞬の躊躇ちゅうちょがリズムをルーズにさせます。
 ソロの先発はイスラエル、ウッディな深いトーンと的確なピチカート、彼の力量を紹介するに相応しいプレイです。
ピアノのバッキングが縦横無尽に入ります。この時点ではベースソロ主体で対旋律が交わる対位法が行われますが、ベースソロが終了するとピアノが主体となった対位法が始まります。イスラエルは自分のソロ時とは明らかに異なるアプローチを発揮、フリードマンのプレイに纏わりつくが如くプレイし、ラロカがブラシからスティックに持ち替えてからはソロの本編と解釈したか、ウォーキングが中心のサポートとなりますが、依然スリリングなベースワークを継続させます。
ソロが収束に向かいドラムは再びブラシに持ち替え、かなり音量を落としラストテーマに入ります。
 冒頭のテーマに於けるシンコペーションの難易度が再び脳裏をよぎったのか、イスラエルは若干ためらい、危なげにリズムのシカケをプレイします。
繰り返し時にはリタルダンドしたためにリズムの合わせは自然に行われました。

 2曲目シーズ・ブリーズはフリードマンのオリジナル、アップテンポのスイングナンバーです。ペダルトーンを用いた可憐なイントロに引き続き4度のインターヴァルを主体としたテーマが始まります。いくつかのパーツから成る佳曲ですが、そのブレンド感の妙にフリードマンのセンスが光り、そしてサポートするイスラエル、ラロカたちの的確なカラーリングと合わさり、結果トリオの真骨頂を見る事が出来ます。
 ソロはフリードマンから、オントップなビートの位置にいるイスラエルが3者をリードします。ラロカのドラミングはトップシンバルの径が小さめ、かつ乾いた音色が少人数編成のトリオに相応しく、パーカッシヴでシャープなリズムを刻み、スネアのフィルイン、バスドラムも様々なアイデアを繰り出します。
確実なリズム隊を携えたフリードマンの知的でリズミックなラインは、脱力した打鍵により実にスムーズに繰り出されます。
一本調子にならないように巧みに構成されたソロのコードチェンジ、構成は狙い通りです。何とスインギーな展開でしょうか!三者の一体感にも手に汗を握ります。
 その後は全くナチュラルにベースソロに引き継がれ、フリードマンはソロ中のイマジネーションが未だ継続していたのでしょう、バッキングのアイデアは無尽蔵の如く表出します。多彩な表現を聴かせるイスラエルの演奏に引き続き、ラロカとの8小節交換が行われます。ピアノの繰り出すフレーズに呼応しつつ、サムシングニューを提供しようとするラロカ、時折聴こえる声はラロカ自身が発したものでしょう。
当時売り出し中、新進気鋭のジャズドラマーには、従来のドラミングスタイルを乗り越えんとするパッションを感じます。
ラストテーマへもごく自然に移行し、エンディングは冒頭に演奏されたセクションを今一度プレイしFineに至ろうとします。

 3曲目アイ・ヒアー・ア・ラプソディ、フリードマンにとっては十八番おはこのナンバー、はじめにルバートでピアノソロによるテーマが1コーラス演奏されます。サビの部分ではボレロの様な、ラテン風なグルーヴを交え、楽曲の構造を細部に至るまで理解した上での表現を見せます。その後リズムが提示されピアノソロが始まります。メロディ奏、アドリブソロに入魂振りが伺え、素晴らしい演奏を展開しています。
 テーマを含めソロの毎コーラスに8小節のヴァンプが施され、ブレークによるピックアップソロが行われます。ここにも演奏がルーティンに陥らないようにするフリードマンの、知的で音楽的にオシャレな工夫が成されています。
ここでは特に、楽曲に対する豊かなイメージと確固たる音楽観、共演者への信頼感、脱力しながらも自己表現を確実に行いたいと言う執念を見せています。
そして本テイクでは他の曲以上にエヴァンス的なアプローチ、リック、の取り方を感じます。
ベースソロに入ってからも、自身のソロ時に着火した炎が未だ燃焼し続けたのでしょう、フリードマンはリズミックなフレーズを連発します。
ここでも同一フォームで2コーラス行われ、ピアノの興味深いバッキングが音楽に一体感を持たせるべく適宜挿入されます。
ベースソロの最後はスネアによるピックアップソロが入り、引き続きドラムと8小節交換が始まります。ここでも同一フォームで演奏されますが、通常付加されないヴァンプにイレギュラーさを覚え、メンバーは巧みに利用して盛り上がっています。
熱く燃えたフリードマンはかなり強い打鍵でドラムとトレードを行い、応えるラロカはクリエイティヴな譜割りのフレージングを聴かせます。
2コーラスのヴァース後ラストテーマへ、最後はヴァンプをリタルダンドしてFineとなります。

 『ピーセズ・オブ・ジェイド』収録、同曲のラファロとの共演ヴァージョンはややテンポが遅く、ソロピアノによるイントロやヴァンプも用いられていません。その分シンプルに楽曲を演奏しています。
ラファロのベースに刺激を受けたのか、フリードマンの16分音符を駆使したアグレッシヴなソロが印象的です。録音の関係かも知れません、ラロカの叩くトップシンバル音にサステインの効いた余韻のあるレガートを感じます。
 ベースソロは彼の個性がかなり出ていると思いますが、ピアノが一切バッキングを行っていません。ここでは是非ともバッキングを繰り出して、ラファロとのコラボレーションを聴かせても貰いたかったです。
ラロカとの4小節交換に於けるフリードマンは絶好調、スピード感あふれるフレーズを繰り出しています。途中にフィンガースナップが聴こえました。多分フリードマンが鳴らしたものでしょう、タイムの良いスリリングなメンバーのプレイに楽しくなり、嬉しさの余り思わず鳴らしたのでしょう。
 ドラムソロのフレージングはサークル・ワルツの時よりもオーソドックスさを感じました。多くのドラマーが用いるフィリー・ジョー・ジョーンズのリック、テイストの使用をより感じたからです。
その後はラストテーマを迎え、エンディングには予め用意されたヴァンプが用いられ、Fineとなります。

ピート・ラロカ

 サークル・ワルツのヴァージョンはアレンジを加え、さらにトリオが演奏を重ね、楽曲の調理法を学んだ事による華やかさと多彩な盛り合わせ感を覚えます。
ラファロとの演奏の方には素材の持ち味を生かした和食のテイストを感じました。

 4曲目イン・ユア・オウン・スイート・ウエイはデイヴ・ブルーベック作の名曲。数多くのミュージシャンに取り上げられ、スタンダードナンバー化しています。
こちらもソロピアノによるテーマ奏から始まり、サビからリズム隊が加わりますが、極めて遅いテンポ設定、ほとんどバラードの領域です。通常ミディアムからミディアムアップで演奏されるナンバーですが、これだけゆっくり演奏されるともはや異なった楽曲です。
ひたすらドラムはブラシを用いてスネアを中心にプレイ、ベースもシンプルにビートを刻む事に徹していますが、良く聴けば芸の細かいカラーリングを確認する事が出来、その上でフリードマンは縦横無尽にプレイし、闊達かったつさを表現します。
ラストは再びソロピアノとなり、アルコとブラシによる隠し味的なサポートを確認する事が出来ます。

 5曲目ラヴス・パーティングはフリードマンのオリジナル、美しいバラードナンバーです。前曲もバラード演奏でしたが、こちらではイスラエルのベースワークがアクティヴになります。
ムーディな曲想、ピアノプレイにはフリードマンの人間的な優しさを十分に感じさせます。ベース、ドラムソロの無いピアノの独演でプレイされました。

 6曲目ソー・イン・ラヴはコール・ポーターのナンバー、本作唯一の全編ソロピアノ演奏で行われます。凄まじい打鍵を示すピアノテクニックと集中力、音楽表現にかける情熱と執念を感じさせるテイクです。
フリードマンが影響を受けたバド・パウエルの演奏をイメージしますが、具体的には51年2月録音『ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル』収録の同じくソロピアノ、ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングスです。

ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル

パウエルの演奏の方は♩=380のアップテンポから成り、テーマは全音符〜2分音符を中心に演奏されますが、ソロに入り8分音符を中心に猛烈なスピードを伴って打鍵されます。
フリードマンは冒頭にルパートでテーマを演奏し、ソロに入りパウエルよりも速い♩=400程度でプレイされます。より的確で安定したピアノタッチ、洗練されたテイスト、パウエルの演奏を研究しエッセンスを抽出、凝縮した表現を行い、結果パウエルに対する憧憬の念を明らかにしています。
猛スピードの打鍵はほど良きところでリタルダンドし、次第にゆったりとしたメロディ奏に戻り、優雅に華やかに、ブロードウェイ・ミュージカルの如くのFineとなります。

 7曲目モーズ・ピヴォティングは軽快なスイングナンバー、こちらもフリードマンのオリジナルです。
用いられるコード進行やメロディラインの美学にフリードマンらしさを感じ、2曲目のシーズ・ブリーズの別ヴァージョン的な要素を見出せます。
 ピアノソロが先発、新たな境地に入らんとするチャレンジ精神を感じる打鍵が聴かれます。イメージを最大限に膨らませ、聴こえてくるサウンド、ラインを具体化すべくの精神集中を感じます。
ラロカが巧みなカラーリングを行い、イスラエルも追随し3者の一体感が他のテイクとは異なる次元に達しているのが分かります。
 ベースソロに続きます。テーマの断片をベース、ピアノとも効果的に用いて演奏を展開させ、ドラムソロに続きます。ベースが時折フィルインを入れ、活性化させつつラストテーマに向かいます。
エンディングにはヴァンプが設けられ、トリッキーなフレーズをフリードマンが連発しつつ、フェードアウトでFineとなります。

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