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冬至過ぎの朝

午前5時50分。
冬至はとうに過ぎたというのに。
まだ夜は明けず、たっぷり真っ暗闇。

まだ眠そうな10歳の愛犬を連れて、散歩コースの畑へ出る。ここまで来れば、愛犬もウキウキと軽い足取り。

かと思えば今度は枯色の草むらへ鼻を押し付け、タヌキの残り香でも追っているのか。

愛犬を待つ間、私は視線を上げた。
ご近所さんちを見る。
これがすっかり癖になった。

庭のセンサーライトがついた。
あちらも今から出発らしい。

ほどなく、庭から小さな明かりが、トントントンとおりてきた。目を凝らして見る、黒い人影と、中型犬の揺れる巻尾。

散歩は2人のお兄さんが交代で担当。今50代くらいかな。ご近所さんだから子供の頃から存在は知っているけど、年が違いすぎて学校で一緒になったことがなく、顔を近くで見たことがない。

だけど毎朝、時には夕方も、愛犬の散歩で存在を確認している。

母によると、朗らかでよく声をかけてくれるのが次男さん。黙々と歩くのが長男さんとのこと。
私も前に一度目が合って(見えないけど)、距離があったにも関わらず、明るい声であいさつされたことがあった。あれはきっと、次男さんだったのだろう。

真っ暗な中、遠くで揺れる小さな明かり。
会話をするわけでも、顔を知っているわけでもないけど。こうやって遠くで毎日存在を確認する。
ちょっとおもしろく、ちょっと安心する。

おはようさん。
今日もお互い、元気で何より。

離れているけど、細く繋がる。
そんな朝を、毎日感じている。

6時を告げる、お寺の鐘の音。
和尚さんも、元気で何より。

ようやく少し、空から闇が抜けてきた。


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