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「借りない資金調達」。OLTAが創りたい未来について(後編/資金調達と組織)

前回の記事では、「そもそもクラウドファクタリングとは何か」「会社設立までの道のり」という点に絞って記事をお送りしました。まだ読んでない方はこちらから。

後編では、「これまで実施した3回の資金調達の裏側」「OLTAが創りたい未来」「チームOLTA」について書いてこうと思います。

1回目のファイナンス(エクイティ1,000万円/17年4月)

創業当初の計画では、ひとまずMUFG Digitalアクセラレータ期間中に設立資金の100万円でできることをやって、デモデイで成果を出し、シード資金を調達しようと考えていました。

しかし、創業メンバーの4人が僕含め大企業出身者が多く、Webプロダクトの開発や運営は素人同然。立ち上げからグロースまで、手探りな中で進めていくことに不安を抱えながらのスタートとなりました。

そんな中、Twitterでたまたまエンジェル投資家の有安伸宏さんが「メンタリングデイ、試しにやってみます」といった投稿をしていたので、千載一遇のチャンスと捉え、ダメ元でDMを送ってみることにしました。

すると、有安さんからまさかの返信が。チャット上でのディスカッションを経て、あれよあれよと言う間に出資が決まりました。

当時は、創業メンバーもハーフコミットが混ざっていた草ベンチャー状態なOLTA。その僕らに対して有安さんは「プロダクトなし、ピッチ資料のみ」で、1,000万円の投資を出会って一週間で決めてくださったのです。

エンジェル投資家の投資決定は、かくも早いものかと驚きました。当時、有安さんがプロダクトなしのスタートアップに投資したのは「めったにないこと」とのことだったようで、本当に、運がよかったと思います。後日談として、有安さんの話によれば、OLTAをプロダクトなしの状態から仮説検証から資金調達までがっつり支援したことにやり甲斐を感じたようで、「今後はプロダクトなしの会社にも積極的に投資していきたい」と仰っていました。

2回目のファイナンス(エクイティ5億円/17年10月)

MUFG Digitalアクセラレータ期間を通じ、クラウドファクタリングのニーズ検証やスキーム構築、そして肝となるスコアリングモデルの構築はある程度進みました。

ところが、成果発表となるデモデイでは入賞すらしない散々な結果となりました。優勝していたら加速していたかもしれない三菱UFJ銀行との協業話も、トーンダウン。このままでは、ビッグデータを解析して構築したスコアリングモデルも実証できないまま時間だけが過ぎていく。焦りを感じていました。

ファクタリングはビジネスモデルの特性上、本格的に事業として行うには資金を確保する必要がありました。MUFG Digitalアクセラレータを通して、お世話になった三菱UFJ銀行から数千万円でも調達できたらいいなという淡い期待が当時心の中にありました。

しかし、設立から1年未満、決算書もまだない僕らのような弱小スタートアップが、日本を代表するメガバンクからお金を借りるなどほぼ不可能に近いことを、担当者との会話を重ねながら段々と悟っていきました。

「このままではサービスをローンチできない」

不安がだんだんと現実味を帯びていく中で、有安さんとの定例MTGにて「このままサービスをローンチできずに時間を過ごすのはジリ貧になっていくだけ、次の調達ラウンドを進めたい」と相談しました。

当時(2017年7月)、先行するオンラインレンディング系のスタートアップが1〜2億円程度でエクイティ調達を行なっていたことを知っていたので、「2億円調達できれば御の字」と僕らは念頭に置いて有安さんに相談しました。

すると有安さんは、「よしやろう。やるなら大きく4億円目指そう!」といって僕らの当初想定を上回る調達額を提案してくれました。そこから、怒涛のピッチ作成からプレゼンの指導、VCの紹介、VC面談との同席などかなり手厚いサポートをしてもらいながら、最終的にジャフコ、BEENEXTから5億円を調達することができました。

特にVCの紹介においては、「有安さんからの紹介」ということで日本を代表するパートナークラスのキャピタリストに初回面談からお会いすることができたため、有益なフィードバックを得ながらスピーディーに調達を進めることができました。

スタートアップ界隈へのコネクションもなければ力学も見えない中、有安さんが羅針盤となってOLTA号を先導していただき、シードファイナンスが成功裏にクロージングしたことは幸運以外の何ものでもなかったと思っています。

設立半年前後のシードフェーズでは十分すぎるほどの資金を得たものの、OLTAの資金使途は、人件費や広告宣伝費等の「運転資金」に加え、「買取資金」も大きな要素でした。

巨大なファクタリングマーケットに対し、実際の請求書買取を通してプロダクトやオペレーションの改善を行なっていくことなどを考えると、スケール拡大を急ぐよりも、まずはできる限りのキャパシティで少しずつニーズ検証していこうと考え、このタイミングでの積極的な広報活動は控えステルスで運営していくことを決めました。

3回目のファイナンス(エクイティ+デット25億円/19年5月)

2017年11月にクローズドでクラウドファクタリングのプロダクトサイトをローンチして以降、請求書買取の申込は順調に増加しました。会社設立から一年目の決算を終えたタイミングで、一度は諦めた銀行との融資交渉を再開し、粘り強い交渉の末、あるメガバンクからの融資を引き出すことに成功しました。

最終的には3メガバンクいずれも稟議を通してもらい、合計7億円の融資枠を設定することができました。これにより、請求書買取は低利で調達したデット資金を充当することが可能になり、エクイティ資金はよりリスク性のある広告宣伝費や人件費等の先行投資に充当するなど、資本構造の適正化が図れるようになったことが最大の成果となりました。

話は若干逸れますが、スタートアップのエクイティ調達環境はシード・アーリーステージ向けのリスクマネーの供給量が増加傾向にあることを理解していますが、個人的にはデット調達もうまく組み合わせることをオススメします。

もちろんデットなので「返さなければならない(=元本返済)」、「利息が発生する」点等でエクイティ調達とは異なるので、全てのビジネスモデルにデット調達が当てはまるわけではありません。

ですが、例えばD2CやSaaSのように売上が早期に立ちやすいビジネスモデルはエクイティで調達して無理にダイリューションしてしまうより、一部をデットで調達することは十分選択肢に入ると思っています(売上を早めて調達する点においては、クラウドファクタリングも選択肢に入ると思います)。

本題に戻ります。デット調達を経て、申込総額も数十億円を突破し、5億円のエクイティ調達で証明したいことはほぼ終えました。より一層のクラウドファクタリングの浸透と定着を図るには、さらなる資本増強が妥当であると判断し、2018年秋頃より今回のエクイティ調達活動を開始しました。結果としてSBIインベストメント、新生銀行などの新規投資家、さらには前回ラウンドで出資したジャフコやBEENEXTのフォローオン投資も加わり、合計18億円のエクイティ調達をクローズさせることができました。

エクイティ、デット合わせて総額25億円の資金調達を終え、さらには申込総額も120億円を突破するなど十分なユーザニーズの検証も行なうことができたので、ステルスモードを解除し、認知獲得、採用強化のための積極的な広報活動を開始するに至ったのが今回のプレスリリースにつながっています。

「不便さの慣れ」をあぶり出したい。OLTAを通して実現したいこと

こんなにもインターネットサービスが便利になっている世の中にもかかわらず、僕らは「金融サービスは、めんどくさいものだ」と思い込んでいるところがあります。

僕は、こうした状態を「不便さの慣れ」と表現しています。厄介なことに、「不便だ不便だ」と声を上げるだけでは、状況は何も変わりません。ユーザー体験の高い金融サービスを開発・提供することによって、初めて既存金融サービスの不便さが浮き彫りになります。。クラウドファクタリングは、まさに「不便さの慣れ」をあぶり出すサービスでもあると考えています。

OLTAクラウドファクタリングをリピート利用いただくお客様には「今日申し込んで、明日振込まれる」という「はやさ」「かんたんさ」に対して満足いただいているケースが多いようです。

銀行借入や、既存のファクタリングだと、煩雑な書類作業を行ない、交渉に時間を要するなど非常に手間がかかったものを、一気に「時短化する」というメリットを感じていただいているということです。

事業にガッツリ集中したいときの「攻めのファイナンス」としてのクラウドファクタリングを、もっと多くの人に知ってもらいたいと考えています。

多様なチャネルでデータを蓄積し、与信能力を強化

OLTAクラウドファクタリングは、24時間以内に審査結果を出す「与信」が最大の強みです。

今後は、クラウドファクタリングを通して得られる独自蓄積のデータに加え、SaaSなど様々なサービスや地域金融機関等と連携するなど、データチャネルの多様化によってスコアリングモデルをさらに高度化することを考えています。


OLTAにとって初のアライアンス案件として、クラウド会計ソフト「freee」との連携による「請求書ファイナンス」が7月にリリースしました。


また、地域金融機関等とのアライアンスも、今後のOLTAの事業開発の重点テーマです。具体的には、クラウドファクタリングを地域金融機関等のパートナー企業にホワイトラベル(OEM)で提供し、OLTAがスコアリングモデルを活用した24時間以内の審査回答を含む審査やオペレーションを担うことで、パートナー企業の顧客基盤に対して、彼らのブランドで運転資金供給サービスを行うという「新たな金融商品の共同開発」構想です。

この構想の最大のポイントは、新規性の高いクラウドファクタリングを各地域・業種の中小企業にまで根付かせるための認知獲得において、銀行を始めとするパートナー企業の名前で提供していることが顧客の安心感醸成の観点からプラスに働くと考えている点です。

これら「自社買取モデル」と「OEM提供モデル」の2つの事業モデルを同時に展開していくことにより、「データ獲得→スコアリングモデル精度向上→ユーザー体験向上→ユーザー増加→データ獲得・・・」といったネットワーク効果を加速させることが可能になると考えています。

ミッション

OLTAは、「あらゆる情報を信用に変え、あたらしい価値を創出する」をミッションとして掲げています。ミッションの中に、金融の文字もなければ、ファクタリングの文字も入れていません。これには明確な意図を込めています。

僕は、「資金調達に新しい選択肢を」という想いでクラウドファクタリング事業を始めました。今も、その想いに変わりはありません。

一方、クラウドファクタリングを通じてわかったことは、中小企業は「お金」に関するペインだけでなく、人材不足、マーケティング力不足、ITリテラシー不足などなど、様々なペインを抱えていることがわかりました。

僕らが持っている強みである、中小企業向け与信の考え方を応用し、さらにデータを蓄積・分析することによって、別の切り口で価値のあるプロダクトを提供できると考えています。

僕らは、「与信を再創造する」会社になることを決めました。まずは巨大なファクタリングマーケットに参入し、中小企業の財務データを蓄積しながら与信モデルをアップデートし続けています。さらに「データ」と「与信」を切り口に中小企業のペインを解決するプロダクトを二の矢、三の矢として投入するべく準備を進めています。

すなわち、戦略の大方針としては、以下の通り整理しています。
・既存の枠組みで捉えられない、全くあたらしいマーケットの創造と拡大
・プロダクトを通して顧客に便益を提供し、適切なインセンティブ設計に
 よって情報が集まる仕組みをつくる
・与信再創造のプラットフォームをつくる(クレジットリデザイン)
・自己否定と価値創造の繰り返しによる会社成長

チームOLTAについて

OLTAのバリュー、チームカルチャーについても紹介させてください。

バリュー

創業2年が経過した2019年6月に、ミッションを達成するための行動基準や「OLTAらしさ」を表す言葉として3つのバリューに絞り、全社会で共有しました。

僕や経営陣だけでなく、社員や業務委託、派遣メンバーなども加わるワークショップなどを開催して決めました。「OLTAらしさ」を形容する言葉を要素として発散させ、それらの共通項や、より優先したい要素などを勘案して最終的に3つの価値観に収束させていくプロセスなどを経て、
最終的には、
・Stay Gold
・Orchestration
・With Why
に決定し、「OLTA STYLE」として全社共有しました。

「バリューは策定よりも浸透が難しい」といわれていることを念頭に置きつつ、今後はOLTAの意思決定や行動基準、制度など様々な場面でOLTAのバリューを意識した行動をメンバーそれぞれが発揮できるよう、仕組みに落とし込んでいこうと思います。

組織観

先日、為末大さんがブログで「いい集団」について言及していてとても共感したので紹介します。

競技者にとって集団選びで何より気にしなければならないのは視座の高低だ。どれだけいい人で、どれだけ人格者でも、視座が低ければ頂点には行けない。むしろ視座が低い人格者は、低成長状態でも人を安心させて居場所を作ってしまうので厄介だ。
(引用:為末 大 私のパフォーマンス理論 vol.16 -集団について-)

OLTAの達成しようとするミッションは、とても壮大で、視座の高いものであると自覚していますし、「金融だけ」をやっているという意識よりは、データや信用に向き合って新しい価値を届けていこうとする気概を持ってチーム一丸で取り組んでいます。

そのためには、代表としての僕が高い目標を掲げ、その意義と方針を継続的に伝えつつ、チームメンバーそれぞれが視座の高い目標を掲げ、それらをバリューに基づいて行動し、達成していくプロセスの中でチームOLTAとしてのプライドとアイデンティティを育んでいきたいと思っています。

また、持論として、「強みを持った個人が、適切な配置でその強みを発揮すれば、必ず組織は伸びる」と考えています。

一番大きな理由は、僕自身の自己認識として、強みと弱みがはっきりしている人間だと思うからです。自分ができないことは、自分より優秀な人間がやればいいと思っています。

できないことをやることほど、苦痛なことはない。なにより続きません。自分のWillやCanが、会社のMustにミートする。そういった内発的動機を重視した組織づくりや働き方を、推進していきたいと考えています。

チームメンバー

現在、OLTAの社員には約20人のメンバーが在籍しています。野村證券やソニー、三菱商事、三菱UFJ銀行など大企業出身のメンバーや、楽天、クラウドワークスなどインターネットサービス企業出身のメンバーなど、金融系や非金融系メンバーがバランス良く集まっている、実行力に強みのあるのが特徴なチームです。

一例を挙げると、

・グローバルメーカーの経営管理、経営戦略を渡り歩いたCSO
・商社で一貫して管理畑を歩み、さらにIT企業のIR担当をしていたCFO
・OLTAのデータ分析基盤を一人で構築し、ビジネスチームともバチバチ議論するデータエンジニア
・メガバンクの法人営業にてトップセールスだったBizdevメンバー
・上場SaaS企業のCS部門立ち上げ経験のあるCSヘッド
・弁護士兼会計士の資格を持つコーポレートメンバー

などなど。強みや個性が際立った、「一芸」のあるメンバーが集まる会社だと自負しています。

結び

長くなりましたが、OLTAのこれまでとこれからについて書き記しました。

「セレンディピティ」という言葉があります。振り返ると、かなりセレンディピティ的に導かれるようにここまでやってきたなという印象です。

僕個人は根性よりも論理、偶発性より再現性を好む性格です。しかし、理屈で語れない出会いやきっかけがあったことは事実ですし、これからもそういったセレンディピティ的な何かに出会うことを期待しています。

あなたがこの記事を読んでいるのも、何かのご縁かもしれません。もしOLTAのことに興味持ってもらえたり、アライアンスの相談など含め、気軽に下記のWantedlyやTwitter DMなどからご連絡ください!(カルチャーデックもご覧ください)

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著:澤岻優紀
編集協力:澤山大輔







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