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夏が終わる前に、ちょっと的外れな心霊系のタクシーエピソード。

「タクシー運転手って幽霊乗せたことがある。」

誰しもそんな印象を持っていると思う。
作り話なのかは分からないが、よくテレビ等のメディアで流れる心霊話のなかで、
「タクシー運転手が深夜にお客さんを乗せて、気付いたらいなくなっていた。その場所はびっしょり濡れていた」
という話は聞いたことがあると思う。

僕は霊感もなく、そういった経験は全くないけど、
「幽霊みたことある?」
という話になったときは仙台のタクシー運転手の話をする。

仙台のタクシー運転手から直接聞いたわけではなく、
僕がタクシー運転手を始める前に仙台に行った時に聞いた話。
以前記事にも書いたことがある。

こんな話を聞いた、
「仙台の海沿いの地域ではね~、お客さんを乗せて高台のお家に連れていくと到着した頃にはいなくなっていることが多いらしいよ~」
普通に聞くと怖い話のようにも聞こえるが、
その文脈は東日本大震災についてだった。
「色んな運転手さんがその経験をしていて
手を上げて乗ってくる時はいたって普通の人間なんだって」
よく、霊が見える人にとっては
普通の人間の姿で目に映ると聞いたことがある。
「震災の津波で亡くなった人が、自分が死んだことに気づかずに家に帰ろうとしてるから、運転手さんも気づいたとしても連れて行くんだって」

この話を「タクシー運転手が幽霊乗せた」という括りに入れることは
少し不謹慎かもしれない。
何が聞けるだろう?と興味津々で聞いてきた人も神妙な面持ちになる。
ましてや既に8年経っているわけだから悲しみを掘り起こすように感じることもあるかもしれない。

でも、なんとなく意味があるとも思っている。

タクシー運転手が見たもの

震災のタクシーの話で言うと、大学の卒論で「幽霊について」
それも「震災後の石巻」で300~400人に話を聞いた論文がある。
それが本になり取材された時の話を紹介します。

工藤さんが1年間かけて石巻で話を聞いた人は、一般人も含めると300~400 人。そのうちタクシー運転手は100人程度だった。あやふやな証言まで含めればタクシー運転手が7人、その他の職業の人が8人の計15人ほど。その中で、『確信を持って言える』と断言したのはタクシー運転手の4人だけだったという。
「巡回してたら、真冬の格好の女の子を見つけてね」。13年の8月くらいの深夜、タクシー回送中に手を挙げている人を発見し、タクシーを歩道につけると、小さな小学生くらいの女の子が季節外れのコート、帽子、マフラー、ブーツなどを着て立っていた。
時間も深夜だったので、とても不審に思い、「お嬢さん、お母さんとお父さんは?」と尋ねると「ひとりぼっちなの」と女の子は返答をしてきたとのこと。迷子なのだと思い、家まで送ってあげようと家の場所を尋ねると、答えてきたのでその付近まで乗せていくと、「おじちゃんありがとう」と言ってタクシーを降りたと持ったら、その瞬間に姿を消した。
確かに会話をし、女の子が降りるときも手を取ってあげて触れたのに、突如消えるようにスーっと姿を消した。
(新曜社「呼び覚まされる霊性の震災学」より)

タクシー運転手の4件の証言には、ある共通項があったそうで、それは幽霊のように感じた人物がいずれも「季節外れの冬服」を着ていたことだった。

この中で纏められていたのは、
『立ち直ろうと思って行動は起こし始めているんだけど、心が追いつかない』
という下を向いて自分に精一杯でもなく、上を向いて奮い立つでもない
グレーゾーンの人が幽霊をみているのかもしれない。
ということでした。

「もう一度乗ってきても乗せてあげる」と言うタクシー運転手

AbemaPrimeで特集されたときの記事もある。

 実際に被災地のタクシードライバーに話を聞いてみると
「夜中の2時にタクシーを回してくれませんかという電話がかかってきた。その日は晴れた日だったのに、電話のの向こうから雨の降る音が聞こえてきた」という話を教えてくれた。
「そういう話はあって不思議じゃないと思う。"家に帰りたい"という気持ちがあって出てきたのかなと。怖いとは感じない」

タクシー運転手が体験した話以外にも、
実はお亡くなりになられた方をこの目で見たという話が出てくる。
それに、全く怖くは感じないと。


心霊エピソードを求められて、被災地エピソードが返ってくると
重いと感じるかもしれない。
だけど、震災でなんの影響もない人が被災地のことをちょっと想うための入口としては入りやすいはず。

僕もこういう時以外なかなか思い出さないし、忘れてしまう。
毎日が当たり前だと思ってしまう。

ちょっと的外れだけど、
心霊体験をしているタクシー運転手なんて極稀だと思うよ、というお話でした。


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