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まばたき

先日出た羊文学のアルバム12 hugs (like butterflies)を聴きながらなんとなく書いていた、まばたきと蝶と幽霊とhugについて。


2023 1207まばたき

ビール。ビールを光にかざしていている人がいた。どうしてなのか気になって聞いてみるとお酒に強くないからとのことだった。あの人は小さい泡がぽこぽこ昇っていくのをまじまじとみていた。食事が美味しく見える照明だった。久しぶりに会ったときにそのときのことを伝えると記憶力を褒められた。

私。どんな人って聞かれたらどう答えるだろう。もしも私は優しいというとして。私というときの私と、優しいというときの私では少し違う気がする。少し時間が経っている。足の爪がほんの少し伸びている気がする。少しそうあって欲しい。私にとって私はギャルということにしている。

浮かぶ。中村俊輔になりたいみたいだった。スポーツドクターは少しなりたいみたいだった。落合陽一さんみたいになりたいみたいだった。なりたくないばかりが増えたみたいだった。すでにもうそれなりの何かになっていたみたいだった。かもしれない、みたいだったをずっと眺めてきた気がする。

コップ。コップの底に穴が空いていた。それなのにほどよい量の水が入っていた。水を飲んだ後、トイレに行っているうちに元の水の量が戻っていた。水を表面ぎりぎりまで注いだあと、あくびをしてぼんやりしているうちに元の水の量に戻っていた。

喉。朝目を開けてから布団の中にいる時間が長くなった。喉が渇いているなと感じる。遠くに感じる。近くに感じる。また遠くに感じる。また近くに感じる。咳をする。布団から出てみることにしてみる。布団から出ている。

知識。新しいことを知っていく時は止まらない。動物の動画を見る時も止まらない。かわいい人を見ている時も止まらない。たまに立ち止まる。喉が渇いていた。でもいつのまにか動き出して止まらなくなっている。ほんと止まんないよねー。

アンミカさん。インスタグラムを眺めているとアンミカさんがケモミミをつけていた。どん兵衛とのコラボみたいだった。似合っているかもしれないが似合っているというべきか迷った。アンミカさんならそういってもいいのかもしれないけど。でもそういうところまでなんだか。

結束バンド。アスファルトの上に黒い結束バンドが散らばっていた。アスファルトは黒ではないかも知れなかった。写真を撮っておいた。後日同じ道を通った時結束バンドはなかった。

場所。昼寝をする場所があまりない。外はもう寒いし。パルコの椅子で寝るのは迷惑そうだし。学校は灰色で。どこにでもいけるはずなのに、どこにいていいのかわからなくて、歩きながら目を瞑ってみたりする。

砂遊び。砂遊びをしているときに遠くから声が少し聞こえた。一緒に遊んでいた友達が声のほうを指さした。名前だけ知っている街のようだった。友達は言葉が足りないと騒いだ。でも言葉が足りないのかわからなかった。

一円玉。買い物をした時のお釣りが一円だった。家に帰って。机の引き出しからペンチを取り出して。一円玉をゆっくり折り曲げて。切る。そんなことをしたところで何かが起こるわけでもない。再生していた音楽を変える。お釣りを財布にしまう。

関係。七年後なら言葉が伝わるかもしれないのに、と思っているうちにぐぢゃぐぢゃになっていた関係がある。そういえば先週小学校の友達と再会した。ひさしぶりに会うと楽しかった。同時に人は変わったとしても記憶は残ってしまうことにも気づいた。

ぐるぐる。いつでも円を描いて回すことができる小さい球がある。基本的には目を閉じると浮かび、鼻の辺りで回す。たまにゆっくりと大きな円を描きながら回してみる。ひさしぶりにゆっくりと。

電車。電車でたまたま座れた時はだいたい寝てしまう。起きた時にいつも全然知らない駅についたかもしれないと思い焦る。確認すると目的の駅の手前の駅だったりする。退屈になるが安心する。ラーメンを食べたくなる。

コインランドリー。あるコインランドリーの裏で好きだった人の匂いをふと感じたことがある。でも後日同じ場所に行った時はなんだか違う感じがした。人の顔は浮かばないのにそんなことばかり覚えている。

手。寺でも神社でも仏壇前でも手を合わせるタイミングがある。いつも何を考えるべきかわからず、心の中ではじめまして、お邪魔しています、ありがとうとだけ言う。普段使っている言葉よりはまだどこかに届いているような気がする。

夜道。地元の夜道は街灯が少ない。街灯だけが頼りで、街灯から遠い道はあまり見えない。昔は見えないことが怖かった気がする。いつのまに自然と夜道を歩けるようになったのだろう。いつのまに明るい道も照らされているだけの道だと感じるようになってしまったのだろう。

まばたき。歩いている時、たまにいつもよりもゆっくりと目を閉じて、閉じた時よりゆっくりと目を開けてみる。手も足もまだ動いていた。でも少し遅れている気がする。

朝。冬の朝は日差しが強いように感じる。目を開けられない。光ばかりを感じる。太陽がマンションに隠れた時に目を開けようとする。しばらく世界の色がわからない。









































































2023 0923 うるさい。
今日書いた自分の文章を眺めていて、うるさいと思った。困った。なぜこう思うのか。広告みたいとも思った。文章を読むと、どういう思いで書かれたのかが浮かんできてしまうからだろうか。言葉遊びにしろ、哲学的思考にしろ、いつもは好きだけど。こういう時普段音楽を聴くことにしているけど、今日は少しいつもと違う。イマドキの子やマイスリー全部夢を聞いてみたけど、何も感じない。白い。霧のような曲を流してみたけど、それも何も感じない。包まれることもない。そうか、悲しくもないのか、寂しくすらないのか。お風呂に入る。湯船に浸かっていると、目の前に浮かんでいるシャンプーの泡の音に気づく。割れている。炭酸水を入れたコップの音よりも低い。気がする。初めて聞こえた。聞こえる。今日、blue hourすら聞けない日だろうか。アンディーブと眠って、すら聞けないかもしれない。括弧に入った言葉に触れすぎていたからかな。自分の言葉もいつのまにか括弧に入っているのかな。頭の中に浮かぶ言葉が汚いのも、綺麗なのも、うるさい。もう少しゆっくり話して。もうあまり話さない方がいいのかも。槙生が手をかざしているシーン。言葉が溢れている。零れ落ちている。少し手のひらの上に残っている。槙生はただ手のあたりをぼんやり見ている。なんとなく浮かぶ。何かに没頭したくない。多分今日は眠れるけど、気持ち良くは眠れない。洗濯物を干す。洗い物をする。本は読まない。音楽は聞かない。砂を触りたい。海に行きたい。波の音を流せることは知っている。人工の海についての詩集をいつか作る気でいる。ひさしぶりにお湯を沸かす。

P.S.
上で書いた文章に対して広告みたいと思ったわけではありません。日が違います。ただ幽霊を見ている感じを伝えられたらと。



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