「忘れないで」

君のことを思い出した。

そういえば、去年の今頃は一緒に出かけていたっけ。

思い出したかったわけじゃないのに、嫌でも脳裏に君が浮かぶ。

君に教えてもらったお店、ふたりで使った近道、奥手な君が初めて手を繋いでくれた交差点。

秋の風が、空気が、あの頃の記憶を連れてくる。

今年の秋はまだからっぽで、より一層去年の鮮やかさに縋ってしまう。

君は今なにをしているんだろうか。
私の知らない女と、あのお店でケーキを食べているんだろうか。

その記憶の片隅に、少しでも私は存在しているだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?